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●産声の延長で繁茂したモノとなること  (元「ハミングするからだが知っていること。の日に。」)
 今月の初めに養護学級の林間学校に付き添ってから意識的になったのだけれど、うちはハミングが大好きだ。養護学級の子たちは楽しさに浮かれているときはほんとうにこっちまで楽しくなるようなハミングを前後、左右に揺すった体に響かせている。
 声を鼻腔に響かせて伸ばしながら、旋律の域を上げたり下げたりしていると、自然と噛み合わされた奥歯の微かな隙間と両方のこめかみが「びぃぃぃぃん」と音叉みたいに痺れてくる音程の集合がわかってくる。そこでハミングを強めると、まるで体の中身が電子レンジになったように脊椎を軸にして固体である骨や軟骨が(歯は固体のまま)液状化する、というと大袈裟だけれど、音の透明なさざ波が皮膚の内側で真っ暗になっている骨髄や筋繊維、赤血球に血小板、自由神経終末をまんべんなく振動させるのがわかる。
 音は、固体中でも気体中でも伝わるわけだから、振動が伝わることを「液状化する」と表現するのは、やっぱりおかしいかもしれない。ハミングが絶頂に達しているときも、大小、色も重さも違う生体器官は、それぞれの信じられないほど機能的な配置のなかに、溶けることなくしっかりその複雑な形を保って機能しつづけている。けれど、それらを構成するのが細胞、約二二〇種類にもなるというさまざまな細胞であるふだんは気付かれることのない事実は、音程の集合のなかでにわかに立ち現れてくるのだ。(そのときに消化物ほど音を濁らせるものはないのだけれど、これはまたあとで書いておきたい。というか、もともと簡単な日記のつもりで書きはじめたのだけれど、それでは収まる気配がないのでどんどん長く書いていこうと思う。)
 いま書いたことが、いわゆるハミングする体の「内側」で起こっていることの素描なのだけれど、それだけではハミングについてなにも語っていることにはならない。ハミングは体の「外側」に鳴りわたろうとするところで、初めてハミングする人間に、作用をはじめる。自分自身の遥かな産声の記憶を呼び覚まさせる。
 産声は、人間がその一生のうちで可能なかぎりの、徹底的に生きることにポジティブな表現だと思う。うちはもはやすっかり忘れてしまって想像するしかないのだけれど、羊水で充たされ萎縮していた肺が冷ややかな匂いの、無数の粒子のまじった外気で押し広げられるときの、あるいは光度という初めて接する質感の情報を処理しかねて戸惑う眼球と視神経の、掻きむしるような痛痒の訴えでありながら、産声にはしかし、一点の退却の予兆すらなかったのではないか。そう思うのはうがった見方だろうか。起源、という純粋なニュアンスをもった言葉に惑わされているだけなのだろうか。しかし、母親、家族にその存在が祝福されようがされまいが、そんなこととはまったく関係なしに新生児はたしかに泣くのだ。なんの留保も、隠された意味もなく。
 産声は、「死」に関する隠喩の圧縮-冗長によって可能となる「美」とは対極にある。けれど人間に可能な「美」は産声とその延長によって規定-基底されており、産声とその延長によって規定-基底されていない「美」はひとつの例外もなくすべてがゴミ屑なのだ。陰鬱な雰囲気を常にどこからか引き寄せてその組成に含んでしまう「美」は産声に興味があるが、産声は「美」に興味がなく、いつも「美」に先行して中空を乱れ飛ぶ。しかし、それを掴まえることに執心することはない。呼び起こさせるべきは他人の産声ではなく、<わたし>、<あなた>というひとまとまりの有機体が過去に完全に開かれた状態でたしかに叫んだことのある"その声"なのであり、<わたし>や<あなた>という言葉を驕ることなく使うことが許されるのは、"その声"とその延長へ向かって、自身に記載されたすべてのことばと自身より圧倒的に巨きな運動量を奉仕させる準備ができたときのみなのだ。
 ならば、準備が整ったそのあとの経路、あるいは手順とは?
 新生児は限りなく物質に近い。物質を短絡させることばを習得し、物質から離れ、物質であることができなくなった人間がそれでも物質の繁茂へと近付くには、自身をモノとなし、モノとなった自らを所有するのがよいだろう。
 新生児という物質に限りなく近付くために、常に繁茂したモノであろうとすること。
 ただし、これは大変に危険な戦略である。「モノとなった自身を所有するA」、を所有するA'、を所有するA''、を所有するA'''、を所有するA''''……という、たった一つのルール『所有せよ』の終わりのない循環に巻きこまれれば、万人の万人に対する競争=消費経済のなかでニヒリズムに現実を摩耗させられてしまうことは明らかだ。モノを所有することをやめれば良い? たしかに、所有という行為は所有する者に消極性と死臭を刷り込んでいく。胃腸にためこまれた消化物がハミングの音を濁らせるように、所有されたモノは快楽によって意識を白濁させる。
 しかし、所有されたモノの裏側には常に他者が貼りついている。モノの生産に関わった他者、モノを交通させた他者、モノを所有することができなかった他者、そして、モノを所有する以前のあなた、という他者。――
 所有とはつまり、自分のなかに停止した他者、異物を含ませることなのだ。あるいはモノの裏側にある他者は息を吹き返し、あなたを罵倒し、あなたに殴りかかり、逆にあなたをモノとして任命するかもしれない。わからない。あなたとあなたの所有するモノははっきりと異なるのだから。
 あなたをモノに仕返すかもしれないモノ(人間の造りだしたモノであるところの、獣、人形、機械――)を所有することで、それらから自身を繁茂したモノとするための教育を受けつづけること。それらはどこかでモノを所有する者への屈従の調子ではなく、万人が万人を所有する誇られることなき優越の調子においてのみ可能となり、同時にその調子を可能にする。
by warabannshi | 2006-10-22 15:08 | Comments(0)
第12夜 「REM睡眠周期」
 早朝のクロネコヤマトの仕分けバイト先から帰ってきて、仮眠をとる。
 目覚めて、枕元の時計を見ると12時ちょっと過ぎ。
 やった! ついに昼まで寝ることができた!
 と、なぜか誇らしい気分になっている。
 グリーン・デイのCDをイヤホンで聴きながら眠ったのが9時ちょっと過ぎだから、
 約九〇分周期で起こるといわれるREM睡眠を2回くり返したことになる。
 眠っていても人間の体は精密に機能している。
 これは誇ってもいいことだ。と思う。

