第691夜「氷結」
 深い森の隅々にまで夜気が染みわたり、川の中島にある小ざっぱりした建物でピアノの演奏会が開かれる。ピアノは地下におかれていて、その演奏は計算されつくされた反響によって入り組んだワインカーヴのような建物のあらゆる柱まで届けられる。私は招待客の1人として、ピアノの演奏を、よく磨かれた木の柱に背中を預け、楽しんでいる。デカルトか誰かは「精神は骨だ」と言ったが、まさにその通り、演奏者とこの立体建造物、そして招待された二足歩行者の骨格が、この演奏のすべての観客である。
 ふとノイズめいたものを感じ、瞑っていた目を開けると、演奏者の連れらしい白人の男性が飲み物を片手に心配そうにうろうろしている。どうしたのかと聞こうしたが、聞くまでもない、雨が心配なのだろう。立体建造物の外ではノアの洪水もかくやといわんばかりの豪雨が森を打ち、そして、この建物を取り囲む川を増水させている。彼はこの蟻塚めいた場所で溺死するのが嫌なのだ。無論、それは正しい。ただ、この建物は水浸しになりはしない。こう見えて、島の地面はなかなか高く、古くからの神社が祀られているくらいに地盤もしっかりしている。私は再び目を瞑り、骨格だけの存在となる。
 眠りから覚めたように、また目を開けると、いつの間にかその神社の境内にいる。すっかり晴れた朝で、空気は埃がまったくなく、肺に気持ちいい。境内にはMさんとSさんがいて、トークイベントでも始まるのか、対談するような席が設えられている。私は邪魔をしないように、そっと鳥居をくぐって、境内を後にしようとする。すると、後ろからものすごい風が吹いて、雨のあとを瞬く間に粉雪に変えていく。私は立ちすくみ、樹氷となろうとする。私は一度も樹氷になったことがないのだ。ぱりぱりと結晶化するように微氷片が背中や肩を被っていく。私は嬉しくなり、大きく両手をかかげる。ちょうど鳥居に指先がとどくかとどかないかのところで、その指先を氷片が覆っていき、ついに氷によって鳥居と結ばれる。
by warabannshi | 2015-03-16 06:07 | 夢日記 | Comments(0)
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