カテゴリ:夢日記( 709 )
第676夜「謎々」
 分厚い1切れのハムを、5人で公平に切り分けることが求められている。「真ん中に長方形が残るように、4方向から切れ目を入れていけばよいようにまっさきにイメージされるが、脂身が偏っていたり、結局のところ、直方体のブロックが1つを残してあとはくず肉になりそうで、そんな理想通りにいかないのは分かっている」。そう、屈強な4人の男たちのひとりが言う。私はなぜか女性になっており、そのためなのか、すぐにこの謎々の答えがわかる。「構わずハムを4等分に。そして、4人はそれぞれの肉を。私はすべての肉の断面をいただこう」。それは結局のところ、すべての肉をお前が掻っ攫うということなのではないか。4人の男たちは闖入者をこき下ろす。「私は肉を食べることはできない。私の取り分は断面であって、肉そのものではないから。同時にあなたたちも肉を食べることができない。すべての肉の断面は私の取り分であるから」。寓話めいたこの解決策は、しかし4人の男の食欲の前では現実的ではなく、棄却される。
by warabannshi | 2014-07-09 05:35 | 夢日記 | Comments(0)
第675夜「鉄塔」
 何百段も階段を昇っているうちに感覚は麻痺していき、それまで何をしていたのかわからなくなる。青いワイシャツにネクタイを締めているが、灰色の薄手のパーカーを羽織っており、下はだぼだぼの部屋着のような木綿のズボンで、足には何を履いているのか覚束ない。一人で良かった。すれ違った名前を知らない顔見知りに驚いた顔で目礼をされたのは覚えている。息は切れていない。しかし、空気は乾いており、大分薄いように感じられる。軽い頭痛がしている。階段の踊り場の鏡は、良く晴れた青空を映している。ここが最後と思い、振り向くと、果たして、打ち放しのコンクリートに四方を直方体に切り取られた青空に、dignityを具現化したような巨大な黒い銀色の鉄塔の頂端が風に吹かれている。
 正にこれを観ようとしていたのだ。私は非常に満足して、堪えられずに欠伸をする。誰からも忘れ去られたステンレスの物干し台には、もとは何だったのかわからない、朽ちた布が揺れている。私はその物干し台によりかかり、しかしこれを記録する術がないので、タル・ベーラならこれをどのように撮るだろうか、あるいはルネ・マグリットなら、とさまざまな無い物ねだりを喉の渇きとともに飲み込もうとする。
by warabannshi | 2014-07-09 05:09 | 夢日記 | Comments(0)
第674夜「竜巻」
 東京駅のどこかわからない広くて薄暗いコインロッカールームで、文芸同人の面々と待ち合わせをしている。待ち合わせ時刻よりも前のはずなのだが、すでにコインロッカーの前には多くの人が集まっており、僧形の人もいるのでまずこの集まりだろうと思う。
 一緒に中華料理屋に向かう道すがら、芝生を敷いた校庭の隅で、小さな竜巻が生まれている。寒暖差のせいなのか、小さいながらも旺盛に土埃を跳ねあげている。私はなんとなく嬉しくなり、竜巻のほうに駆け寄る。すると、その竜巻が私の頭の上に乗り、そのまま首から肩へと降りてくる。いくつもの雲母のような氷の切片が私のほほや首筋に当るが、まるで洗われているようでとても気分が良い。気がつくと、竜巻は消え、私の両腕は真っ白になっている。霜でも降りたのかと思って前に突き出してみると、宙空に真っ白の文字をすらすらと書き浮かべることができることに気づく。「Holly Garden」と試しに書き浮かべてみて、漫画のようなことができるようになった両腕にうっとりする。
by warabannshi | 2014-07-01 01:46 | 夢日記 | Comments(0)
第673夜「投身」
