カテゴリ:夢日記( 712 )
第700夜「円谷英二」
知らない大学での長い長い勉強会が終わり、彼女Fと帰ろうとしている。すでに薄暗くなっており、言葉を交わすことなく速足で「小竹向原」にある家路を急ぐ。しかし小竹向原がどこにあるのか、二人ともわかっていない。
「線路沿いに行けば良いのでは」「それだ」
しかし、嫌がらせのように路線は煩雑を極め、足元で一部のレールが絡まっているほどである。それでも無理して歩いていると、川にさしかかり、鉄橋の上を歩いていくこととなる。鉄橋は段々細くなり、とうとう黒々とした縄のようになる。彼岸まではあと数十歩ある。
「これは戻ったほうが」「少し考えるよ」
だが、結論は出ている。私は回れ右をしてもと来た狭い橋を歩き始める。
「揺らさないで!」
鉄橋は分厚いゴムのように大きくしなり、私は振り落とされまいと捩れて縄と化した鉄橋に掴まる。財布がぽろっと落ちそうになるが、平常心是道、リフティングの要領でうまくいなし、足の間でキャッチする。そのとき、
円谷 英二が大胆さと細心を学んだのはこの時であった」という字幕が流れる。
そういう設定だったのかと思う。

by warabannshi | 2015-10-08 00:55 | 夢日記 | Comments(0)
第699夜「渡り」
 トガクレソウの大規模な渡りが発生している。高山植物であるトガクレソウは4枚の白い花弁をつけるごく地味な草本であるが、季節の変わり目に群生地を変える。その一帯に生えるありとあらゆるトガクレソウがいっせいに空へと飛び立つのである。私は駐車違反のワンボックスカーのドライバーをからかうのをやめ(鍵をかけようとする直前に、どこかしらのドアやトランクをこっそりと開けておくのだ)、その崇高な光景を見る。トガクレソウは地上部の茎のごく地面に近い部分を自切し、風向きとは関係なしに西の水平線に向けて浮遊をはじめる。それが、数千万本におよぶため、まるで石灰化した地面そのものが浮かび上がるかのようである。リョコウバトの渡りをはじめてみたアメリカ大陸の入植者が感じたであろう、気圏の底に棲む者の無力感に、私もこの高山植物の大移動を見ながら加わる。
by warabannshi | 2015-10-06 07:23 | 夢日記 | Comments(0)
第698夜「失敗」
A.
 巨大なムカデの体内をくりぬいて作ったドームのなかにいる。一つ一つの体節が小部屋になっていて、半透明の瞬膜のようなもので仕切られている。薬物か何かで処理されているだけで、この巨大ムカデはまだ生きているのかもしれない。小部屋から次の小部屋へとおっかなびっくり進んでいくと、突き当りになる。肛門に達したようである。戻ろうとするが、瞬膜は動かない。可変性を失い、周りの壁のようにキチン質のとぼけた色合いになってすっかり硬化している。叩いても、蹴飛ばしても、びくともしない。しまった、これは消化されるパターンか、と観念して、近くの椅子に腰かける。ほとんど真っ暗に近い空間をしばらく見つめていると、めりっと壁が破壊される。光が射す。助かった、と思い、外に出ると、そこは下草の生い茂る照葉樹林の森であり、手には20万40円のレシートが握られている。救助のための手間賃にしては、高い。このムカデ・ドームの弁償代だろうか。頭を抱える。

B.
