<   2010年 07月 ( 7 )   > この月の画像一覧
第391夜「ディズニー・ソサエティ」
 ディズニー社が全面協力しているというゲイテッド・コミュニティ、「ディズニー・ソサエティ」を見物に行く。聖蹟桜ヶ丘駅からゆりかもめ線を乗り継いでいくと、青空の向こうに高くそびえたつ小豆色の城壁が見える。彼女Fは一眼レフカメラを膝の上にのせている。城内の方々を撮影する気でいるのだ。あわよくば実在するというミッキーマウスを撮るつもりらしい。
 ソサエティの門番は、やはり奇妙な三色刷りの全身タイツの男で、サスマタを持っている。
 私はなんなく通ることができたが、彼女Fは門番に止められる。
「もう門限の十六時を過ぎておりますので」
「じゃあ、彼はなんで入れたんですか?」
「もう門限の十六時を過ぎておりますので」
 まごまごしていると私まで門前払いを食わされそうだったので、いそいで城下町のなかに駆け込む。
 まだ明るい城下町には、しかし人っ子ひとりいない。シルク屋やティアラ屋などが軒を連ねているが、皆、ひっそりと閉まっている。クリーミーな色合いの家々が、心なしかくすんで見える。だんだんと眠くなる。立ち止まると、瞼が上がらない様な重苦しい憂麓に陥る。呼吸するだけで皮下脂肪が貯まっていきそうである。
 ひときわ大きな建物があり、尋常じゃない量のフリルやリボンがつけた淑女たちが中に入っていくので、とりあえず入り込む。つまみだされたら、それはそれで良い。
「忘れ物?」
 わりとまともな格好の女の子に呼び止められる。スタッフらしい。
「携帯電話を落としちゃったみたいで」と嘘をつく。
「笑々で打ち上げだから、早くおいでよ」
 彼女は私を誰と間違えているのだろう。そう思いながら、高級カラオケ店のような壁紙の広い廊下を奥へと進む。
 五メートルに一つの割合で女子トイレがある。そのうちの三つの一つくらいの比で男子トイレがセットになっている。ディズニー・ソサエティに来た記念に縄張りを主張しておこうと思い、そのうちの一つに入る。
 個室のドアを開けると、壁にハンガーにかけられた濃紺のスーツがある。使用中かな? そう思い、さらに奥にあるドアを少し開けると、魚か海草の腐ったようなものすごい匂いが漏れてくる。慌てて閉めても、肺に入った陰気な空気が“ディズニー・ソサエティの裏側”を警告する。浅ましいことだ、と思い、個室から出ようと思ったとき、私の耳はウサギのように伸び、私の両脚が腰まで飴のように溶けて流れていることに気がつく。
by warabannshi | 2010-07-28 10:47 | 夢日記 | Comments(0)
第390夜「始祖鳥」
 飛行場で始祖鳥が来るのを待っている。飛行場といっても魂が抜けるほどの広っぱには何の設備もなく、草むらの中にただ一本の滑走路が走っているだけである。
「始祖鳥、見たことないの?」
 一緒に待っている名前の知らない友人が言う。
「近くでは、まだ。
 ダチョウは見たことあるんですけどね」
「男の始祖鳥は弱いんだよ。これから見られるのも、女の始祖鳥かもしれない」
「豆とかあげてもいいもんですかね」
「水とか冷茶のほうが、喜ぶんじゃない?」
 茫茫と生いしげる、草の葉先や穂の向うに、屋根の低い私の家がある。住んでいる近くで始祖鳥が離着陸しているとはついぞ知らなかった。名前の知らない友人に誘われなければ生きていて損をするところだった。
 わくわくしていると足元で何かが慌ただしく動く。
 紅色砂岩の巨大なミミズが、草むらを裂くようにして這い進んでいく。
by warabannshi | 2010-07-25 10:05 | 夢日記 | Comments(0)
第389夜「女医」
 冗談のように胸の大きい女医と、葉桜の見える教室で面談をしている。ざらざらと枝葉が窓ガラスをひっかき、昼下がりの風の強さを告げる。
 私が私の症状について話すと、女医は、思い出せるだけの18禁ゲームのタイトルを述べよ、と言う。必死で思い出す。
「『君の望む永遠』とか『***』とか、あと『***』とか……。(架空のタイトル、すべて忘却) 『遺伝子』ってありましたよね?」
「NHKね」
 女医はカルテに何かを書き込み、右の乳房に手をあてる。薄い白衣を貫通して、とぷんと乳房のなかにその手が沈む。しばらくして、女医は彼女の胸から一本のビデオテープを引き出す。
【磨かざる珠と思ひて珠にあらざるを磨く】。
 そういうタイトルである。受け取りながら、ビデオテープとは古風だな、と思う。
「なんですか、これは」
「あなたにとっての鹹水です。塩に塩味がなくなったときに、その塩に塩味をつけるための」
by warabannshi | 2010-07-22 11:12 | 夢日記 | Comments(0)
第388夜「チキェルキ・カインカー」
 『ドッグヴィル』のように、区画だけが黒いゴム床に白ペンキで書かれた世界。家具はぽつぽつと立っている。しかし、壁は存在しない。
 そろそろ「最終回」が近いことがわかる。あと「4回」くらいだろう。「最終回」は、この「白ペンキの線と無数の家具の世界」そのものの争奪戦になるだろう。しかし、いったい何の「最終回」なのか? 4回とは?

