第454夜「逆さ提灯」
 江戸時代中期、「逆さ提灯」と呼ばれる連続殺人が流行っている。裸にされ、喉元まで切り裂かれて内臓や血を抜き取られた被害者が、大八車の車輪に四肢を広げたかたちで仰向けに縛り付けられて、首をがくりと車輪の縁から垂らした状態で見つかることに、「逆さ提灯」の由来はある。
「怖いねえ」
 私は、駕籠かきの一人に話しかける。
 隣では、やはり駕籠にのっていた三人と三人が何やらもめている。片方はどうみても水戸黄門の一行であり、もう片方は『七人の侍』の久蔵と、六〇代くらいの侍が二人。水戸黄門の三人のほうが、後者の三人に土下座を強いているようであるが、離れているために、うまく聴き取れない。六〇代くらいの侍は日に焼けてごま塩のような髭が生えている。汚い風体だが、悪人ではなさそうである。議論はもっぱら、久蔵と、助さん格さんがやりあっている。
 そうこうしているうちに、誰かからか判らないが、いつしか刀が抜かれており、斬りあいがはじまる。
「あああ、始まっちゃったよ」
 私はまた駕籠かきに話しかける。
「こっちもやりあいますか?」
 駕籠かきをよく見ると、じつは立派な身なりをした侍風の小太りの男である。桜金造に似ている。あるいは、アンリ・ポアンカレに似ている。ふんどし一丁で日銭を稼いでいる無学な男と思い込んでいたが、違ったのか、あるいは彼は私の駕籠をかいていてくれた一人ではないのかもしれない。
 桜金造似の男は、匕首をこちらに向けている。
 私は二本差している身なので、リーチにおいて圧倒的なアドバンテージがある。
「いいですけど、その匕首で?」
「ただの匕首じゃないんですよ」
 すたすたとこちらの間合いに入って、私の隣に立ち、匕首の刃を、刃に対して垂直に縦方向に薄く割ってみせる。
「腹を刺すとするじゃないですか、そうすると、こうやってワンタッチで内臓を抜くところまでできるんです」
 こいつが逆さ提灯の犯人か! と気づく。
by warabannshi | 2011-02-06 06:22 | 夢日記 | Comments(0)
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