【感想】コミティア94拡大specialを終えて。
 コミティア94拡大specialに参加の皆様、おつかれさまでした。『笑半紙』、『そこ意味』それぞれ4冊ずつの売上となりました。前回は2冊ずつだったので、二倍です。なんという慎ましき前進。お買い上げいただいた方、ブースを訪れてくださった方、本当にありがとうございました。笑半紙は、2011/2/13(日)に予定されているコミティア95はお休みし、次々回のコミティア96に参加する予定です。

 以下、購入した物品紹介。


[創作系・文芸]

牟礼鯨『奇貨おくべからず』500円
 日本各地の同人誌即売会で活躍している西瓜鯨油社の新刊。現代版、紫上育成計画。23歳の男性と9歳の女の子との共同生活は、偏屈と偏見と健気さと微笑ましさとに彩られている。幼女の愛らしさは、それがエロティックな対象であるから発動するのではない。そうではなく、育成という営みこそが本質的にエロティックなふるまいなのだということを、この百ページに満たない本は気づかせてくれる。
 彼の札幌・塾講師時代の「朝起きたら室温がマイナス2℃」、「そっちはいま何度?」「零度」「へえ、意外と北海道は暖かいんだね」「あ、室温だった」という苛酷な環境で綴られただけあって、ディティールの生々しさも良い。『奇貨おくべからず』を含めた、西瓜鯨油社のすべての作品(『掌編集』、『複雑系』、『コルキータ』)を推薦したいところであるが、ほかの作品と同様、すでに品切れとのこと。残念。


鳥久保咲人『或る飛び跳ねた熱帯魚の場合』300円
 高校二年の現代文の問題演習で吉本ばななの『TUGUMI』の一節をやったときに「ボクっ娘」というジャンルがあることを習った。「ボクっ娘」は知性的であるが、心が屈折していて、大人になりたがらない。というか大人は〈敵〉である。そんなジュニア小説の伝統を『或る飛び跳ねた熱帯魚の場合』は受け継いでいる。そして、伝統的にそうであるように、子供は不安をわだかまらせつつ、子供を終える。高校生の女の子が、もう一人の高校生の女の子に告白するまでの百二十四頁。


[創作系・漫画]

えのころ工房『えのころ漫画館』〈3〉1000円〈4〉800円
 この冒険漫画の登場人物たち(全員、猫)は、しょっちゅう何かに驚く。そして大工道具を引っ張り出して手元の材料から何かを作っている。それは飛行機だったり迷路だったり潜水艦だったりする。それらは失敗と試行錯誤を繰り返して、いよいよ物語の終わりには完成するのだが、結果はともあれ、それまでの頁で“上手くいまどうか分かんないけど、なんだかわくわくする”という気分がゆっくりと醸成されていくのが堪らなく良い。そしてどんなときでも一緒にやってくれる仲間がいるという無窮の安心感が、この気分を下支えしている。
 内容もさることながら、装丁と構成にかける丁寧さには脱帽するしかない。おまけの袋とじイラストロジックも含めて、本棚に置くだけで居心地のよさを提供してくれる。既刊8巻。お勧め。


亀屋玄武堂 ポストカード 100円
 雑誌Fellows!で連載中の『イン・ワンダーランド』の作者・薮内貴広氏のサークルだということに帰宅してから気づきました。今回のコミティアで一目惚れした絵柄。来年の五月のコミティアでは必ず漫画『蛇足氏を探して』を買おう。


[批評系]

サークルファイブエム「HYPERINFLATION」 100円
 各々の紹介者のFavoriteが圧縮された漫画レヴュー・ペーパー。このボリュームで100円は廉価。紹介されている作品群のなかの『とある科学の超電磁砲』と『へうげもの』しかわからなかった。が、それをもって2010年の日本において私の漫画リテラシーが高いほうではないとは決して言えない。マニアック。


●サークルファイブエム「5M vol.04」(特集:萌え4コマ的世界観が21世紀を支配する)1000円
 コンテンツの詳細は http://5m-web.com/?p=106 へ。
 随分前にある方から勧められた漫画が『スケッチブック』だったか『ひだまりスケッチ』だったかどうしても思い出せない。でもこの際どちらも読んでみようと思わされる、そういうレヴューが載っている。
 以前、「全自動萌え4コマ製造サイト」なるものがあるというニュースを読んだことがある。バラしたコマ(それは一瞬の風景だけのこともあるし、一つのエピソードの叙述であることもある)を特定の規則で並べると、なんとなく「萌え4コマ」っぽくなるという。真偽のほどは定かではないが、重要なのは、大小長短どのレベルでもかまわないから「コマ」という単位をつなぎ合わせることが人間になにかを感知させているということで、それは人間が普段、風景やエピソードの記憶を細かく厳密なかたちで保存しているのではなく、まさに「コマ」という単位にまとめて持ち歩いていることに起因しているように思える。萌え4コマは、だから私たちの記憶様式の縮図なのかもしれない。


反アニメ批評『アニメルカ vol.1』1000円
 コンテンツの詳細は http://animerca.blog117.fc2.com/blog-entry-10.htmlへ。
 畏友・村上裕一の『WHITE ALBUM』論が掲載されている。村上裕一の文章は癖になる。それはデヴィッド・リンチが癖になるのと同じように、公開されているものは出来・不出来の下馬評を問わず、全部読みたくなるのである。それは私たちが惹きつけられているのが内容ではなく、作り手の思考の呼吸そのものだからだ。内田百閒曰く「噺家はオチで笑わせるうちは下である」と。至言である。そしてたいていの中毒症状がそうであるように、読めば読むほど、乾きは止まらなくなるのだ。彼の処女作の出版が待たれる。
 そういえば初夏に勤務先の高校で行った「エヴァ/ヱヴァ特別授業」でゲスト出演してもらった折も『WHITE ALBUM』を熱く推薦されたがまだ未視聴である。『WHITE ALBUM』一気見の日を作ろうと思う。
by warabannshi | 2010-11-17 12:05 | メモ | Comments(2)
Commented by ラララルルル at 2010-11-22 16:58 x
ハローハローでアリマス。記憶が溶けてなくなってるかもしれませんがこの間二次会で夢の話などしたKです。
ネットに夢日記書いてるってことで挨拶しにきたのでアリマス。
しかし想定を遥かに越えるマジな量の夢日記でありました。
夢交換、夢売買、夢剥奪or夢独占によって世の中が展開してったらやばいですね。

いづれ道で偶然行き会うことあれば 挨拶しましょう 話しましょう オツカレサマデ シタ。
Commented by warabannshi at 2010-11-22 18:39
 竜馬かぶれを全開にして夢(生理的な)について語っていたのは覚えています。こんにちは。宇治拾遺物語の伴大納言の話で描かれていたような「夢トーク」は、文化としてマジにアリだなと思っています。夢はものすごい資源ですよ。尽きることのない。
 また夢か現で会いましょう。
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