 小学校のときの同窓会に行っている。
 バスケットボールのゴールポストが一つだけ、コンクリート打ちっ放しの壁に埋まっている
 白くて殺風景な地下室に、十人くらいが集まっていて、歓談している。みんな友人だ。
 Nがすごい太っていて、それを指摘すると、
「いや、おれもひさしぶりに卒業アルバム見たら全然顔が違うんであせった」
 とか言う。
 違いすぎだ。もう昔みたいにうちが彼をおんぶすることはないのだろう。と思う。
 それと、やっぱり小学校のときよくおんぶしていたKがなぜか死んでいることになっていて、
 おまけにそのKの棺桶が地下室にあって、
 みんなで棺桶を担いで無人の高速道路まで辿りついたところで目が覚めた。

 目が覚めると、9持半。
 なんと、うちは十分程度しか眠っていないことになる。
 あんなに濃い夢を見ていて、たったの十分しか寝ていないとは。
 もしかしたら入眠時にグリーン・デイのCDを聴いていたせいかもしれない。
 この一日は長くなりそうだ……と思いながら、朝日の眩しいリビングに行く。
 弟がコーンフレークを食べていて、うちも空腹だったのでヨーグルトを食べることにする。
 冷蔵庫を開けると、一個だけフルーツヨーグルトがある。
「兄ちゃんが食べられないの、なんだっけ?」
 リンゴだ。うちはリンゴアレルギーなんだ。
 ヨーグルトのパッケージを開けると、白桃、蜜柑の他に、リンゴがしっかり混ざっている。
「でも、このヨーグルトのリンゴは加熱処理されているみたいだから平気だよ」
 と、うちは応えてスプーンを探す。
「じゃあ、今度、チマキにリンゴを入れてあげるよ!」
 この弟はバカなんじゃないだろうか。そもそもリンゴはチマキに入れるものじゃない。
 上海のチマキは全部、餅米で作る、ということを思い出す。