 市民大学として使われている吹き抜けの雑居ビルの高層階から、1階のそれほど広くない床めがけて肥満した男が身を投げた。幸いにも、巻き添えをくった人間はいなかったが、もし振ってきた男の真下に歩いてでもいたら、頭が肩にめり込んでいただろう。つぶれた男の腹の下から、黒い物が染みだしてきている。私は、それが当然のように血だと思ったが、眼を凝らすと、それはゼラチン質の微細な無数の文字である。どの国の文字かはわからない。精子のようにあてどなく震えるそれらの文字は、男の体内から放出され新天地を求めて外へ外へと動いているが、埃だらけの床で次第に活力を失くし、縮まって丸くなる。
「誰に殺されたのだろう」
 研究が行き詰ったか本の読みすぎか何かで自殺したものだと思っていた私は、さっきまで私の正面で資料に目を通していた名前を知らないクラスメイトの発言に驚く。
「これは、種子を飛散させる果実の裂開だ。飛散したがった文字が、内側から果実を突き動かしたのだ」
 もう1人、誰かが口をはさむ。なるほど。しかし、それなら文字は、乾いた砂粒のようであるはずだ。そうでないのは、十分に熟していなかった、ということだろうか。
by warabannshi | 2014-06-16 09:19 | 夢日記 | Comments(0)
第672夜「惑星」
 惑星が深呼吸するように、霧のような小惑星群を吸い込んだり、吐き出したりしている。小惑星なのか、それとももっと微細な、フォトンに近いものなのか、あまりに遠いのでわからない。何千億、何千兆もの魚の群のようでもある。静かな視野のなかで、その視野をもつ誰かが泣いているのがわかる。
by warabannshi | 2014-06-03 19:54 | 夢日記 | Comments(0)
第671夜「品評会」
 俳句の品評会が、中学校の教室で行われている。前の黒板に5つ、後ろの黒板に2つ、それぞれ白いチョークで五七五が縦書きされている。7つとも私の詠んだ句らしく、うれしくもあり、また余計な事をしている様な気がかりもあって、曖昧な気分で座っている。教室には何人か人が動いているのだが、それが生徒なのか何なのかわからず、友人Sの顔は見かけたが、2枚重なった紙にお互いのインクが裏移りしているような、奇妙な遠さがある。
 私が教室の真ん中あたりの机に座っているにもかかわらず、どんどん句には寸評がチョークで書き足されていく。そのなかに、「世界一どうでもいい(応)」というのを見つける。最初の夢の句に付されたもので、しかし、7句ともすべて夢の句なのだから、お前の夢の記録など世界一どうでも良い、ということだろう。字形から、何人か、書いた生徒に心当たりがある。とはいえ、わかったところで、それもまた、どうでも良いことなので、「世界一どうでもいいと感じた対象に、『世界一どうでもいい』と書きつけるに至った感情の流れ」を推測してみることにする。
 便々とどれだけ時間がすぎたのかわからないが、チャイムが鳴る。黒い影の人々が、こぼれ落ちるように教室から出ていく。私も一粲を博している者の曖昧さがとんで、急いで教室を出る。なぜ教室を出ているのかわからない。しかし、教室の外には、奇妙な風体の男性が、白衣に明るい茶色の長髪を後ろで束ね、赤いセルフレームの眼鏡の左眼の下に傘立ての番号札のようなプラスチック片をぶらぶらさせている男性が、待ちかねていた、というように私と一緒に走り出す。
by warabannshi | 2014-06-03 07:31 | 夢日記 | Comments(0)
第670夜「ベンサム」
 夜、凪いだ、大きな貯水池のほとりで、ジェレミー・ベンサムについて話している。
「ゲーテと同い年だったか、同年代のこのイギリス人は、それまで高尚であると皆が思っていた哲学や倫理学をほとんど独力で引きずりおろした。そのきっかけは彼が5歳のときに指に噛みついた蟻だった。幼いベンサムは蟻をもう片手の指で弾き飛ばした。すると、蟻の胸部と腹部はどこかに飛んで行ったが、くらいついている頭部だけは相変わらず残っていた。この蟻の頭部が、彼自身の革命だったのだ」
