第607夜「杉苔」
 所用を済ませて、駅からのいつもの帰り道を辿っていると、路地の角を曲がったところで、路上のマンホールの穴から背の高い杉苔の群生が噴き出すように生えている。おや、と気づくと、その先のマンホール穴からも、柔らかそうな繊維の蘚類がむちむちと生えている。誰かが手入れをしているのか、無暗に茂っているわけではなく、しかし伸びすぎたから短くしようという考えもないようで、杉苔は、地面に垂直に、小さいながらも針葉樹のように、そよ風に揺れながら立っている。ものによっては、私の膝小僧くらいの高さまで徒長している。
 しかしこれではこの路地に自動車は入ってこられない。いや、もちろん入ってこられるが、この杉苔の株は自動車の腹に擦られて台無しになってしまうはずで、そう考えるといつのまにこんなに育ったのだろうと不思議に思う。遠くで男の子が二人、何か笑いながら駆けていった。
by warabannshi | 2013-02-02 13:57 | 夢日記 | Comments(0)
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