 クロネコヤマトが裏でやっている売春組織で、車が足りなくなった、という電話が入る。
 まさか客のところに宅急便の車で行くわけにはいかないもんね。
「車が空いたらあたしに電信くれる?」
 と元ヤンっぽいお姉さんに言われ、「了解です!」と快諾する。


[実際に仮眠から目が覚めたのは11時で、
 グリーン・デイのCDはイヤホンからとっくに流れるのを確かにやめていた。]
by warabannshi | 2006-10-19 11:35 | 夢日記 | Comments(0)
探索記録23 「健やかなる発情のために probe-ベータ版」
probe
[動](他)
 1 〈傷などを〉探り針で探る.
 2 …を綿密に調べる, 精査する.
[名]
 1 (動物の)触角, 触手;(外科用の)探り針(explorer).
 2 (…の)厳密[綿密]な調査, 精査;
 3 宇宙探測機.
 4 《軍》偵察.
 5 (飛行機の空中給油用の)燃料補給パイプ.

(あなたはあなた自身を人間にするべきなのだと、……「人間」を自称するあなたは、励起した青緑色の携帯電話の向こう側に広がっている雑木林の暗闇の深奥に立ち、おそらく話し相手と同じ星座の配置を見上げながら、四十億年ほど前の海底火山の赤黒い火口からこの瞬間へと静かに連なって運搬されつづけてきた遺伝暗号の一部を体現した無数の葉の下で、それらの一枚一枚からゆるやかに吹き出されつづける二酸化炭素の濃密な湿気と、朔へと向かい闇のなかへ欠けはじめた満月の反射光と、いまだ深層に陽光の記憶を宿した温かい黒土の匂いを呼吸し、固く弾力性のあるゴム製の持ち手のついた銀色の自転車のハンドルの先端を汗のにじむ繊細に発達した左手で握りながら、あなたとの交通を望んだ、けれど哀願することのできなかったヒトに、ヒトの発した((わたしは人間だろうか?))という問いかけへの沈黙という形式によって、「あなたはあなた自身を人間にするべきなのだ」と告げ、胸郭から囁かれる声の色彩変化を探ろうと平衡感覚が失われるほど鼓膜に神経を集中させたヒトは、眩暈の外側で変わらぬ息遣いと意図を触知し、声なき声という暗号の解読、隠された意味の探査こそが、「人間」という振る舞いの文字どおり“すべて”であることを果たして知っているのか、――いや、もちろんそれが「人間」であると“すべて”承知しているあなたの暗黙を荷電した粒子を介して施される。困惑や恐怖、小心さや妥協に発しない無言は人間に許された、ヒトが発するある種の問いかけへの最善の返答であることを「人間」は知っている。
 人間はヒトを飼育する。ヒトは人間に仕えながら、人間を教育され、獣となり、人間に傷を返礼して人間を不動から解き放つ。)

ベータ版 (beta version)
ソフトウェアの開発途上版のこと。特に、製品版(無償ソフトウェアの場合は正式配布版)の直前段階の評価版として関係者や重要顧客などに配布され、性能や機能、使い勝手などを評価される版を言う。ベータ版は他の開発途上版と比べて重点的にバグ(プログラムの誤り)を解消しており、正式版の機能を一通り備えた完成品に近い状態だが、バグがあったりシステムに影響を与える場合があるため扱いには注意が必要である。また、一定期間が過ぎると使えなくなるベータ版もある。

(口腔と樹々のあいだで宙吊りになったヒトの問い、((わたしは「人間」だろうか?))はやがて自身の伝播すべき内容に興味を失い、百億ほどの波へと拡散して消えていくが、問いそのものが消滅することは決してない。なぜならそれは自らを「悪」となした人間に対する懲罰への唯一の免罪符として機能するから。懲罰はまず火という現象として飛来する。即ち、熱。融けた鉄の白熱。火によって焼き尽くされた皮膚の残滓の下から露出した脊椎だけを見てもそれがヒトのものか人間のものかの判別を下すことは誰においてもむずかしい。雄々しく振動する巨大な家型の機械のなかに放り込まれ、頭蓋を割られ、肛門を裂かれ、顎を砕かれ、煮えたタールに沈められ純白の羽毛を塗されて鉄鋼の剛質な砲身から虚空に向けて発射される人間の精液/卵巣はすでに強制的に抜き取られており、惨劇の依頼主は決して明らかにされることはないが、それがかつて((わたしは「人間」だろうか?))と問いかけていた人間自身であることをじつは誰もが知っている。自涜や自傷ではあまりにも容易に解決されてしまう問い。微笑という、誠意を値切られた回答に飼い慣らされて糊化した問い。かつて世界に対して真剣に問いかけていたあなた自身を収容する檻と化した問い。だからヒトは人間に問いかける、少しだけ洗練されたプロトコルで、「人間」の肉体に退化した爪と歯牙のすべてを奉仕させ、((あなたは「人間」だろうか?))と。『自分自身の鎖を解き放つことができなくとも、他者の鎖を解き放って救うことのできる者は少なくないのだ。』)