 しかし、私はベンサムのことなんてまったく知らない。
by warabannshi | 2014-05-27 09:20 | 夢日記 | Comments(0)
第659夜「南海」
 私は名前を知らない同僚とともに、課長室のドアを開ける。かつて上官であった課長は、リクライニング機能のついた椅子によりかかって天井を眺めている。
「意見具申!」私は直立不動して言う。
「もうその言い方はやめろと言ったろ」
 道成という名前の課長は、半ばうんざりしたようにそれでもこちらを向く。
「わたくしはやはり、あの死体が死にきっていたとは思えないのです!」
 名前の知らない同僚が私の隣で、やはり直立不動で雑なスピーカーのように声を張り上げる。そうだ、と私は思い出す。南海の孤島で、私たち3人は低緯度に特有の星座の下、匍匐している。まるでNHKの人形劇のように、星座は白い線で夜空に描かれている。椰子の木は、何十回も、別々の話で、ここが何回の孤島であることを示唆するために使われたであろうフェルト製の椰子の木である。明るい真夜中を匍匐している私たちは、ふと、海岸で燃えている1つの死骸を見つける。正確に言えば、明瞭にヒトの形をしたものがうつぶせになって燃えているのを見つける。
 私たちは砂浜で海亀の産卵を見つけたときのように、その死骸が燃え尽き、炭化したそれの一部が崩れるまでじっと物陰で、椰子の木のかげで、1つの無骨な双眼鏡を回しながら観察していた。炭化しているのだから、生きているはずがない。しかし、生きているはずがないことが死にきっていることを保証するだろうか。名前の知らない同僚はそう言いたいのだろう。そう思い、私は隣を見ると、誰もいない。いつのまにか私は、巨大な液晶テレビの前で、休めの姿勢をとっている。液晶テレビは私の記憶のなかであるはずの人形劇の南海を俯瞰で映したまま、一時停止されている。
 私は堪らなく恐ろしくなり、課長室であったはずのその部屋を出る。痰が喉にからみ、吐き出そうとしても、うまく吐き出せない。犬のように噎せながら、私はどこでもない廊下を早足で逃げる。
by warabannshi | 2014-05-19 02:39 | 夢日記 | Comments(0)
第658夜「都庁図書館」
 母方の祖母2人と母とで、新宿副都心の辺りを歩いている。祖母2人は双子のようであるが、正確に同一人物であり、しかし疲労度に若干の差があるため、階段を上るペース、歩くペースが違う。
「私はこちらに付くから」と、母はより疲れている祖母に寄り添う。
 健脚を発揮してずいずいと立体交差点を歩いていく2人目の祖母に慌てて追いつく。いまにも雨粒が落ちてきそうな重ったるい曇天が、大きな水たまりに映る。2人目の祖母を目の端で捉えながら、この水たまりがボリビアの塩湖ほどに巨大であれば痛快だろう、と思う。それを祖母に話そうとすると、
「都庁の図書館はどこだろうねえ」
 祖母はきょろきょろしている。
「都庁の図書館はわからないけれど、都庁はあれだよ」
「嘘だよ。あれは寄宿舎じゃない」
 自分が指さした方を見ると、遠くに都庁のように見えたのは確かに寄宿舎で、その前の駐車場には滑らかな鏡のような水たまりが静まり返っている。
 私が見とれていると、また2人目の祖母はまた先に行ってしまう。いつしか周りは草本に囲まれ、煉瓦作りの建物が右手に現れている。アカデミックな雰囲気にそぐわない、自動小銃を構えたさまざまな人種のガードマンがいるところから、これが都庁の図書館であることが知れる。2人目の祖母は入り口の掲示板のところで私が来るのを、そして母ともう1人の祖母が来るのを暇そうに待っている。私はようやく追いつき、祖母の隣で掲示板を見る。ガラスの向こう側で、モンキチョウが1匹閉じ込められたまま舞っている。
「時間をテーマにした映画が多いね」私はポスターを見ながら祖母に言う。「光の芸術というより、記憶の芸術だね」
