開拓地。新しく建てた小屋がさっそく壊れて途方に暮れている。竜巻のせいで、日記帳も建材のほとんどすべても飛んでいってしまったから、『オズの魔法使い』のドロシーのようにそれらを探してまわらなければならない。
「ふぅぶぅぃあ、ずず?」
鍛えられた体付きの、身長4メートルくらいの女性が話しかけてくる。ベトナム語とも韓国語ともつかない、鼻濁音の多いイントネーションの複雑な言葉で、意味はわからない。とりあえず笑っているので安心する。私も笑う。
「ずず?」
彼女は笑顔を崩すことなく、私の右脚をばしりと折る。笑うときに使われる筋肉は威嚇のときに使われるそれである、という友人Nの言葉を思い出す。彼女は地面に頽れた私を放置し、次の小屋へと向かう。私は歩み去る彼女の引き締まった背筋と大腿筋にうっとりする。