『ドッグヴィル』のように、区画だけが黒いゴム床に白ペンキで書かれた世界。家具はぽつぽつと立っている。しかし、壁は存在しない。
そろそろ「最終回」が近いことがわかる。あと「4回」くらいだろう。「最終回」は、この「白ペンキの線と無数の家具の世界」そのものの争奪戦になるだろう。しかし、いったい何の「最終回」なのか? 4回とは?
「部室」の、ベンチプレスの台で眠っている私。気がつくと、体中の細胞の一つ一つに「テレビ君」と落書きをされている。友人Hのいたずらである。手のこんだいたずらに感動さえする。
焼死体のように手足を折り曲げて硬直していると、向こうで歓声があがる。
どこかから打ち込まれた砲弾を、大男がチキェルキ・カインカーしているのである。つまり地面に垂直に立てられたU字の蹄鉄のような巨大な鉄製のサーキットに、砲弾の力学的エネルギーを逃がす作業をしているのである。
大男は巧みにサーキットの角度を調整し、うなりをあげる砲弾を振子のようになだめる。
私は大勢とともに感心してチキェルキ・カインカーを眺めていた。しかし、六十兆の細胞に書かれた落書きが喉の乾きをもたらしたので、去った。