第198夜 「教会の無差別テロリスト。彼らは人類初の(ではない)単独飛行者であるが、国柱ではない」
 九歳ぐらいの、栄養状態の悪い少年。有色人種だが、どこの国の生まれかはわからない。
 ここは少なくとも、スラム街で、どこの国でも同じような困窮のなかにある。街並みそのものは、キューバ映画で観たキューバに似ているかもしれない。コンクリート打ちっ放しの無愛想な四階建てくらいの雑居ビルが、潮風で風化している。ことごとく、ぼろぼろに崩れかかっている。壁面には何ごとかのスローガンが、読めない文字で書いてある。おそらくは土俗宗教の誓言。カーペットを干してある窓もある。
 中近東か、東南アジアのスラム街かとも思うが、アメリカにある移住区かもしれない。
 これから、キリスト教の教会(カトリック? プロテスタント? それ以外?)で無差別テロを行いにいくのだから、占領区なのかもしれない。

 待ち合わせているのは二人。
 一人はジャマイカ人の青年で、もう一人に関してはおぼろげにしか思い出せない。
 ジャマイカ人は低脳に近いから、この無差別テロの段取りをつけたのは、おぼろなもう一人だろう。
 おぼろなもう一人はパナマ帽を被り、麻の白っぽいスーツを着ていたような気がする。知性的であることに間違いはない。藤田和日郎の描くキャラクターに似ている気がする。『からくりサーカス』のパウルマン先生の生徒たち、とか。
 ジャマイカ人が、なにか、苦情をものすごい早口でまくしたてる。
 口調の、異様なリズム感の良さからスラングをかなり交えていることがわかる。
 九歳の少年にわからないのは当たり前だ。
「遅刻は厳禁だ。それが、******であっても」
 麻のスーツ男が、そう言いながら巨大な機関銃を僕に手渡す。
 BAR(ブローニング自動小銃)? でも、全長が二メートルくらいある。
「では、始めよう」
 ジャマイカ人が、柄物のシャツを着て、教会の正門の扉を開ける。
 そして、ゆっくりとしゃがみ込む。
 ジャマイカ人の右肩に、巨大な機関銃のマズルを乗せて、僕は引き金を引く。
 被弾して倒れる老若男女はほとんどが白人だから、ここはやはりアメリカの一地区なのかもしれない。三十人くらいが一回目の掃射で倒れる。すべてがスローモーションなのは、こちらの興奮状態のせいだろう。
 スーツ姿の白人女性がこちらに駆け寄ってくる。彼女の高い鼻を摘んで、正門の階下へと放り投げる。
[女性 30mm, **(ジャマイカ人の青年) 6mm]という、鼻の高さの数値が出る。
 第二掃射のときには、椅子の陰などに隠れている人々の位置がサーモグラフィのようにして把握することができるようになっている。背骨、腎臓などの急所がすでにロックオンされている。
 殺戮が続き、僕は麻のスーツ男に、機関銃から引き剥がされる。
「もう充分、殺したよ」
 そして、自動車のボンネットに貼る初心者マークを手渡される。
 初心者マークを背中の、両肩胛骨のあいだに貼ると、瞬く間に複雑な(質量保存の法則をまったく無視した)機械状の翼になる。
 空中へと飛び上がると、そのまま高度五〇〇メートルくらいにまで達する。
テロップ [彼らは、この時点では自分たちが人類初の単独飛行者であると信じていた。]

 いままで居たスラム街が、島のなかにあったことがわかる。
 圧倒的な気持ちよさのなか、初心者マークだった翼で、あらん限りのスピードを出してその島の上空を旋回する。何度も、何度も。すごいスピードで海鳥にぶつからないように、そこは注意しながら。
テロップ [たしかに、彼らはニュートン第二法則に関して、新しい境地を開いたと言えよう。]
 翼が剥がれかけるので、手で押さえながら、どこかに下りるところはないかとやっと地上を探し出す。
テロップ [けれど、彼らの他にも、飛行者はすでに居たのだ]
 地平線の向こうから、自転車に両翼のついた機械が向かってきて(こちらも、自転車型機械の方に向かっていって)、空中でわずかに衝突する。
 そのまま、僕は近くの原生林へと舞い降りる。
 ジャマイカ人も、麻のスーツの男もいない。
 原生林の向こうには、よく見るとゲートがあり、ふと、ここは「国柱(こくちゅう)」(*1)を供える領域だとわかる。
 数人の人間が、ゲートの向こう側をめざして逃げているが、瞬く間に変形した木々(それらは、もともと国柱だったのだ)に引き裂かれたり、地面に呑まれたりしている。巻き添えにはなりたくないので、マングローブのような根っこの陰に隠れる。
 しかし、国柱だったツル植物がこちらに這いすすんでくる……。

幻覚:
 日本のある山荘で、やはり九歳のまま、白兵戦に臨んでいる。
 相手はひげ面の、三十歳ほどの男性。状況は、二階から自分の存在を知らずに降りてくる相手を、階下の陰で待ち伏せして即死させること。
 手近な武器が要ると思ったので、傘立てからビニール傘を抜き取るが、それを男に見られてしまう。
「ああ、いまのは減点だね。全体重をかければ、九歳だってオトナの首の骨くらい折れる。きっと彼は、ナイフをもって戻ってくるよ」と、麻のスーツの男。
 はたして、男は出刃包丁をもって階下から降りてくる。
 ビニール傘を突き出すが、男に片手でその傘を掴まれる。
 それに合わせて、男のもう片方の手にある出刃包丁に飛びつく。
 その勢いで、彼の腹部を裂くことができればよかったのだが、最初の一撃では出刃包丁を落としたたけ。仕方がないので、彼の右手首を裂くことで失血死させようと、頭のなかで次第をシミュレーションしてみる。


(*1) 国柱とは、“ゲートの内側”の統治を安定させるための生け贄。
by warabannshi | 2008-09-20 03:53 | 夢日記 | Comments(0)
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