プローブ(Probe);「探査針」
遺伝子の存在を検出するために使うDNA(またはRNA)の断片試料。DNAはアデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)がそれぞれ対を形成するが、検出したいDNAに対して対を形成する(ハイブリダイズと言う)DNAをプローブとして用いる。

(自身の肉体に陥入している/突起しているいくつもの器官の複雑さに笑ってしまったことはない? あなたの時折漏らすうめき声とも歌ともつかない声は産声の延長にあるものなの? わたしのオルガスムスとあなたのオルガスムスを交換したら二人とも得をしたような気分になれると思う? 勃起しないときのあなたの血液の熱さはどこに向かって凝集しているの? 膣口が堅く絞られる瞬間の感覚は括約筋の緊張と似たようなものなの? 瞼を閉じて口を開けたときに青白い曲線が漂う暗闇の色が微妙に揺らいだりすることはある? あなたの背中を一度も半個体状で灰褐色の生体組織を通さないで眼球だけで視覚したら、信じられないくらい怖いものに見えると思う? あなたは爬虫類と新生児のどちらにそっくりだと言われたい? 乳房に充溢しているのは肺や肋骨の砕けた破片だとわたしの両手の触覚は伝えるのだけれど、それは誤作動だと思う? あなたが時折ハミングする理由を教えてくれる? 首筋の大動脈をわたしが噛み破ったら、あなたの体のどこが一番最初に冷たくなると思う? わたしたちが初潮、精通を迎えるより以前に交尾できていた猫がまだ何億匹も生きていることについてどう思う? 体の南極はどこにあるか知ってる? 体液が泥土のように喉に絡まるとしたら羊水もまた飲みくだすには骨が折れるだろうね? 重力って、なに? 陸上部の投げ槍を逆手に持ってみぞおち辺りを貫きたい衝動にかられたことはある? 赤く錆びた水に裸の下腹部、太股、ふくらはぎ、踵を浸したまま人間は何分黙っていられるのだろう? そっちにいっていい? ためらいを印象づけるにうってつけの尻尾が尾てい骨から伸びていないことへの不満はある? 初めてのとき、腕の付け根に埋め込まれた肩胛骨の可動域の広さに驚嘆しなかった? あなたの腹部に収められた打楽器の空漠に吸いこまれそうになるのはわたしがまだ幼いから、それとも充分に成熟したから? 月経に至る器官をもってみないとわからないことは幾つあると思う? 眠っているあなたの顔から痩せた四肢まで溶かした赤土で縄文の文様を描きたいと思うのは変態趣味になる? ――――)

アンドロイドの、

(ヒトは過剰なる現実を、人間は過剰なることばを持ち寄り、過少なる現実とことばの織りなす光り輝く自然、絶対的な幸福から離脱するための掛け金となす。――「了解した。わたしは人間を開始する。あなたに賭ける。」「了解した。わたしはヒトに回帰する。あなたに賭ける。」――自身の変形を飛躍の掛け金として相手の変形に賭けること。何物にも保証されず、祝福を受けないその透明な跳躍行為こそがある種の「愛」の機能であると、人々は各々の固有の場所と現実の時間、懲罰から離れた調子において燦然と知るだろう。)

健やかなる発情のために。


●懲罰の調子や暴力の専制が性的衝動に近接するのはサディズム/マゾヒズムと同様の駆動原理が働くのと同時に、両者がともに対象の時間の静止(=連続する変形の完了)という反転された自身の欲望を命ずる点で錯覚を起こしやすいことに由来する。
by warabannshi | 2006-10-15 15:01 | メモ | Comments(0)
領域(ZONE) D 荒川修作+マドリン・ギンズ 『養老天命反転地』―「使用法」より
「あの場所に行けばいちばん健康であると言われているものがいちばん不自由になるんだ。それを明確にしめす場所であってほしい」

