読.001『できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか』
ポール.J.シルヴィア, 高橋さきの訳(2007=2015)
『できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか』講談社
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=984061531536

 「たくさん」書けることが「できる研究者」かどうかは別として、「最低限書ける研究者」になるために読む。「できるかぎり多く働けば、一日あたりどれくらい書けるか」という自問ではなく、「○○と××を書き終えて、そして他の時間を思い煩うことなく楽しく過ごすにはどのように書かなければならないか」という自問から、研究者にとってのライフハックは生まれるのではないか。

[目次]
第1章 はじめに
 「本書を読む際には、書くという作業が、競争でもゲームてもないことを心得てほしい。どれだけたくさんの量を欠いてもよいし、少ししか書かなくても良い。自分が書きたいと思うよりたくさん書かなければならないなどと思い込まないこと。著作数や論文の多い研究者が、すばらしい研究者だと勘違いしないこと。論文を公表する一番の理由は、科学の世界でコミュニケーションをはかることにある。論文や書籍を出すことは、科学というプロセスの当然かつ必須の目標だろう」(7頁, 一部改変)
 本当にそう。

第2章 言い訳は禁物―書かないことを正当化しない
 「一気書き」については否定的。大事なのは、執筆日数や時間数ではなく、規則性であると。
「自分の執筆時間は、断固として死守せねばならない。執筆時間はすでに割り振り済みなのである」(16頁)。
 執筆時間のなかに目次や章の構成の時間は含むのかと思っていたら、やはり含むのか。文献を読むのも、校正刷りをチェックするのも、執筆方法に関する書籍や記事を読むのも。
「書くというのは文字を入力するだけではない。書くというプロジェクトを遂行する上で必要な作業はすべて執筆時間である」(20頁)
 しかし「書くというプロジェクト」の兵站のために、紅茶を淹れたり、洗濯物を畳んだりするのは、メールの返信をしたりするのは、これは許されるのだろうか。

第3章 動機づけは大切―書こうという気持ちを持ち続ける
 「動機付けは、具体的であれ」。
 著者が心理学者だからか、動機付けとかの話になると参考文献が良く出てくる。本書は類書と違い、ちゃんと巻末に引用文献一覧がある。とても好ましい。なぜ啓発本やハウツー本には文献リストをつける慣習がないのか。
 ともあれ、目標を書き出し→優先順位をつけ(1.校正刷や入稿用原稿のチェック, 2.〆切ありの事項, 3.再投稿のための原稿修正, 4.新たな原稿を書く)→進行状況を記録する(ワード単位)という流れは、目新しくはない。ただ、執筆時間に助成金の申請,事務文書の執筆を入れるのは予想外だった。それならメールの返信もありということになり、執筆時間はまるまるメール返信に当てられかねないのだけれど、その辺りの線引きはどうするのだろうか。
 そして、自分の場合、Twitterでいろいろメモしている時間は、馬鹿にならない執筆時間だったということもわかった。著者が行っているワード数による進捗管理は、Twitterによるツイート数で代替できるのではないか。今回なら、14ツイート。平均して100字くらいとして、1400字/時。読書記録ではなく、正味自分の頭で考えた事柄を蚕が糸を吐くように書いていってこの文字数になるか否か。増えるのか減るのか。
そして、それらのTweetを流しっぱなしにするのではなく(必要になったらTwilogで検索すれば出てくるだろうから、特にいままで編集してこなかったけれど)、こうやってブログにまとめようと思う。この決心をさせた点で、本書は読む価値があった。

第4章 励ましあうのも大事―書くためのサポートグループをつくろう
 特に言うべきことなし。アンソニー・トロロープという作家を知る。
https://kotobank.jp/word/%E3%83%88E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%97-107011
 そういえば無頼派で知られる太宰治も、毎朝決まった時間にGペンで原稿を書いていたという逸話が。

第5章 文体について―最低限のアドバイス
 「まず書く、あとで直す」。これも重要。というか、それ以外に何があるのか。

第6章 学術論文を書く―原則を守れば必ず書ける
 「アウトラインを作成せずに文章を作成してはならない」。一気書きした後で目次を作るという手順で卒業論文を書いたせいで、いまだに書く前にアウトラインを作るのが苦手。とはいえ、これもシラバス作るように時間をかければなんとかなるのかも。

第7章 本を書く―知っておきたいこと
 アウトラインの話。「しっかりした目次なしに書き始めることだけは禁物だ。本書について言えば、各章の中身を書きはじめるまでに2ヶ月くらい目次と格闘していたように思う」(137頁)。じつに安心する。草稿を章ごとのファイルに放り込んでいく形式は良い。

第8章 おわりに―「まだ書かれていない素敵なことがら」
 スケジュールを立てようという話に始まり、ワード数で進捗を管理することを紹介し、アウトラインなしの執筆は無謀だと戒める。そして最後に「それらをするのは、まとまった時間に執筆以外のことをして人生を楽しむため」で締める。うむ、アメリカン。
by warabannshi | 2015-08-23 01:46 | メモ | Comments(0)
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