第217夜 「共感覚者によるコーラス」*
 銀座線・半蔵門線の渋谷駅近く。
 ということになっているけれど、109も、東急もない。
 あるべきはずのほとんどのビルはなく、渋谷駅周辺の土地は、一辺の長さが数キロにもわたる、巨大なひし形の緑化公園になっている。まるで三内丸山遺跡を押し広げたような感じ。葉脈のように、細い道が枝分かれしながら、緑化公園の芝生の上を伸びている。
 緑化公園のほぼ中央にあたる、銀座線・半蔵門線の渋谷駅のほぼ直上には黒い外壁のモノリスが立っていて、まったくあたりは静まりかえっている。
 そのモノリスのてっぺんにいる。
 自分だけでなく、自分を含めた四人の男女がいる。 
 そのなかの初老のオールドグレイの男性が、手持ちの風車で風向きを確かめる。
「良いようですな」
 そして、実験が始まる。
 高さ、数百メートルのモノリスのてっぺんで、とりあえずB音を出してみる。
 あたりの空気の色が、桃色にと青色が混ざったような色合いに変わる。
 残りの三人が、自分の声に重ねて声を出し、Bの和音にする。すると、極小のオーロラが渦巻いているようなあたりの空気の色が安定して、また透明になるが、全体的に少しだけ光が残っている。
【実験:共感覚者による混声コーラス】
 というテロップ。
 そうか、だからうまく行くと色が消えるのか。
 極小のオーロラは自分にしか見えないものなのだ。磁気とは関係がない。
 自分がリード・ボーカルをとりながら、混声コーラスのコード進行を続ける。
 
 B D#m E B
 E B F# G#m
 B D#m E B
 E B F# G#m F#

 周りの三人が巧いおかげで、辺りの空気はほとんど着色されることもなく、ダイヤモンドダストのように無数の乱反射だけが満ちる。
(ただし、モノリスのさらに上空から見おろしたイメージでは、それぞれの声の響く距離にばらつきがあるので、モノリスから離れるほど、様々な色が混ざって、周縁部はオーロラのように青や桃色が帯状に揺らめいている。)

 B D#m E B
 E B F# G#m
 B D#m E B
 E B F# G#m

 D#m E F# G#m
 D#m E F# B
 
 すべての実験が終わる。
 非常階段を使ってモノリスのてっぺんから降りることになる。
 途中で数人のトレンチコートを着たサラリーマンに出会う。彼らを後ろから追い越すと、
「いやー、誰も、コーラスが行われていたことに気がついていないね」
 いつのまにか彼女Fが隣にいる。
「まあ、マイナーなメロディだったから」
「でも、太田さんはもっとちゃんとボイトレをしなきゃダメだよ。次は、“カエル・クラス”から、“ラジオ体操・クラス”に移ると良い。“ラジオ体操・クラス”は二人一組だから、燃えると思うよ。」
 “ラジオ体操・クラス”でやるのはラジオ体操で、それはボイトレではない気がする。

「ちょっと供養してきてもいい?」
 モノリスを降りると、彼女Fが言う。
 もちろん良いよ、というと、彼女は幾本か立っている白樺の、ある一本に近寄り、その白樺の根本には、小型犬くらいの巨大な蜘蛛がひっくり返っている。
【すべての樹の下には死体が埋まっている】
 というテロップが流れる。梶井基次郎だ。
 ちょうどジーパンのポケットのなかに折れた線香があったので、蜘蛛を供養する。
by warabannshi | 2008-12-18 10:55 | 夢日記 | Comments(0)
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