極限で似るものの家

●何度か家をでたり入ったりし、その都度違った入口を通ること。
●中に入ってバランスを失うような気がしたら自分の名前を叫んでみること。他の人の名前でもよい。
●自分の家とのはっきりした類似を見つけるようにすること。もしできなければ、この家が自分の双子だと思って歩くこと。
今この家に住んでいるつもりでまたは隣に住んでいるようなつもりで動き回ること。
●思わぬことが起こったら、そこで立ち止まり、20秒ほどかけて(もっと考え尽くすために)よりよい姿勢をとること

知覚の降り立つ場あらゆる出来事識別すること
イメージの降り立つ場:知覚の降り立つ場と場のすき間を充たすところ
建築の降り立つ場:ディメンションや位置を確かにすること

●どんな角度から眺める時も、複数の地平線を使って見るようにすること。
一組の家具は、他の家具との比較の対象として使うこと。
●遠く離れている家同士に、同じ要素を見つけること。最初は明らかな相似を見つけ出し、だんだん異なる相似も見つけ出すようにすること。


楕円形のフィールド

●バランスを失うことを恐れるより、むしろ(感覚を作り直すつもりで)楽しむこと。
●楕円形のフィールドを歩く時、「極限で似るものの家」の光景をできるだけ思い出すことそしてその逆も試すこと
●空を、すり鉢形の地面に引き下ろすようにしてみること。
●5つの日本列島のそれぞれを、自分がどこにいるのか位置付けるために使うこと。
●日本と呼ばれる列島との、見えたり見えなかったりするつながりで、自分がどこにいるのか常に問うこと。
●進む速さに変化をつけること。
フィールドを歩く時に、取らなければならない極端な姿勢を、近くの形と遠くの形の両方に関連付けること。
●不意にバランスを失った時、世界をもう一度組み立てるのにどうしても必要な降り立つ場の数、種類、位置を確かめること。
●しばしば振り向いて後ろを見ること
一度に焦点を合わせて見る場所(知覚の降り立つ場)は、なるべく少なくすること。
●実際に通っている所と同じくらい目につき、興味を引かれる所、あるいは降り立つ場があれば、すぐ、もうひとつの出来事が起こっている所として出来るかぎり見極めること。
距離をつくっている色々な出来事のつながりを確かめるために、「精緻の棟」を利用すること。
●「白昼の混乱地帯」の中では常に、ひとであるより肉体であるよう努めること。
●何かを決めるために、あるいは以前決めたよりもより繊細に、またはより大胆に(あるいはその両方に)なるために、「もののあわれ変容器」を使うこと。
●「地霊」の中では、地図上の約束を忘れること。
●「宿命の家」や「降り立つ場の群れ」と呼ばれている廃墟では、まるで異星人であるかのようにさまようこと。
●「切り閉じの間」を通る時は、夢遊病者のように両腕を前へ突き出し、ゆっくりと歩くこと。
●「陥入膜の径」を通り抜けたり回ったりする時は、目を閉じること
●「運動路」のや外では動作を繰り返し、そのうちの1度はゆっくり行うこと。
●「想像のへそ」の中や外では、後ろ向きに歩くこと。
by warabannshi | 2006-10-10 23:43 | Comments(0)
探索記録22 「健やかなる発情のために siege-アルファ版」
siege [名][U][C]
1 (城塞(じょうさい)などの)包囲攻撃;包囲[攻囲]期間
2 (つきまとう)病気, 災厄, 悩み;((米))(災厄・悩みの)長く苦しい期間
3 [U](執ような)努力.
 lay siege to ...
 (1)…を包囲する.
 (2)…を執拗に説得する, くどく, せがむ.

