第693夜「自転車」
見知った国立の道を自転車で走っている。自転車に乗るのは久しぶりなので、ついつい目一杯の力を込めてこぐ。ペダルをこぐ、というよりも、大臀筋から広背筋、僧帽筋までを一息にしならせる力を、両腕と両脚を通して自転車に伝えていく、伝達路としての感覚がとても心地よい。計画的に整備された街路は直線が多く、自転車と体の輪郭の変化に集中するにはうってつけである。本当に良く自転車と体がなじんだときは、まるで進行方向にむけて空気に割って入る1枚の紙のようになる。紙のイメージを得た無数の筋原繊維は、ともすれば逃げていく力をペダルへと垂直に落としこむ。そうやって考える具体物となり、中央線沿いの舗装された道路を走っていると、突然、アスファルトが途切れ、セイヨウアブラナの群落のなかに踏み固められた小道が遠くまで続く。数えきれないほどの黄色い花に囲まれて、自転車を降り、羽化したてのミツバチのように視野に眩惑される。
by warabannshi | 2015-05-10 08:22 | 夢日記 | Comments(0)
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