第229夜 「世界は菌糸をおおっている」
【黒いタートルネックの記憶】
 [外部服用効果破棄]とプリントされたテープでぐるぐる巻きにされた自動販売機がある。もとは、チオビタドリンクなどの栄養剤が売られていたものらしい。
 かつて黒いタートルネックを着ていた***は、小学校の頃の友人たち数名と、源氏物語の劇をつくるために、そのタートルネックを着て、稽古に励んでいる。
 ***は光源氏の役なのだが、色気がないとか、淡白だとか、さんざな言われよう。
「***、女の子と寝たことないでしょ。おっぱい揉んだことある?」
 いまは幼稚園の保母さんをしている、強気な女子が***をからかう。
「三人の女の子と寝たことありますし、おっぱい揉んだこともありますよ」
 たぶん、君より寝た相手の数は多いですよ、という文句を***が自粛したことも、黒いタートルネックは記憶している。
「いずれにせよ、***はもっと光源氏っぽくならなきゃ。ヘソのゴマを取るとかして」と、演出のバスケットボール・プレイヤーが言う。
「ヘソのゴマと色気となんの関係があるんですか?」
 そう言いながら、***は、ヘソのゴマの有無と色気の有無は、あながち無関係ではないと思う。

 そんな***の着ていた、その黒いタートルネックを、いまはうちが着ている。
 そして、真っ白いキノコが、地上のいたるところから生えだしてきている。
 地下でなにかが爆発したように数えきれないほどキノコは生えだしている。キノコの子実体のサイズはまちまちだが、すべて同じ種類に見える。ソメイヨシノのひこばえのように細長く三十センチくらい伸びているのもあるし、シイタケみたいなのがわらわらと群生していたりもする。大きいものでも膝下ぐらいまでしかないのがせめてもの救い。けれど、埃のような胞子をひっきりなしに飛ばすせいで、空気がけむい。
 菌糸の株は一つなのだろうか? ドイツかどこかの森で、森の端と端のキノコの遺伝子を調べたら、なんと二キロほど離れている両地点で同じ遺伝子が採取されたという。つまり、森の下には大きな一つの菌糸の株があったのだ。という話を思い出す。
 そういうとき、「森を菌糸がおおっている」というよりも、「菌糸を森がおおっている」という表現が正しいと思う。
 そういう巨大キノコの小咄を思い出しているうちは、セレブレティ。
 別荘と本宅の二つを、気ままに行き来できるような身分。本宅に不都合があれば、別荘に帰ればいいし、別荘に不都合があったら、本宅に帰ればいい。そんなお気楽生活。
 とは言っても、別荘と本宅は、ゆるい崖と森で分かたれているだけで、百メートルも離れていない。
 そして、本宅も別荘の周りの地面は、ほとんど完全に、真っ白いキノコ群に覆い尽くされている。非常に気持ちがわるい。
 自転車の前輪で、無数の子実体をけちらしながら、本宅に向かって自転車をひいて歩いていく。自転車に乗らないのは、キノコのせいでスリップしそうだし、転んで傷口から胞子が入ったらどうなるかわからないから。
 そう考えていると、全身の毛穴から糸のような子実体を吹きださせた人間が、よろよろしながら森を歩いていった。自分も、頭髪の毛根あたりから、そうとう糸状のキノコが生えだしているのだろう。けれど、怖くて頭を触る気になれない。
by warabannshi | 2009-01-19 08:19 | 夢日記 | Comments(0)
<< 第230夜 「assuまでは合... 第228夜 「思念通信、またの... >>



夢日記、読書メモ、レジュメなどの保管場所。
by warabannshi
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30
twitter
カテゴリ
全体
翻訳(英→日)
論文・レジュメ
塩谷賢発言集
夢日記
メモ
その他
検索
以前の記事
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 01月
2016年 11月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 03月
2007年 01月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2004年 11月
2004年 08月
2001年 12月
記事ランキング