布屋敷にいる。空間のいたるところで新陳代謝が活発化しているので、部屋から部屋へと逃げている。もちろん、逃げこんだ部屋では、前の部屋よりも新陳代謝が活発ではない保証はない。闇雲に逃げているだけだ。これではいけない、と思うが、止まっているよりも、逃げ走っているほうが気がまぎれるから仕方ない、パニックになるのも道理だ、誰ともなしに云いわけをする。一生懸命に走る。辺りが騒々しいのは、私が動き回っているせいで、この屋敷にノイズがたまっているからだ。もちろん、それ如きでどうこうなるような屋敷ではない。
ある部屋で、とうとう緑色の光点と対面する。泣きたくなるほど巨大な壁に埋め込まれた、一抓み光点に見入られたまま、私は動くことがではない。背中で、ぞりぞりと空間が代謝を始める。私の臭いの尾をたどって来たのだ、と思う。