高校に通っている精巧な少女型アンドロイド。左右の胸部をもって引っ張ると、観音扉のように開く仕組みになっている。ほの暗い心臓部には、小さなメトロノーム付きの小型爆弾が仕込まれている。校内で手ひどいいじめを受けた場合(たとえばトイレの洗面台になみなみと満たされた小便で顔を洗えと命じられるなど)、警告ののち、自爆するように命令されている。爆発の規模がどれほどのものなのかは、わからない。
休み時間なので、胸部を開いて、メトロノームの手入れをしていると、友だちの、人間の女子高生が隣に座る。
「秋の七草が思い出せない……。自宅の住所を忘れたくらいのショックだ」
教室の後ろでは男子三人が小さなお手玉を使ってリフティングに興じている。窓側では、友人Cはマハトマ・ガンジーに似ている。こんどトーガを着せて、釘バットを持たせ、あり得ない組み合わせを見て楽しもう、という話が盛り上がっている。
とうぶん、自爆する心配はなさそうだと思う。