第70夜 「海外買春」.
 オノ・ナツメか笠辺哲の短編漫画。
 韓国か、北アフリカ諸国のどこかの国。二十歳くらいの男が貧乏旅行をしている。
 モデルみたいな体型の女性(浅黒い肌。プエルトリコ人?)が来て、その男に色っぽい目で誘いをかける。売春だ。
「幾ら?」
 幾らだかわからないが、とにかくものすごく安い金額。
 さすが海外! と思いながらうはうはしつつ、エロ目になりながら商談成立。
「どこに行こうか?」
 女性が目配せする先には公衆トイレ。そんなに汚くない。むしろ清潔な方。
 内部は男子トイレも女子トイレもなく、小用と個室があるだけ。(それはつまり、男子トイレしかない、ということか?)
 なかには掃除の叔母さんがいるので、形ばかりの小用をすませる。
 その間に女性は個室のなかに入る。
 男がわくわくしながら洗面台で手を洗っていると、別の男、やはり二十歳くらいのバックパッカーがせかせかとトイレにやってくる。
「や、コンドーム忘れちゃって。というか、ゴム手袋を間違えて持ってきちゃって」
 言い訳して女性のいる個室に入る。
 いまの彼は先客か? コンドームと間違えるゴム手袋って、手術用のあれか?
 男が考えていると個室でぎしぎし軋む音が聞こえる。
 順番待ちか、と思って洗面台で顔を洗い始めると、警官が出入り口からぬーっと出てくる。
 この国では買売春が禁止で、罪になるのだった。
 女性は囮捜査用のロボット。
 慌てて顔を洗い流す男に、
「あああ、流さなくてよかったのに。あなたはやってない証拠になるでしょう。」
 顔を洗い流したあと、洗面台には顔の皮膚とおぼしきものが膜状に落ちている。
 それも証拠になるかとは思うが、思う前に流してしまう。
「午後三時の便(護送車)は、いま個室に入っている彼で一杯になるから、あとで彼女を試してみたら?」
 冷たく笑う警官。苦笑する男。


※(現実の)彼女が警察官に対して由縁のない嫌悪感を抱いているのは、降霊会でエクトプラズムを出しているあいだに警察に写真を撮られ、死亡したヘレン・ダンカン(1897-1956)の記憶が(あるいは、ヘレン・ダンカンを扱った記事の記憶が)知らず知らずのうちに彼女のうちに残っているからだ。と目覚める前に直感する。
 ヘレン・ダンカンの死因は不明。あえて言えば、警察官の焚いた強いフラッシュが原因。エクトプラズムを出している最中に、フラッシュを焚いたり、手を触れたりすると、エクトプラズムを出している霊媒者の肉体に深刻なダメージを与えることがあるという。
 でも、彼女はヘレン・ダンカンのことを知らないだろう。
 どうでもいいけれど、イングランドには「魔法行為禁止法」があった。(1735年に施行され、1951年にはチャーチルが廃止するまで二百年以上も続いていた。)こういうお国柄だから、ハリー・ポッターが生まれる。




 プエルトリコ人が続けて夢に出てくるのは、『ウエストサイド物語』が関係している。つまり、プエルトリコ人の非行少年が組織しているシャーク団。でも、夢に出てきた人たちは映画に出てきた俳優とどこも似ていなかった。(早稲田松竹で年末にやっていたの興行は観られず、中学生のときに音楽室で観たとき以来だから、記憶違いがあるかもしれない。)浅黒い肌の人種はプエルトリコ人以外にもたくさんいるのに、なぜプエルトリコ人だとわかったのか? それは夢がでこかで『ウエストサイド物語』とつながっているからだ。というのも、プエルトリコ人をその映画以外で意識的に見たことはないから。
 けれど、プエルトリコ人が、二つの夢のいずれも、ある場所に“誘い込む”のはなぜだろう? 最初の夢は貯蔵庫に、次は公衆トイレに。どちらも罠がしかけてある場所に、足を踏みいれたら被害わ受けずに帰ってくることが難しい場所に、彼らは誘い込もうとする。あるいは、行きたくてもその場所の蠱惑のために踏ん切りがつかない場所へと、彼らは押し出そうとしているのだろうか? それとも、主客が逆で、じつはなにかを罠へと誘い入れようとしているプエルトリコ人こそが夢の主人なのだろうか?
 さらに、どちらの夢にも、誘い込まれた先には先客がいる。最初の夢には、サラリーマンらしきスーツを着た退屈そうな四人組が。次の夢には主人公役とそっくりなバックパッカーが。誘い込まれた/押し出された場所に仕掛けられた罠の正体はどちらも明らかになっているが、彼らは先に罠にかかっているにもかかわらず、その罠から実質的な被害を受けてはいない。つまり、その罠はいまだに効力を発揮していないということになる。けれど、どちらの夢も“幽閉”こそが仕掛けられた罠の効果なので、(つまり、貯蔵庫のなかから出られないという状態や、あるいは刑務所行き)すでに夢のなかにある視点は夢から出られないという点においてあらかじめ罠の効果を受けているとも言える。最初の夢の貯蔵庫は、「夢の貯蔵庫」であり、小部屋の一つには一つの以前見た夢が対応しているのだから、“夢に閉じこめられる/閉じこめられている”ことは証言されている。
 では、閉じこめられた夢のなかで“さらに閉じこめられたら”どうなってしまうのだろうか?

※ プエルトリコは、音楽に合わせて踊りながら行う格闘技・カバディ――ではなく、カポエイラで有名だと思い込んでいたのだけれど、カポエイラはブラジルだった。プエルトリコもブラジルも、どちらも中南米だけれど、公共語は前者はスペイン語で、後者はポルトガル語だからなんの関係もないと言って良い。
 
by warabannshi | 2008-02-10 07:37 | 夢日記 | Comments(0)
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