第141夜 「『ある料理人の挫折』、ついに映画は三本目に」
 同僚Nと、武蔵美で映画を観ることになっている。
 モノレールで武蔵美に着くが、外はものすごい雨。
 そして、着いたのは、武蔵美、と見せかけてじつは中央大の多摩キャンパス。
 駅とキャンパスはつながっていて、キャンパスは巨大な階段状。『戦艦ポチョムキン』で、乳母車ががこがこと転がり下りていくような、殺風景な、巨大な階段。
 映画はこの階段状のキャンパスのどこかで行われることになっている。
 くわしいことは知らない。
 ただ、モノレールに乗っていたヤクザの人々が、ぞろぞろと一定方向に向かって歩くので、そっちだろうと思って着いていく。

 その映画はある料理人の話。
 フランス料理のシェフだった彼は、何年かある豪邸で働いていたのだが、ある事件がきっかけで料理人生命を絶たれる。
 それは、ある日のスープに関してだ。
 そのスープは、料理人がホスト役を務めていたときにふるまわれた。
 スープを飲んだ日本人たちは、みな無言だったが、一人のフランス人は露骨に顔をしかめて、
「こんなスープが出てくるようだったら、フランスじゃやっていけないよ」
 と言い残し、席を立ってしまった。
 厨房にいた料理人が、あわてて部屋に来たときには、フランス人は帰ってしまったあと。
 その日は、彼の生涯の伴侶となるニナが、初めて給仕をした日でもあった。
 けれど、そのスープのなにが、フランス人を怒らせたのかは、いまだにわかっていない。

 だが、スープだけが、料理人のキャリアを台無しにしたわけではない。
 その当時の映像をとったカメラマンが、彼のキャリアを台無しにしてしまったのだ。
 カメラマンは一般人で、おそらくその料理人の知り合い。
 禿げていて、上唇がやけに分厚い、いまいましい顔つきの中年男性が、その日の映像を撮っていた。
 男性はワインに酔っぱらい、だんだん傍若無人になっていく。
 客を撮っていたカメラで、だんだんその豪邸の調度品を、撮るようになっていく。
 そして、飾られている日本人形の髪を剃ったり、ブラックジャックみたいな傷痕の落書きをするようになりはじめる。
 男性は、ついに壁一面の、巨大な鏡にワインをぶっかけはじめる。
 そして、「座布団の墨」を、さらにその巨大な鏡に、まんべんなくぶっかける。
 薄墨色の「座布団の墨」は、ワインのかけられたところは防水されたようにはじかれて、だんだら模様になる。
 巨大な、高価な鏡を汚し尽くしたあとで、カメラマンの男性はふひふひと息を切らしながら笑う。

 そのすべてが、映画のスクリーンに写されている。


(追記 08.5.26 0:30)
 中央大の多摩キャンパスは去年の11月10日に、科学哲学会で行ったことがある。
 不思議な地気のある空間だった。
by warabannshi | 2008-05-20 23:59 | 夢日記 | Comments(0)
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