探索記録26 「ソリトンSoliton」③
 正弦波は重ね合わせることができるけれど、ソリトンは正弦波や他のソリトンと重ね合わせることができない。重ね合わせられる正弦波は「線形」であり、そのために他の波から干渉を受けやすいけれど、「非線形」であるソリトンは孤立したままだ。
 「非線形性」だけで、ソリトンの異常な安定性の理由を十分満たしているようだけれど、ソリトンの時間経過を考えてみると、非線形という性質だけでは安定性を語れないことがわかる。

●「分散性」
 「分散性」は非線形性をもつソリトンを局在させない効果をもつ。つまり、他の波に干渉されず、力を弱めることのないソリトンの波高が際限なく大きくなることをふせいでいる。
 字面だけ見れば、「非線形性」よりも「分散性」のほうがイメージしやすいけれど、(予備知識がなければ、非線形、という単語を聞いて、重ね合わせができない多項式をイメージすることは無理だろう)、分散性という言葉が示すのはただの、ばらばらになる、というイメージではない。(むしろそれは「拡散」という現象なのだけれど、長くなるので説明はあとで)分散性は確率論でつかわれる概念なのだ。
 なんで波の形を考えるのに確率がでてくるのか? それは、波の形が伝わっていくのは“時間の経過”というファクターなしには考えられない現象だからだ。言い方を変えると、いまある波の次の状態は、部分的には前の波の状態から決定されるけれど、完全に前の状態には依存していないから、ずっといまの波形をたもっているわけではないからだ。つまり波の伝播を考えるには、“予言する”という作業が必要になってくる。その“予言”の作業を数学のなかで担っているのが確率論なのだ。
 それで、波の形がどのように伝わるのかを確率で“予言“したいのだけれど、数学は「数」を扱う世界なので、「形」を直接に扱うことはできない。そこで、「形」と「数」を対応させて、「形」から「数」に変換しなくてはならない。確率ではその対応関係が確率変数と呼ばれる。
 一方で、ある現象が無限回おこったとき,どういう結果になるかの平均は期待値と呼ばれ、それは「数」で表される。その期待値を、もういちど「形」に変換しなおすと、どういう形になるのかが予言できる。
 前置きが長くなったけれど、分散性とは、確率変数の分布が期待値からどれだけばらけているかを示す値のことなのだ。
by warabannshi | 2007-07-22 23:21 | メモ | Comments(0)
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