なにかよくわからないものを曲げ撓めようとしている。直径16センチほどの棒状の何かに、恥も外聞もなく、噛みつき、固定して、口から等間隔においた両の手のひらで、それに渾身の力をこめる。こめかみと顎がきりきりと痛む。しかし、それが曲がる気配はない。非常に悔しい。しかし、そもそも悔しさを紛らわせるために、この蛮行に及んでいたのではないか。それすらも忘れている。内側から突きあがる煩悶に、床を転げまわる。棒状の何かに噛みついたまま。台所で玩具にじゃれている犬のように。床を転げると気分がいい。その何かが曲がる気配は、やはり、ない。
結局、その何かを曲げ撓めることに成功したのか否かはわからない。ただ口の端がじんじんと痺れている。