さまざまな国籍のさまざまな分野の研究者たちが80人ほど、ベイエリアで立食パーティをしている。知り合いはおらず、交わされるのは英語と仏語、あとはそれぞれの母国語なので、私はスマイル担当を自認して、にこにこしながら料理を美味しく食べている。不意に、巨大な灰色な紙袋が海風にさらわれて空高く舞い上がる。南米系の男性が「韓国の友人にもらったお土産だったのに!」と嘆いている。糸の切れた凧のように、巨大な紙袋は芥子粒のように小さく、海上へと飛んでいく。「じっさいのところ、無くなったものは形を変えてあなたにもどってきますよ、そういう諺があります」。私はでっちあげの諺で落ち込んでいる彼を慰める。不意の出来事は、それが幸であれ不幸であれ、会話の糸口になるものだと思う。