大学の四階にある生協購買部。フロアすべてが書籍部で、ふつうの本屋と見まごうばかりだ。(慶応の三田キャンパスの生協? 秋葉原の電気館のなかの本屋?)
なぜかBookOffの店内ソングが流れている。
あの曲が大嫌いなので、(店内ソングはすべて嫌いなので、)退出しようとする。
よく聴くと、店内ソングは微妙にメロウな感じになっていて、いつもと違う。
なぜか平積みになっている、BookOffの店内ソングの解説本を手に取る。
BookOffの店内ソングは極貧のフォークデュオによって歌われている。
一人(A)はネットカフェ難民で、もう一人(B)はふつうに公園に住んでいる。黒縁の眼鏡をかけた坊主頭のAがリーダー。
今のところ売れているのはBookOffの店内ソングだけ。
・Aのインタビューの見出し
「カップラーメンは、椅子や机の下でもどすと旨いんですよ」
(見開きの写真は、Aがインタビューを受けながら、カップラーメンを机の下に押しやっているのを、机の反対側から見上げるようにして撮ったもの。Aの視線は、インタヴュアーのいるらしい斜め上へと向けられている)
・Bのインタビューの見出し
「ブルーシートの家だと、お客を招けないのが辛いです」
(Bはそれでも大学に通っている。大学に通っていて家がない人はめずらしい。それほど向学心に満ちているということか。Bの不満はAが家に泊まっていってくれないこと。(B)「ぜったい、俺のこと臭いと思ってるんですよ」(A)「そんなことないって!」)
売れなかった場合のゆずを見ているようで、心が痛む。
けれど、私がBookOffの店内ソングを好きになることはあり得ないだろう。