第408夜「テーマパーク」
 二十年前の神楽坂のあたりにある、場末な感じのテーマパークに来ている。
 ここには幼いころ、故祖父Cと来たことがある。そのときとまったく古びさが変わっていない。読み古した漫画本(『おそまつ君』のわら半紙のような粗悪な紙に印刷された単行本)の匂いがするというか。書架にしまわれたままのい昆虫図鑑のような人知れず感があるというか。
 私は両腕で段ボールの箱を抱えていて、まだ誰もいない朝ぼらけのテーマパークをうろうろしている。段ボールは朝露ですっかり湿気ており、八方の角は潰れ、下面以外の五つの面は内側にたわんでいる。この段ボールを抱えていることと、銀色のジャージを着ていることで、まったくテーマパークの客のように見えない。が、私はたしかに、昨夜はここで泊まったのだ。
 この名前の知らないテーマパークの宿泊施設は、やはりおんぼろの雑居ビルである。隅なんかはことごとく埃がたまっていて、エレベーターは煙草のにおいがする。雀荘がないのは不思議なくらいである。故祖父Cと、ピンク色のスパゲティを食べた食堂でいまは茶漬けを食べ、そのあとで、やはり昔「ウルトラマン」の対戦型アーケード・ゲームがお気に入りだったゲーセンを通り過ぎて、部屋で寝た。
 でも、崩れかかった段ボール箱を抱えている私は客のように見えない。
 従業員に出入りの業者だと思われて、失敬な態度をとられたらどうしよう。このテーマパークにいまさら不快な思い出が出来てしまう。ぐるぐる回る系の多いアトラクションは、どれもこれも紫外線の影響で色が褪せてしまい、ぼやけている。
 私はとにかく、段ボール箱を放置できるところを探し、事務的なエレベータに飛び乗る。
 ドラッグストアの階についたとき、降りた青年がばったりと顔から前のめりに倒れた。
 なにかのパフォーマンスかと思ったが、そうではない。動かない。扉が閉まる。
「なんで踏み台がエレベータの前なんかに置いてあるんでしょうね?」
 エレベータの箱のなかのスーツを来た従業員が言う。
「ばか、あれは踏み台じゃなくて踏みあがり健康器だ。もっとも、なんであんなところにあるのかはわからん」
 私にはわかる。あの踏みあがり健康器は、やはりそれを持て余してうろうろした中学一年の私が放置していったものである。
by warabannshi | 2010-09-22 21:49 | 夢日記 | Comments(0)
<< ◆塩谷賢「科学哲学」講義@法政... 探索記録37「どのようにしてメ... >>



夢日記、読書メモ、レジュメなどの保管場所。
by warabannshi
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
twitter
カテゴリ
全体
翻訳(英→日)
論文・レジュメ
塩谷賢発言集
夢日記
メモ
その他
検索
以前の記事
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 01月
2016年 11月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 03月
2007年 01月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2004年 11月
2004年 08月
2001年 12月
記事ランキング