白塗りの雑居ビルのカラオケ屋に、名前を知らない4人の友人と来ている。
部屋の隅には隠しカメラがあり(潜望遠鏡のような)、オーナーが覗き見していることに、皆、気づいている。そのため、牽制しあって歌おうとしない。
「あと5分だよ」
すっかりアンニュイになってしまった友人の一人が言う。テーブルの上には、無農薬栽培された人参や大根の浅漬けの鉢がいくつか並んでいる。
「じゃあイルカの鳴き声やってよ」
「ジンギスカンが良くない?」
「それは歌? 雄叫びの方?」
「すべり台が良い」
ちょうどその頃、砂浜では佐藤蛾次郎に似た二人の男が相撲をとっている。革命家崩れのオーナーは、そちらの観察に夢中である。