監視が徹底している男子寮。ガス室のような巨大なシャワー室にも整列して入らなければならない。ただし、管理は行き届いていない。シャワー室のひんやりとした床は髪の毛がばらばらと落ちていて、裸足で歩くのは不快きわまる。
どういうわけか遅刻して、いつものようにシャワー室で衣服を脱いでいる。すると、監視官のおばさんの電話口の声が聞こえる。 「何かお土産をもっていくわよ。そうね、男物のスエードのジャケットなんてどう?」 私はぎょっとする。スエードのジャケットはいままさに私が脱いだものだからである。私は気付く。遅刻には非常にうるいくせに、盗難が絶えないのは、ほかならぬ監視官のこの中年女性が犯人だったからだ。私はお気に入りのスエードのジャケットを盗られたくないので、文庫本がぎっとりと詰った鍵つきのロッカーから取り出す。どうせ先方は合鍵を持っているに違いないのだから。私はジャケットを“受付”に預けに行く。 “受付”では、黒人男性と白い秋田犬がいままさに仮眠室に行こうとしているところである。息を切らしてやってきた私は厄介事を 持ち込むのが必定なので、歓迎されるはずはないのだけれど、“受付”の黒人男性は「スエードのジャケットを、ちょっと預かっていてほしいんです!」という私の頼みを、「なぜ?」とも言わず、聞き届けてくれる。 「それでは、明日の朝、取りに来てください」 私は安心する。監視官のひとりに盗癖の疑いがある、ということは、告げないでおく。親切な彼を寝かせてあげたかったからである。 私が廊下を戻ると、さきほどの中年女性が、私を追いかけてきたことに気付く。 私が電話を盗み聞きしていたことがばれたのである。 私は素知らぬ風をして、薄暗いエレベーターに一人で乗り込む。そして気付く。考えたくはないが、“受付”の黒人男性も、盗難に手を染めていたら? いや、そもそもあの監視官が電話越しにしゃべっていたのは、“受付”の黒人男性かもしれないではないか。わざわざ「男物のスエードのジャケット」と言っていたし。ああ、そうなったら何もかも思う壺だ。 そう考え事をしながら、エレベーターの止まったところで降りる。そのままシャワー室に向かって歩き出そうとしたとき、様子が変であることに気付く。 ここは5階じゃないか。 そして、つい最近、赴任したばかりの新しい監視官が、5階から謎の飛び降り自殺をしたことを思い出す。新米の彼女が、あの中年女性の盗癖を知ったばかりに、口封じのために殺されたシーンがありありと目に浮かぶ。私はいそいでエレベーターに駆け戻る。しかし、私を口封じのために殺すことをこんなにも焦るのならば、やはりあの監視官は、単独犯ということになりはしないだろうか。 そうだとすると、“受付”に預けた私のジャケットは無事であるかもしれない。私はちょっと安心する。
by warabannshi
| 2011-07-17 05:53
| 夢日記
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