二月の砂浜で行われるクイズ番組のセットのデザインに関するコンペが行われている。コンペもまた、砂浜で行われている。
五人のデザイナーのなかには名前の知らない弟も出場していて、彼は色とりどりの数百もの傘を散りばめたセットを提案している。二月というより、梅雨か秋雨の時期にこそふさわしいだろう。
一方ではココ・シャネルが、群青色と白の直線を関数的な規則のもとに組み合わせたようなデザインを提案している。シンプルで冴えている。さすがココだ。弟の出る幕はないだろう。そう思い、会場をあとにする。
日向ぼっこをしながらカタログ雑誌を読んでいると、名前の知らない妹に、弟が腕を引っ張られてやってくる。
「さあ兄さん、説明して!」
鼻息荒く妹は言う。やはり弟はコンペに負けたのだ。
「まるで解毒剤みたいに解説を求めるんだな」
私は呆れて雑誌を読むのをやめる。
「開票結果は?」
「ココが3票で、僕が2票」
「接戦だったじゃない」
「まあね」
「なんで兄さんは負けたの?!」
妹の憤懣は冗談ではぐらかすべきなのか迷う。