第518夜「ナンパ」
 高高度の空を飛び回っている。巨大な雲塊のアイガーのような断面を突っ切ったり、仰向けになったまま脱力して成層圏を自由落下するにまかせたり。『エヴァQ』の予告編の弐号機の動きをトレースしたり。とにかく思いつく動きはなんでもやる。そのすべてが気持ちいい。雲と青空と太陽光のほかはあまりにも何もなく、自分がレーダー上を飛び回る一匹の羽虫に過ぎないように思える。
 都市部を見てみよう、と高度を落としていると、尻ポケットで携帯電話が鳴り出す。
 俗界に戻ったことを思い知らされるなあ、と思いながら、ものすごい風のなかで携帯電話を落とさないよう、慎重にポケットを探っていると、いつのまにか周りでは、マンハッタンのビル街が始まっており、ぶつかる! と思い、【森ビルの展望台に登ったときにいつも思い浮かべる、地面に叩きつけられて四方に水風船のように破裂した人間】のイメージが頭をよぎる。

 が、次の瞬間、私は喫茶店のテーブルから顔をあげる。
 眠って夢を見ていたようで、周りはいたって普通で、天井に大穴も開いていない。
 喫茶店は円形の部屋が4つ、それぞれに接しあっているという不思議な造りになっていて、どうやら竹橋かそこらの古いビジネス街にあるらしく、4つのうちの1つの部屋は紙媒体の新聞を置いてあり、ほかの部屋では背広の男たちがタバコを吸いつつ、それを広げている。この喫茶店〈喫茶室、といったほうが、いいのかもしれない〉もそうとう年季が入っている。コーヒーの代金を払って、そこを後にする。階段を降りる。さて、バスにでも乗って映画でも観よう、と思うが、なんとドアが茶室のそれのように小さい。
 茶室の戸、どころか、ひざまずくだけでも足りず、匍匐前進しながらでないと出入りできないサイズである。おまけに産道のように長い。
 失敗した。どういう趣向かはしらないが、喫茶室には、もうひとつの別の出口〈たぶん、ビル内に通じている〉があるはずで〈そうでないとあのビジネスマンたちは納得しないだろう〉、そちらから出れば良かった。後悔するも、とにかく、ここから外に出ようと、腹這いになる。そうすると、向こう側に人の足が見える。トンネルのなかでかち合っては仕方がない。とりあえず、私は先方に通路を譲る。
 ごそごそと音を立てて出てきたのは、高校生くらいの女子で、一目で喫茶店めぐりをしていることがわかる。
「すみません、Lambleはこの上でしょうか?」
 彼女と目が合った瞬間、そうだ、ナンパをしてみよう、と思い立つ。
「そうですよ、もし良かったら一緒にお茶でもしませんか」
 遊冶郎のような自然さである。
「ええ、良いですよ」
 やはり自然さが功を奏したのか、彼女は快諾する。しかし、よく考えたら今日はこれから彼女FとLPレコード・コンサートを聴く予定になっていて、ナンパなんてしている場合ではない。おまけに、口説き方については映画などで見知っているけれど、その切り上げ方についてはよく知らない。
by warabannshi | 2011-09-28 03:11 | 夢日記 | Comments(0)
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