第274夜 「学園祭」
 車両が二つしかない赤い電車が走る、単線。私がいつも降りている駅の、ひとつの前の駅は、周りを雑木林に囲まれていて、そこには名前のわからないキノコが無闇に生えている。
 郊外のこの駅は、もともとこの駅に隣接する大学の、そのキャンパスに通う大学生たちのために作られたのだが、ほとんどの学生はキャンパスに住み込み、そこで生活しているために、この駅はほとんど誰にも使われていない。駅舎内の曲がり角ごとにカーブミラーがわざわざ設置されているのは、《終電車》に向けて走り込もうとする酔った学生たちに、一般人がはねられないようにするためのものだ。
 その大学で、学園祭があるので、私は、いつも降りている駅の、ひとつの前の駅で降りる。
 駅で降りてから、雑木林を歩いているあいだ、ずっと蜘蛛の巣の多いことが気にかかる。
 半径五十センチくらいの八角形の蜘蛛の巣は、木と木のあいだの二メートルくらいの空間にびっしり、というか二つ、三つ重なり合って隙間なくはられている。透明なクモの糸だって、重なり合えば、さすがに白く半透明になるから、三つくらい巣が重なると、レースのカーテンのように見える。はたしてこの木と木の間を通り抜けようとするハエや羽虫がいるのだろうか? いないだろう。そして、巣の多いわりには、その住人であるところのクモは一匹もいない。
(いや、これは蜘蛛の巣なんじゃなくて、菌糸なのかもしれない。新種のキノコは、まるで蜘蛛の巣のように、菌糸をのばす。だとすると、子実体はどれほど大きくなるのか?)
 そんなことを思ったりもする。
 しばらくすると、大学のキャンパスに着く。芝生のはがれかかっているだだっ広いグラウンドでは、チアリーダーたちが何かを踊っている。
 しばらく太陽に照らされながら、チアリーディングを眺めていると、呼び込みが来て、
「ドイツビールがありますよ、いかがですか?」
と言うので校舎のなかに入る。
 校舎のなかはひたすら廊下が続いていて、先の見えない廊下の向こう側から、風がごうごうと音をたてて吹き付けてくる。校舎の外では無風だったのに、校舎のなかでは風が吹く。どういうメカニズムが働いているのか、わからない。
 あまりにも風が強いので、手近の教室に入る。なにかの薬品貯蔵室らしく、壁には一面にガラス張りの冷蔵庫がしつらえられているが、並んでいるのは「アセロラドリンク」の紙パック数十個と、ミネラルウォーターのペットボトル数十本である。
(ここは、誰かの仕事部屋なのだろう。室井滋とか……)
 そう思いながら、部屋の奥へとすすむと、谷川俊太郎が、誰か女の人(室井滋ではない)と談笑している。二人の前には、ドイツビールの空き瓶があるが、両方とも空であるらしい。
「風のながれや強さを方程式であらわすことができるように、夢もまた、******(固有名詞。忘却)の化学式であらわすことが可能なんですよ」
「そうですね。たしかに、自転周期も公転周期も、すでに数値としてよく知られているわけですからね。どのように(夢である)コロイドが混ざるかは、わかる」
「もう、ほとんど薬学の領域ですからね」
「夢のなかで、何を食べても、それが金属であっても、ニッキの味しかしないのはそういうことです」
by warabannshi | 2009-08-12 12:29 | 夢日記 | Comments(0)
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