第194夜 「一体・三人の啓蒙本、あるいは正しい喪の作業」
 父が何かの死体を山に埋めにいくというので、朝早くから自動車の運転をしなければならない。死体は、車の後部座席に詰め込める程度らしいので、大きさは人間くらいだろう。
 丸一日の作業になると思われるので、車で出かける前に、部屋のベランダに通じる窓をあけて換気している。
 パソコンに接続されているコピー機や、ステレオも、ベランダに出して、陽に当てる。
 しかし、なぜ機械類まで日光に当てなければならないというのか? 殺菌?

 父のでかける準備がなかなかできないので、古本屋で買った三冊の自伝本を読むことにする。
 三冊の作者は同一人物だとばかり思っていたが、じつはばらばら。
 じつは、三人に分裂したのかも?
 そう思うくらいに、不幸な身の上の、セレブレティな人々の話。
 一人は、難病のために全身不随になっていくアメリカ人男性。本はその闘病記。
 もう一人は、アメリカの副大統領を経験したことがある人物の回顧録。
 最後の一人は、イギリスで「第三の道」を指導していた大統領の(ゴーストライターを使わない)手記、というか遺書。
 「第三の道」を指導していたのはブレアだったはずだが、なんかもっと長ったらしい名前の人物。ファインマンとか。そういえば、彼は人気も高いが、奇行も有名で、その類もこの本にはおおく収録されている。中表紙には、逆立ちして廊下を歩く彼の姿が白黒写真で撮られている。いよいよファインマンにそっくりな元大統領だ。
 と、なぜか本を読む前からその内容がわかっている。

 ただ、三冊とも、本の内容がわかって然るべきなのだが、ほかの二冊はおぼろげにしか内容がわからない。「キッシンジャー」とか「チェルノブイリ」とかの固有名やカットだけが浮かんできて、リアリティをもった流れとして理解することができない。
 これが、鮮明ないくつかの夢と、よく覚えていられない無数の夢の違いに対応しているのかもしれない、と思う。だとすると、「闘病記」、「回顧録」、「遺書」は夢のジャンルということか。ジャンル分けが成立するとしても、常に「遺書」だけを鮮明に覚えているというわけではないだろう。
 それとも、鮮明な夢とは、少なからず誰か(人間に限ったことではない)の「遺書」なのか?

 ファインマン元大統領は、妻と息子と、妻の胎内にいる娘(受精後八ヶ月)の四人で、模範的な家庭を営んでいた。
 ある旅行のさなか、小学生の息子に元大統領は、車のなかで何かをおねだりされた。
 元大統領は笑ってそれを軽くいなした。じっさいに、それは軽くいなせるような内容のおねだりだったのだ。
 けれど、翌朝、その息子はホテルの屋上から投身自殺した。
 懊悩する、元大統領。
 けれど、とりわけ、ショックの大きい妻のために明るく振る舞ってみせる。
 その翌朝、妻も投身自殺してしまう。
 先端が四つにわかれた街頭に腹部を貫かれて、ひっかかっている彼女と彼女の胎内にいる娘の死体をを通行人が見つけたのだ。
 明るく振る舞う必要のなくなった大統領は、その後、どうしたか?
 自家用車で、つるはしをもって、三人の死体を山に埋めにいったのだ。
 死体を山に埋める、という考え方は、ほとんど愉悦をもった調子で書かれている。
 そしてこの本は、三人の死体を山に埋めた後、自殺しているのが発見された元大統領の遺書らしい。
(世の中には、似たような考え方をする人が多いものだ!)
 と思いながら、その本を閉じる。
 父もこの本を読んで、何かの死体を山に埋めに行こうとしているのかもしれない。
「雨が降ってきたから、雨戸を閉めなさい」
 いつの間にか、外は大雨。いそいで、コピー機や、ステレオを室内に入れる。
by warabannshi | 2008-08-29 09:29 | 夢日記 | Comments(0)
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