第643夜「臨海試験場」
 モノレールに乗って、とある臨海試験場に向かっている。運賃を惜しんでいるわけではないが、1駅だけ乗って高みからの車窓の景色を楽しんだら、残りは降りて歩こうと思っている。私の他に乗客はなく、アルカイックな陽光が斜めに射した車内では、微細な塵が白く光ってゆっくりと宙を泳いでいる。
 気がつくと、「分倍河原」という駅に着いており、しかも扉は音を立てずに閉まろうとしている。降りようか降りまいかと迷っているうちに、扉は閉まる。次の駅は、「○(金偏に匂:かぎ?)の森」であることが、電光掲示板に流れるアナウンスで知れる。私は地図のアプリケーションで現在位置を確認する。間違いない。私が降りようと思っていた駅は、1つ手前の駅だ。
 軌条は広い河口の上へと続いており、群青色の水面がところどころ白い浪を立てている。この河口を渡るための橋は、この軌条が1本あるだけのようである。いや、嘘のような細い、避難通路めいた、銀色の金属網で出来た橋がある。手すりはついているものの、吊り橋というわけでもなく、何で支えられているのか見当がつかない。おまけにあまりに細くて向こうから来た人とはすれ違えない。もし河口の手前の駅で降りていたら、あの奇態な橋を渡っていたに違いない。それはそれでカモメやウミネコになったような気分だろうし、面白そうでもあった。
 臨海試験場には、かつての同僚で友人のNがいる。臨海試験場で、他の新しい同僚との打ち合わせのあと、雑談になり、「本を読むことはできない、文字を読むことができるだけだ」という話をしていると、Nが丸めた雑誌で叩いてくる。あっけにとられていると、「お前はいつもそうだから、お前はいつもそうだから」と笑顔のまま、泣いている。
「韜晦しているわけではないんだ」。私は景気よく打ち鳴らされる雑誌を防ぎながら言う。「これは能力の話なんだよ。文字を読むことはできる、というのは持ち運びができる属人的な能力だが、本を読むのは時間の話であって、持ち運び可能な能力ではない。つまり、1冊の本を読む、というのは、その本から続くほかの諸々との特殊な連鎖に連なることであり、そこに投げ込まれることだ。それは読んでいるあいだに流れる時間そのものだ」
by warabannshi | 2014-01-02 09:09 | 夢日記 | Comments(0)
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