非常に寒い国で、教員関連の求人広告をチェックしている。真夜中、部屋は狭いが暖かく、テレビのブラウン管が灯っている。音のないテレビでは、次のような映像が流れている。
【現地語で“設備”を意味する名前の短編アニメ・シリーズの、ひとつ】
ディック・ブルーナに描かれたような三頭身の少女が、不機嫌な顔をして、象牙色の洋式のバスタブの縁に腰かけている。服を着ている少女の右手には、何かが握りしめられている。眉をひそめたまま、険しい顔でどこか一点を見つめている。しばらくたつと、少女は立ち上がり、次の部屋へと進む(浴室の背景色は緑、次の部屋の背景色はオレンジ)。次の部屋には、初老の男性が目を閉じ、安楽椅子に腰かけている。少女は初老の男性の後ろに立ち、強い語調で何かを話しかける。初老の男性は振り向かずに、パイプをくゆらせている。二人の関係は親子ではないことが察せられる。少女はポケットから、一枚の便箋を取り出す。そして、それを床にたたきつける。不貞を働いたことを暴かれたらしい初老の男性は、しかし表情を変えることなく、パイプを口から離し、少女のほうは振り向かずに何かを言う。弁明なのか、無礼な物言いを窘めているのか、わからない。少女は不機嫌な表情を変えることなく、床の便箋を踏み、初老の男性の背後に立つ。そして、右手に持った四角いブロックを、勢いよく男性の後頭部に振り下ろす。倒れる男性。それを背中から抱きかかえ、浴室に引き摺る少女(それまでの部屋の背景色はオレンジ、浴室の背景色は緑)。
(…フェードイン)バスタブからは湯気が立ち上り、何かが煮えていることがわかる。少女は不機嫌な表情のまま、大きな柄杓でバスタブの表面に浮いたなにかを掬い取っては、桶に入れている。(…フェードアウト)
(…フェードイン)桶に入れた何かが、金属製の四角い型に流し込まれる。(…フェードアウト)
浴室で、三頭身の少女は、不機嫌な顔のまま、全身を泡だらけにして体を洗っている。手にはレンガほどの大きさの石鹸が握られている。少女は石鹸を塗りたくる手をとめ、険しい顔で宙の一点を見つめる。