論文作成のために、その5:アブストラクトを作る
だいたいこんなところだろう。


 本論文は、土壌資源の扱われ方が約30年の間に食料生産の基盤から生態系サービスの基盤へと推移しつつあることをふまえ、土壌と農業をめぐる政策に実践的かつ倫理的な提言をすることを目的とした。
国際土壌年にあたる2015年、「世界土壌憲章」が34年ぶりに改訂された。旧版では食料増産という方針が明確であったが、新版ではその必要が相対的に薄れ、各種生態系サービスの維持と地域の特性にあわせた土壌保全が重視されている。日本の土壌劣化は深刻なレベルではない。しかし、セクショナリズムのもとで、土壌資源が賢明に利用されていとは言い難い状況にある。
 明治以降の日本の土壌管理政策は、食料供給だけでなく、炭素吸着などのより多様な使用価値を土壌に見出す方向に推移していることがわかる。1970年代以降は、農業倫理においても、食料供給を越えて地域のより良い生活を維持する営みとして農業が期待されるようになった。これらをまとめると、日本における土壌資源の「賢明な利用」のためには、食料供給に留まらない多様な機能を担いうる、それ自体としては未確定なものとして、土壌資源を位置づける必要がある。そのうえで、地域の実情にあわせて新しく土壌の使い道を発見できるようにしなければならない。
 なお、「賢明な利用」といえばアメリカの土壌保全が連想されるだろう。しかし日本とアメリカの土壌管理方針は同じものではありえない。確かに、戦後日本の土壌管理政策はGHQを通してNRCSの影響を受けている。しかし、日本は国土面積をアメリカの1/26しか持たず、ダストボウルのような大規模な人災の経験を持たず、そして穀物戦略を持たない。
 目下、必要と考えられるのは、セクショナリズムを緩和し、土壌の賢明な利用のためのデータ収集と情報システムの整備と人材育成を促進する基本法の制定である。土壌は重要かつ有限な天然資源であるにもかかわらず、森林や水と比べて相対的に十分な注意を払われていない。そのため、インベントリーの更新も人材育成も十分になされていない。本論文が、人と土壌の新しい関係を可能にする倫理的研究につながれば幸いである。

This paper is intended to be a practical and ethical recommendation to policies surrounding soil and agriculture. It addresses how soil resources are in the process of transitioning from the base for food production to the base for ecosystem services in the past roughly thirty years.
The World Soil Charter was amended for the first time in 34 years at International Year of Soils 2015. In the previous edition, policies on food production were obvious; however, in the new version, that necessity has relatively faded while importance has been placed on the preservation of several sorts of ecosystem services and soil conservation based on regional characteristics. Japanese soil degradation is not at a serious level. However under sectionalism, it is hard to say that soil resources are being used wisely.
Since the Meiji era, it can be seen that Japanese soil management policy continues to transition towards the use value of not only food supply but also the carbon adsorption of soil, among other things. Since the 1970s, agricultural ethics state agriculture is expected to go beyond thinking only about food supply by pursuing a better life in the region. In summary, "wise use" of soil resources in Japan can play a variety of functions that do not belong to food supply. As that itself is still undetermined, the position of soil resources need to be determined. Furthermore, the use of new soil needs to be discovered based on regional conditions.
It should be noted that "wise use" of the United States' soil conservation is associative. However, it is impossible for soil management policy in Japan to be the same as in the United States. It is true that soil management policy in post-war Japan has been affected by the NRCS through the GHQ; however Japan is 1/26 the land size of the United States with no experience of large-scale man-made disasters of soil, such as the Dust Bowl, and strategic grain trade.
Currently needed is the mitigation of sectionalism, the enactment of the Basic Act to promote development, human resource development of data collection, and information systems for the "wise use" of soil. Even though soil is an important and finite natural resources, we do not have to pay as much attention to it as compared to forests and water. Therefore, inventory updates and human resource development has not been fully realized. It is hoped that this paper will contribute to a better understanding of a new relationship between people and soil.
by warabannshi | 2015-11-19 08:05 | メモ | Comments(0)
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