パーセプトロンを作っている天井の高い工場で働いている。
というのも、中学生のころ、何かを勘違いした父親に、レトロな潜水服の頭部につける金魚鉢を逆さにしたようなあの器具を渡されて、
「立派にお国を守ってこい」
と言われたからだ。(「立派なエンジニアになれ」と言われたのかもしれない。)
渡された呼吸器具を使って、海底を歩いて、どうにかしてこの工場までたどり着いた。
けれど、陸に上がった記憶はないから(そして、高校に進学した覚えもないから)、この工場は海底にあるのではないだろうか?
いま呼吸器具をつけていないのは、十年近く海底にいるからなのだろう。
フォークリフトが片方のフォークの先端だけで斜めに立って、独楽のようにくるくるとアクロバットに旋回している。これも海底ならではだと思えば不思議でない。
「アメリカのオタク・ストリートでは三万円の伊達眼鏡につけるつけ鼻と髭が二万円で売られている。」
このパーセプトロン工場一番の博学で知られる人が、そう言って伊達眼鏡を投げてよこす。
「一九三〇年、シンデレラがまだ信じられていたころの偶像だ。」
伊達眼鏡は黒縁で、むしろ変身前のスーパーマンがかけていそうな逸品。
ありがとう。