昼食を買いに、白衣のまま自転車に乗り、スーパーマーケットに向かって走っている。
できればふわふわした甘いものが食べたい。例えばホイップクリームたっぷりのフルーツ・サンドイッチとか。と思いながら、アーケードの商店街をこいでいると、ふと、麻雀会館で何かの学会が開かれていることを思い出す。
そこに立ち寄ろうかとも思ったが、しかし甘いものも食べたいので、まずはスーパーマーケットにいそぐ。
薄暗いマーケットは、戦後すぐの闇市のような造りになっていて、店内まで自転車を乗り入れることが許可されている。花売り場、草履売り場を通り過ぎ、冷蔵食品売り場のデザートのコーナーまで、自転車を乗りつける。
しかし、ホイップクリームを用いた食品は、そこにはない。濃緑色のクロレラ入りゼリーや、よくわからない刺身状の肉が陳列されている。たいそうな音を立てて噴出される冷気は、ひどく饐えた匂いがする。背後で、男女二人の店員が、白衣姿のままでやってきた私をとがめるような視線をおくっているのがわかる。あるいは、リノリウムの床にタイヤ痕をつけてしまったことへの非難かもしれない。
私は、自転車をひきながら、スーパーマーケットを出る。
麻雀会館の売店では、しかし、甘いものを売っているかもしれない。
麻雀会館は、浅草観音温泉のように、外観はまんべんなく蔦におおわれているが、増改築をくり返しているので、中身は病棟のように近代的である。二階の渡り廊下を通り、階段教室のような喫煙所にいくと、Sさんと友人Sがオートポイエーシスについて話している。私も近くに座って、二人の議論に耳を傾けていたが、すべて忘却。