地下駐車場の段ボール・ハウスに帰宅すると、屋根の上に現代日本小説・詩・批評の総評をしたパンフレットが乗っている。友人Uや友人Sが載っていないかとぱらぱらとめくっていると、隣に箱を立てて暮らしているデヴィット・チャンさんが「太田君の名前、載っているよ」と教えてくれる。
「「日本に居ながら越境する作家たち」というカテゴリーのなかにある。たしか太田君は、「チリ」とか書かれていた気がするよ」
私の名前はたしかにクレジットされている。「越境する作家たち」では、その作家がどこに越境しているかも併記してある。多くは国名であり、アルゼンチンとかウクライナとかの、作家の越境先が並んでいる。だが、私の名前と併記してある固有名は、「チリ」ではなく、「ミミズ」である。
「目立たないが地表を這いずっている、最近はサングラスをかけはじめた模様。直射日光を浴びても溶けるわけではないし、じっさい、日向ぼっこは望むところでもある。しかし超餅膚の彼は保水をかかせない。蠢動する。ほとんど無害」
娼婦をやっている少女が堪えきれず、爆笑する。