 ワシントンDCに出張に行くために、おそろしく寂れた地方空港で手続きをしている。国際線が来るのかと訝しむが、ちゃんとゲートはある。しかし電光掲示板はなく、黒板で便の発着が知らされる。定期船の待合室みたいだと思う。出国手続き間際でパスポートを忘れたことに気付く。真っ青になっていると、その場で証明写真を撮り、臨時パスポートを作ってくれる窓口まで案内される。ポラロイドカメラと鉛筆と厚紙で、さらさらと玩具のようなパスポートが作り上げられていく。本当にこれで良いのか。隣では、ESTAも発行している。
by warabannshi | 2015-09-26 10:09 | 夢日記 | Comments(0)
第697夜「孤児院」
 生まれ育った孤児院での食事会の誘いを受けていたことをすっかり忘れていたことに気づき、学校のトイレの洗面台の前で落ち込んでいると、名前を知らない生徒が入ってきて、「先生、トイレの中で歌わないでください」と苦言を呈する。もちろん、高歌放吟したい気分からはもっとも離れているので、生徒の方をふり返らずに「私じゃないよ」とだけ言う。
「でも、たしかに太田先生の声でしたよ」
「誰かの声が反響してそう聞こえただけじゃないの? 個室を調べてみたら?」
 自分もなんだか気になり、その生徒と一緒に個室のドアを順番に開けていく。
 最後から二番目のドアに手をかけたとき、なかから確かに私自身の気配を感じる。躊躇したが、生徒が後ろにいるので、思いきってドアを開ける。そこには狭い個室に布団を敷いて芋虫のように眠っている私がおり、いったい何をしているんだと問いただそうとした途端、目が覚める。
by warabannshi | 2015-09-24 09:30 | 夢日記 | Comments(0)
第696夜「4コマ漫画」
 筆で簡単に描かれたこまっしゃくれた児童2人が手をつないで歩いていると、自分たちと同じくらいの大きさの白い円盤状の何かが先を歩いているのを見つける。「月の明るい部分のようだね」。そして先を歩く白い円盤の方も、うすうす感じている。「何かの原因が近づいてくる」。
 2人の児童は、白い円盤の一部と思しき欠片をそれぞれの手にもって、それを頬張っている。「案外固いね」、「煎餅みたいだ」。そして白い円盤のほうも、アンパンマンのように、欠けた図体のまま、変わらない表情で歩いている。
 そんな4コマ漫画として、見ていた夢をしたためていると、後ろから名前の知らない誰かが私に声をかける。
「そういうのって、太田さんのなかで何に位置づくんです?」
私は答える。「記録です、アウトリーチが違う類の」
そして、ケント紙に染みこませた薄墨が乾くのを待つ。
by warabannshi | 2015-06-20 06:41 | 夢日記 | Comments(0)
第695夜「四本脚」
四歩脚という渾名をもらい、南国のリゾート地にいる。焼けるような砂浜で、往年のポカリスエットのCMに出てくるようなスポーツを片端からやったところで、たどり着いたのは自転車だった。しばらくそれほど大きくない島を走ったあと、緩い登り坂のふもとにある木製の電信柱によりかかり、集中して自分宛の知らせを受け取ろうとする。どうでも良いニュースに混じり、はらぺこあおむしという渾名の、顔を思い出せない友人が自殺したことを知る。葬儀に出たいが、喪服の持ち合わせがない。白いワイシャツの下に黄緑色のティーシャツを着ていけば、青虫のようで供養になるだろうか。
by warabannshi | 2015-05-28 06:34 | 夢日記 | Comments(0)
第694夜「蜘蛛の巣」
寓話―揺れ動く葉の先端に糸をかけ、巣を作ろうとする蜘蛛は、八つのうちの二つか三つが常に葉から離れるせいで、巣を大きくすることができない。
by warabannshi | 2015-05-23 08:45 | 夢日記 | Comments(0)
第693夜「自転車」
見知った国立の道を自転車で走っている。自転車に乗るのは久しぶりなので、ついつい目一杯の力を込めてこぐ。ペダルをこぐ、というよりも、大臀筋から広背筋、僧帽筋までを一息にしならせる力を、両腕と両脚を通して自転車に伝えていく、伝達路としての感覚がとても心地よい。計画的に整備された街路は直線が多く、自転車と体の輪郭の変化に集中するにはうってつけである。本当に良く自転車と体がなじんだときは、まるで進行方向にむけて空気に割って入る1枚の紙のようになる。紙のイメージを得た無数の筋原繊維は、ともすれば逃げていく力をペダルへと垂直に落としこむ。そうやって考える具体物となり、中央線沿いの舗装された道路を走っていると、突然、アスファルトが途切れ、セイヨウアブラナの群落のなかに踏み固められた小道が遠くまで続く。数えきれないほどの黄色い花に囲まれて、自転車を降り、羽化したてのミツバチのように視野に眩惑される。
