第701夜「体験入隊」
 体験入隊のために国分寺駅で電車を乗り換える。駅の構内にまで冷たい霧が滲出していてすこぶる気分が乗らない。体験入隊の志願者たちでプラットフォームは混み合っており、全員示し合わせたかのように救命胴衣のようなダウンジャケットを着ている。男ばかりであり、誰も一言も発しない。
 電車が到着すると、しかしガタイのよいこれらの連中は戸惑うように、先を譲り合う。ははあ、臆しているな、と私は思う。ドストエフスキーの、いざ銃殺刑となったときに落ち着いているのはインテリであるという『死の家の記録』の文言を反芻し、1人のインテリゲンチャたらんとして、努めて平静に、不穏な四辻めいた車内に乗り込む。私の後に、ガテン系の面々が続く。無論、気分が良い。
 電車がどのように走ったか知れない。いつの間にか電車は大型バスに変わっており、真夜中の田んぼの畦道をしんしんと駆け抜けている。赤く映える曼珠沙華がぱっと蹴散らされる。私は自分が宿舎に向かっていることを知る。
 竹格子の裏木戸を盛大に突き破って、大型バスは田んぼの脇の東屋にたどり着く。私はバスを降り、志願兵のモラルの体現たらんとして突き散らされた竹の破片を広い集めはじめる。
「そのままで良い、そのままで良い」
やんごとなき雰囲気とともに、幾代前かの天皇が現れる。VTRでは、さらに別の代の天皇が巨大な蛙の面を付けて儀式を執り行っている。
「どうぞお楽になさってください」
せめて東屋に通す。幾代前かの天皇はVTRを眺めながら、待機中らしくやはり蛙の被り物を携えている。
「よろしければ、マッサージなどいかがでしょうか」
「お願いしましょう」
私は幾代前かの天皇の後ろにまわり、肩胛骨と脊椎に沿って背中の筋肉を触診する。強い強張りと加齢を感じさせない筋繊維が指紋を透して伝わる。これが玉体かと感心する。すでに首の付け根には鍼が何本か打ってあり、日々の重責を偲ばせる。
by warabannshi | 2015-11-07 00:38 | 夢日記 | Comments(0)
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