第115夜 「北海道食べ歩きの心得」
 彼女と北海道に来ている。
 港町? 漁港? すくなくとも、札幌や小樽などではない。
 これから二人で食べ歩きをしようとしているのだが、彼女が試験答案の採点をしているためになかなかホテルから出てこない。
 午後三時、手持ちぶさたなので商店街をぶらぶらしていると、商店街の始点であるアーケードのそばに、掘っ立て小屋がある。3チャンネルの昔話人形劇で、鶴が機織りをしていそうな、そういう小屋。
 ちょっとそこで休もう、と思い、小屋に入ると、じつはそういう趣向の居酒屋。
 といっても、わざと掘っ立て小屋っぽく装っているわけではなくて長年営業していたら、煤けてしまったようだ。北海道の寒さは古びさせるのが早いのだろう。
「ああ、すいません。四時半からなんですよ」
 店員のお兄さんが奥から出てくる。
 なるほど、奥のテーブルでは他の店員が二人、胡麻をすりこぎで擂っている。座敷席には布団が山積みになっている。
「でも、外が大雨なんで、ここで待たせてもらってもいいですか?」
「かまいませんよ。どうぞお座敷の布団、使っててください」
 座敷の山積み布団にもたれかかって、“余は満足じゃ”状態にひたる。
「お通し、お持ちしましたー」
 ビールも頼んでいないのに、つまみを持ってきてくれる。もずくと中トロを酢で合わせたもので、酸っぱいけれどかなり美味。ますます“余は満足じゃ”状態が深まる。
 と、ぞろぞろと店員さんたちが集まってくる。
 何かと思ったら、ハンバーガーやコンビニのサンドイッチなどをいっせいに食べはじめる。
 開店前の腹ごしらえか。でも、なぜ賄いを食べないのだろう。お通しですらこんなにおいしいに。
 そういう訓練でも積んでいるかのように、ハンバーガーやサンドイッチを美味しそうに食べる店員たち。例えば、ハンバーガーを地面と水平にもっていき、咀嚼と同時にやや下方に傾ける、などの工夫が見られる。CMを見ているみたいだ。食べた断面ですら、人間の歯ではなく機械で切断したかのように美しい。
(この人たちは、絶対にCMを誤解している……)と思う。

 採点をしている彼女の視線。
 ホテルにいるはずの彼女は、なぜか北海道の小学校の、無人の教室で採点をしている。
 答案は雪の結晶のスケッチ。雪の結晶が描かれたA4版紙が、山積みになっている。
 そのなかには、こっそりとうちの答案も混ざっている。
 携帯電話でうちからの着信。
「採点、進んでる?」
「ちょっと、今日いっぱいかかりそう」
「帰りの飛行機に間に合わなくなるんじゃない?」
「え、帰りの航空券なんて、とってないよ」
「はい?」
 電話口の向こうで慌てているうちの声。視線だけになりながらうちも慌てる。
by warabannshi | 2008-04-08 11:31 | 夢日記 | Comments(0)
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