by warabannshi | 2015-05-10 08:22 | 夢日記 | Comments(0)
第692夜「インスタレーション」
 名前を知らない土壌博物館の一角で、インスタレーションが行われている。インスタレーションの担当が小学生のときの懐かしい旧友の名前であったので、私は薄暗い水飲み場の横の、長方形に切り取られた壁の中の暗闇に入っていく。しばらく歩くと、フィルムが上映されている。ホームビデオのようで、画質が荒い。何人かの小学生、頭の大きさと骨格のバランスからして低学年の児童が、水着の後ろ姿で映っている。市営プールと思しきプールサイドに腰かけて、こちらに背中を向けて、何か喋っている。しかし、その声は大人のそれである。
「加藤っていま何やってるの?」
「大阪にいるみたいだよ。結婚もしたって。仕事は忘れた」
「捕まったやついなかったっけ」
「一人じゃないだろ」
 同窓会で話すようなことを、その離される内容をまだ経験していない小学生たちがしゃべっていることに面白さを見出す作品、と一瞬思いそうになるが、それはまだ足りない。私は腰かける。そもそもこの小学生たちの、たぶんJリーグ・チップスのおまけやラメの入ったカードの話をしている姿を、ビデオに映して、それをとっておいた親が素晴らしい。映像はぶれず、きちんと三脚を使っていることがわかる。この作品のテーマが時間であることは間違いないが、どのように時間を愛おしむか、ということがここでのポイントだ。そして、おそらくこのアフレコされている音声もまた、このビデオのために撮られたものではないのだろう。居酒屋のような環境音が混ざっている。アフレコされている声もまた、5年または10年ほど前に録音されたものとみえる。
 この水着姿の小学生と、同窓会をやっている声の持ち主とが、同じ人物であるかどうかは、この作品は明らかにしていない。しかし、私には、水着の主と声の主が同じ人物であることがわかる。いずれも知った顔だ。そして、このビデオに私が入っていないということが、私個人にとってこの作品の意味をさらに付加させる。なぜ私はこの作品が始まったプールサイドにいることができなかったのだろう。後悔は、そのような問いとともに、嫉妬の形をとって生じるものであることをひさしぶりに思い出す。
by warabannshi | 2015-04-01 18:07 | 夢日記 | Comments(0)
第691夜「氷結」
 深い森の隅々にまで夜気が染みわたり、川の中島にある小ざっぱりした建物でピアノの演奏会が開かれる。ピアノは地下におかれていて、その演奏は計算されつくされた反響によって入り組んだワインカーヴのような建物のあらゆる柱まで届けられる。私は招待客の1人として、ピアノの演奏を、よく磨かれた木の柱に背中を預け、楽しんでいる。デカルトか誰かは「精神は骨だ」と言ったが、まさにその通り、演奏者とこの立体建造物、そして招待された二足歩行者の骨格が、この演奏のすべての観客である。
 ふとノイズめいたものを感じ、瞑っていた目を開けると、演奏者の連れらしい白人の男性が飲み物を片手に心配そうにうろうろしている。どうしたのかと聞こうしたが、聞くまでもない、雨が心配なのだろう。立体建造物の外ではノアの洪水もかくやといわんばかりの豪雨が森を打ち、そして、この建物を取り囲む川を増水させている。彼はこの蟻塚めいた場所で溺死するのが嫌なのだ。無論、それは正しい。ただ、この建物は水浸しになりはしない。こう見えて、島の地面はなかなか高く、古くからの神社が祀られているくらいに地盤もしっかりしている。私は再び目を瞑り、骨格だけの存在となる。
 眠りから覚めたように、また目を開けると、いつの間にかその神社の境内にいる。すっかり晴れた朝で、空気は埃がまったくなく、肺に気持ちいい。境内にはMさんとSさんがいて、トークイベントでも始まるのか、対談するような席が設えられている。私は邪魔をしないように、そっと鳥居をくぐって、境内を後にしようとする。すると、後ろからものすごい風が吹いて、雨のあとを瞬く間に粉雪に変えていく。私は立ちすくみ、樹氷となろうとする。私は一度も樹氷になったことがないのだ。ぱりぱりと結晶化するように微氷片が背中や肩を被っていく。私は嬉しくなり、大きく両手をかかげる。ちょうど鳥居に指先がとどくかとどかないかのところで、その指先を氷片が覆っていき、ついに氷によって鳥居と結ばれる。
by warabannshi | 2015-03-16 06:07 | 夢日記 | Comments(0)



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