第233夜 「のっぺらぼう」
 京王バスに乗って、ふつうの道路を移動している。運転席の、すぐ後ろの、他の座席より一段高くなっている狭い座席に座っている。
 夕方で、夜にものすごい大雨が降ることがすでに予報されている。
 四五〇円くらいのプラスチック傘を座席とバスの車体の壁のあいだに挟んでいるので、その大雨の予報に対して準備はしている。四五〇円くらいのプラスチック傘は、一〇〇円くらいの安物傘に比べると段違いに丈夫で大きいから、そんなに濡れないだろう。けれど、どういうわけか疲労が濃い。丈夫な傘があっても、大雨の路傍でしゃがみこみそうな気がしている。
 携帯電話には、いくつかのメールが届いている。
【第一のメール 「絶縁体委員会 T」】
「Tです。**温泉で、運勢開発のおみくじと+++の携帯電話ストラップを買ったら、さらに絶縁体に近づけたような気がしました。まだ大学にいるなら生協の食堂で特製カレーを食べましょう! 459円です!」
(「絶縁体」、とは、「絶対運勢」の隠語)
【第二のメール 「///勉強会のお知らせ」】
 詳細は忘却。地熱か地球の磁場に関するなにかの勉強会を、復活させるか、開始したいという旨。あまり気が乗らないが、Sさんも参加するらしいので、その点で一回は出てみようと思う。
【その他のメール】
 いくつか届いていたが、すべて忘却。
 そのうちの一通は、中国の青銅器を集めている静かな美術館(鶴岡のほうにある?)のクーポン券。

 夕方の、井の頭線永福町駅前に、バスが到着する。
 数名いたはずの乗客は、なぜか自分と、ゼミの後輩Kのみ。
「太田さん、夜から大雨なの、知っていましたか?」
「もちろん知ってるよ」
「じゃあ、傘がないとマズくないですか」
「傘は持っていたんだよ。でもいつの間にか無くなっている」
 そう、傘はいつの間にか無くなっている。
 バスの座席に置き忘れてきたのだろうか。それとも、傘を持ってバスを降りたある段階で、忽然と消えて自分もKも気づかないでいられたのだろうか。
「あー、そこらへんに、コンビニの店先とかに傘は落ちているから、問題はない」
「ダメですよ、他のヒトの傘を拾っちゃ。
 俺、自転車とってきます」
 しばらくするとKは、黒いBMX(曲芸乗り用の自転車)に乗ってくる。
 だが、Kと二人でどこに行こうとしているのかは不明。
 永福町駅前には百台ほどの路駐の自転車があり、かなり高い割合で、大きめの傘がサドルの下のフレームの、台形の空間に刺さっている。どれか一本、窃盗したい、と思いながらKと北口商店街を歩き出す。商店街に人影は、まばら。
 商店街の左手はいつのまにか造成地になっていて、盛り土がされたうえに、また何十台も自転車が路駐されている。
 その造成地の盛り土がなされた、ひときわ高いところに、スーツを着た髪の長いOLが立っている。
 その光景が非常に不吉だったので、
「あのOL、たぶんのっぺらぼうだよ」とKに言う。「眼も口もないアンパンマンの、けれど赤い鼻だけはついているような、のっぺらぼうだよ。早く通りすぎないと、のっぺらぼうに食われるよ。のっぺらぼうの顔は、眼も口もないぶんだけ、よく伸びる。伸びた顔に巻かれて、顔に食われるよ」
 そう言いながら、BMXに乗ったKを急かす。
 途中で、一人の中年男性とすれ違う。
「あの人はもうすぐ、のっぽらぼうに食われるよ。悲鳴を聞くと引き返したくなるから急がなければ」
 その中年男性がのっぺらぼうに食われたのか、食われなかったのか。造成地の高台に立って、路駐の自転車を見下ろしていたOLは、そもそも本当にのっぺらぼうだったのか。のっぺらぼうだとしても、食人のっぺらぼうなのか。アンパンマンの鼻だけついているようなのっぺらぼうなのか。ふり返らなかったので詳細はわからない。
by warabannshi | 2009-01-30 20:09 | 夢日記 | Comments(0)
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