<   2007年 01月 ( 1 )   > この月の画像一覧
●欲望という社会労働を適切に行うこと
 妹をバラバラにして自室のクローゼットにしまったり、夫をバラバラにして腐葉土を詰めた衣装ケースに詰めこんだり、紅白歌合戦で裸になったOZUMAが、不良高校生が職員室まで呼び出されたみたいにNHKまで出向いて謝罪したり、不二家のペコちゃんプリンがすっぱい牛乳で作られていたり、夕方四時のスーパーの店頭から納豆パックがなくなるほど納豆ブームだったり、その納豆ブームの仕掛け役である発掘!あるある大辞典がじつはブラフをかましていたり、……という信じられないくらいどうでもいいニュースがつづいている。
 書き違いではない。書き落としたものがあるかもしれないけれど、新年早々、紙面を賑わせてきた前記のニュースはみんな、ものすごく、果てしなくどうでもいいニュースだった。どうでもいい、という言葉が不適切であるなら、こう言い換えてもいい。絶望的につまらないニュースばかりが、新年からつづいている。そのせいで、めずらしく怒りすら感じている。……それとも、もしかしたら刺激的なのだろうか、たとえば、人間が人間をバラバラにしたりされたりするという事件は。けれど、医・歯・薬・獣医学部の学生たちは解剖演習をしなければ卒業もできないわけで、(獣医学部は人間を解剖するわけではないけれど)、後者のほうがはるかに解体の度合いは高い。それに、ほんの千年くらい前には都の大路では行き倒れの死骸をイヌやカラスがばらばらにしていたのだ。たいしたことではない。たいしたことではないのに、それが新宿や渋谷の高級住宅地の電動ロックされたある部屋で行われると、ずいぶんと騒がれる。これは騒ぐようなことなのだろうか。
 べつに、うちはヒューマニズムを逆撫でしたいわけではない。ただ、あまりにも煩雑に情報が処理されていないだろうか、ということだ。
 妹の四肢を関節にそって切断した歯学部志望の彼にとっての人間の肉体はおそらくパーツの精密な集合体で、これは患者の脳死を確認した後にためらいなく、効率的に臓器移植のための術式を始められるようセッティングされた現代医学の手術室が示唆する生死観と連続していることに、なぜ誰も気がつかないのだろうか。あるいは、気がついていても言わないだけなのだろうか。「あなたには夢がない」という一言への激昂を生成させた思考ルーティンは、あまりに強すぎて目眩を起こすほどの享楽が待っているはずの未来を指さし、未来からの視点で顧客を叱咤した90年代のJ-POPの歌詞の臨界なのではないか。家族などとうの昔に、それこそ解体してしまっており、私たちは巧妙に調整された孤独のなかで先取りした相手と触れあう事なく低湿度のコミュニケーションを行っているだけではないか。――たとえこれらの言説が多少、妥当性を持っていたとしてもマジョリティとして凝集することは決してない。タワーレコードで叩き売りされた啓蒙主義を声高にののしることは、この国の経済的存在を否定する反実仮想と等しいことを、ある一定以上の認識能力を持った一群は知っているから。
 けれど、私たちが人間の活用する(活用することができる)システムの根本的欠陥を必然性によって了解し、ストイックに口をつぐむとき、報道されるニュースはもっとも愚かな顧客のための消耗品となる。ほとんど脊髄反射だけでなされる善/悪の二分、そこにどのような刺激があるだろうか。母-子的な想像的同化と、攻撃性、この二つの感情しか持ち得ない人間の姿には、もっとも低級なアンドロイドですら吹きだすにちがいない。
 死体をばらばらにする個体が、彼の狂気を非難し、保証することで自らの正気への疑問から目を背ける個体が、その彼らをほんの数舜、微笑しつつ傍観したあとで各々の事務作業にもどっていく個体が、それぞれの場所でそれぞれの退屈をもてあます。
 私たちはまともに欲望する気があるのだろうか。
by warabannshi | 2007-01-21 20:03 | Comments(0)



夢日記、読書メモ、レジュメなどの保管場所。
by warabannshi
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
twitter
カテゴリ
全体
翻訳(英→日)
論文・レジュメ
塩谷賢発言集
夢日記
メモ
その他
検索
以前の記事
2017年 04月
2017年 03月
2017年 01月
2016年 11月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 03月
2007年 01月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2004年 11月
2004年 08月
2001年 12月
記事ランキング