 その瞬間、小さなモンキチョウが亀裂のように発光をはじめ、次第にただならぬ強さの光を惜しみなく撒き散らす。
by warabannshi | 2014-05-04 03:32 | 夢日記 | Comments(0)
第657夜「玩具(ピエロ)」
 産道のような地下街を、名前の知らない気の置けない仲間たちと一緒に歩いている。時刻は早朝。店舗はシャッターを閉めているが、冷え切った地下街の通路の床にはたくさんの人が坐りこんでいる。制服姿の女子高生がスカートから突き出した両脚をぐるぐると包帯で巻いて、地面に敷いた段ボールの上で眠っている。怪我をしているのではなく、防寒のためである。しかし、塹壕戦の傷病兵のように見える。何かの売り出しを待っているのだろうか。産道めいた地下街にいる人たちが行列を作っているのだとしたら、まだ最後尾は見えていない。
「俺、もう帰りたくなっちゃったよ。ここまで来るのに疲れ果ててしまった」
 アメリカン・カジュアルな格好に身を包んだ仲間の1人が言う。
「休んでおけよ。まあ、ネットカフェなわけだけれど」
 別の仲間が言い、他の仲間たちと、そしてそれを聞いた地下街の地面に座っている人たちも一緒になって、笑う。知り合いなのだろうか。
 ぞくりと、背中を削られるような悪寒がして、振り向くと、いま私たちが歩いてきた産道の出口の方から遠く、1体のピエロの玩具が陽気に跳ねながら近づいてくる。とてつもなく嫌な予感がして、私は仲間にあの玩具から逃げようと言おうするが、仲間たちは誰もいない。私はとっさに、壁を向いて、地蔵のように気配を消すことにする。発条足のぎしぎしという音が背中のほうで近づいてくる。そして、それが十分に離れたところで、私は地蔵になるのをやめて、慎重に振り向く。
 ピエロは相変わらず跳ねているが、不意に自分とそっくりなピエロの玩具を見つける。それをしげしげと見つめた、と思いきや、ピエロの頭は電動泡だて器のホイールのように回転し、自分とそっくりな玩具の頭をあっという間に粉々にする。ピエロはその頭のままで、産道の地下街を跳ねながら、その地面に座って恐慌状態となった人々をまったく機械的に血祭りにあげていく。逃げようとした人の1人が、宙に浮いた何千万もの正露丸のような金属球の群に襲われ、壁に打ち付けられ、極微の網のハエ叩きで潰されたハエのようにミンチ状になって死ぬ。その金属球の群は、意思を持った赤い霧となって、次々に人を襲っていく。
 私は、自分が無事であることに笑いたくなるほど安心していたが、ふと気がつくと、左足を置いているところの床が剣山のようになっている。慌てて左足を持ち上げると、鋭い剣山の先端はぐいっと伸び、常に私の左足の裏と甲を貫こうとする。私は右足だけで立ち、左膝をまげて左足を腰のあたりで右手で持つことで何とか一定の安定を得るるしかし、苦行者ではあるまいし、この恰好でずっと居続けるわけにはいかない。どうすればいいのか。
 ピエロが来た通路の方から、腕相撲芸人が歩いてくる。つまり、なりは小さいが腕っぷしが強いので、賭け腕相撲で日銭を稼ぐ路上の芸人が。
「すみません、ちょっとその段ボールをお借りしても良いですか」私は言う。「その段ボール1枚を、私の左足のあたりに敷いていただきたいのですが…」
 もちろん、段ボールでピエロの悪意が防げるとは思っていない。しかし、藁しべが浮いていればすがるべきである。寡黙な腕相撲芸人は、黙ってその段ボールを私の左足のあたりに投げ出す。私はそろそろと、痺れた左足を下ろす。なんともない。段ボールの外に、左足を置く。やはり、なんともない。何がきっかけだったのか、よくわからないが、私の左足は穴だらけにならずに済んだことが、私を非常に愉快な気にさせる。
by warabannshi | 2014-04-14 05:05 | 夢日記 | Comments(0)



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