(三日間つづいた雨と風が過ぎ去ったあとの巨大な半球状の鏡面のように広がる青い空の硬質の下で白くあふれている太陽の光を反射させ、乾いた焦茶色の地表の上に整然と並んでしんと静まりかえっている冷たい灰汁色の液体がそのまま氷点に至って凝固したかのような墓石の一つの前でしばし立ち尽くして後、ふと両の掌を胸の前で合わせたとき、右手と左手、馬手と弓手の狭間で瞬時に波立つ触れると触れられているの二重の同心円状のさざ波の交錯に性的とも言える奇妙な昂奮を憶えるのは果たして倒錯なのか自慰なのか、あるいは完全な幸福なのか、いずれの名が無窮に奉仕するその行為の上に附されるにせよ、なにも刻まれていない御影石のモノリスを濡らしているのは唾液でも誘い水でもなく足下の地面の暗闇からイドを経て汲み上げられた井戸水の冷ややかさであり、それゆえに合掌する人間は錆と微熱を帯びた銅貨によく似たホルモンの匂いを限りなく粘性がゼロに近い空気の渦から嗅ぎとることも出来ず、手桶にもたれている底の抜けかけた杓子から水滴が一吹きの風をきっかけに裸足に滴り落ちるまで、無音のまま斜めに射しこんでくる陽光の眩しさを進化の末に獲得した不定形な緑の葉の連続と密集で形づくられるミヤマザクラの樹の影で祈りの諸段階の導入に頑是なくも留まりつづけることとなる。それは樹々ほどに繁茂することのできぬ自らの形象の貧しさゆえか、肉体の翳りの深奥へと近付くことへの躊躇ゆえか。)

アルファ版 (alpha version)
ソフトウェアやハードウエアの開発初期版のこと。特に、製品版(無償ソフトウェアの場合は正式配布版)のごく開発初期のものをテスト目的で配布し、性能や機能、使い勝手に対する要望を受け入れるための版と言える。アルファ版でソフトウエアの使用感などをヒアリングし、その結果を元に仕様を固めたベータ版を配布、更なるバグフィックスを行なうといった手順が一般的である。アルファ版は一般的に動作確認を行なう環境が不十分であるなどの理由から未知のバグが存在していることが多く、しかもシステムに影響を与える致命的なエラーが発生する場合もあるため取り扱いには注意が必要である。

(祈りつづけるあなたが此処に立つときにあなたの無防備な背中を見ることが許されていることを、眼球という直径約24mmの球状構造物に感謝する。愛情と感情移入ではなく、観察と組成検証の方があなたの肉体を構成する、恐らく一千を決して下らない器官のときには誤信を起こす緻密な複合に対してそれに相応しい畏敬を払うことになるのだろう。目をつむったまま微笑みをつくるあなたの頬に触れるのがひたすらに好きだ。それは指先を伸ばし、天敵や同胞を威嚇するために発達したという表情筋の温かい輪郭を指の腹や側面で柔らかく、くりかえしなぞるたびに、ホモ・サピエンス・リンネの存在を人間ではなく肉体のままで肯定する調子が内臓の底から上昇しながら湧きだすからで、それは意識から遠い右手に面状に広がった指と掌の皮膚感覚が神話よりも古い時代にはヒトにも許されていたという本能行動ほど鈍磨していないことの証明としても機能する。人間は肌に覆われているのではなく、肌によってヒトの形あるいは心の形を保っていることを忘れがちだ。)

【性的不能(Impotenz)】

(明かり取り用の小さな窓から満月の光の射しこむ仄暗い闇の底であなたの躰の観察を一時停止してモノと化し、鬱血した性器と沸き立った周辺へのファナティックな刺激をはじめることは容易い、ふと我に返って一本調子な姿の滑稽さに吹きだしてしまわないならば、白昼の太陽の下でも行為をせがむことができるだろうほどその享楽は享楽の意味そのものを忘却させ、傷と傷を結び合わせるための志向性を発揮する。)

人間の、

(眠れないときに眠ったふりをしながらあなたは隣に寝ている人間の右手で遊ぶ。機械を操作するように右手を頭をこすりつけたり口に含んだりするときにすでに洗い流された知覚の無惨な残骸が自由神経終末から微かに押し寄せつづける活動電位のさざ波に触覚と圧覚と温覚を通じて相手が反応することを感謝し、讃美する。しかし、いずれにせよ人間は、肉体の水深の高みにおいて惚けつづけるには脆弱すぎる。欠如を押しつけ合う物語は駆動を始めそして動物が終わり、人間が始まる。)

健やかなる発情のために。
by warabannshi | 2006-10-07 21:46 | メモ | Comments(0)



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