 「部室」の、ベンチプレスの台で眠っている私。気がつくと、体中の細胞の一つ一つに「テレビ君」と落書きをされている。友人Hのいたずらである。手のこんだいたずらに感動さえする。
 焼死体のように手足を折り曲げて硬直していると、向こうで歓声があがる。
 どこかから打ち込まれた砲弾を、大男がチキェルキ・カインカーしているのである。つまり地面に垂直に立てられたU字の蹄鉄のような巨大な鉄製のサーキットに、砲弾の力学的エネルギーを逃がす作業をしているのである。
 大男は巧みにサーキットの角度を調整し、うなりをあげる砲弾を振子のようになだめる。
 私は大勢とともに感心してチキェルキ・カインカーを眺めていた。しかし、六十兆の細胞に書かれた落書きが喉の乾きをもたらしたので、去った。
by warabannshi | 2010-07-16 15:10 | 夢日記 | Comments(0)
第387夜「草」
 顔面の毛穴という毛穴から、青々とした糸のような芽が無数に生えてくる。友人Nと小学校の片隅に鶏小屋を作っている最中なので、わずらわしくて堪らない。毟っても毟ってもちっとも痛くないかわりにすいすいと後が生えてくる。
「放っておいたら? べクシンスキーみたいで良いじゃない」
 嫌だよ。しかし、いよいよ顔がぬるぬるしてくる。
 鶏小屋もほぼ完成し、あとは扉に鍵をつけるだけとなる。だが扉にはいつの間にか南京錠がかかってしまっている。
「仕方ない。職員室から合鍵を盗んでこよう」
 私たちは誰もいない職員室に忍び込み、南京錠の合鍵を探す。引き出しを開けると、賞味期限が二週間ほど前に切れて、ゲル状になったコーヒーゼリーがあったりして、それを捨てる。夏休みの前にはすべての「隠しお菓子」を廃棄すべきだと思う。
 顔の草は、快調に屈光性を示し、上へ上へと脆弱な先端をのばしていく。
【小用便器のなかでウナギになれれば、この気鬱な草どもも一掃されるだろう】
 できそこないの杉玉のような顔でそう考える。
by warabannshi | 2010-07-13 10:32 | 夢日記 | Comments(0)
第386夜「声帯」
極薄の鏡が三千も四千も、竜巻状に吹き荒れるなかで、蛹化している。鏡の一枚一枚はすべて同じサイズの直方体で、200*150mmほど。ipadの液晶画面ほど。ここは声帯である。誰の? あるいは、何の?
by warabannshi | 2010-07-06 20:32 | 夢日記 | Comments(0)
第385夜「文学フリマ」
 三日三晩に渡って開かれた大規模な文学フリマがようやく終わる。完全に疲れ果て、かつ眠い感じで、知り合った人たち六、七人と大戸屋で食卓を囲む。初めて知り合ったのか、小学生のころから知っている顔なのか、頭が霞んでそれすらも判別できない。しかし、いらいらはしていない。身内は熱く、酒に酔っ払ったときのようないい気分でもある。
「いや、正直なところ、文フリ、やっと終わってくれたか、という感想しか浮かばないですよ」
 前菜として出された、山盛りのニンジン炒めを食べながら私は言う。
 みんなもむぐむぐと前菜を食べながら、黙ってうなずく。この三日間で売れていった彼ら自身の本のこと、それらを作るまでの過程を思い出しているのだろう、と私は思う。
「太田君はペンギンが好きなの?」
 そう早稲田の友人Sが聞いてくる。あれ、彼女も文フリに参加していたのか、思いながら、
「見ているのは好きですけど、いま目の前で揚げ物として出されたら遠慮したいです」
「でも、大戸屋の揚げ物はなんでもうまいよね」
「かりっとしていて、揚げ方が工夫されているよね」
 よく見ると、みんな示し合わせたかのように揚げ物を食べている。よくこんなときに油物が食べられると思う。私の前には、ボイルされた大ぶり・極太のソーセージが皿にのっている。しかし、三本とも、痙攣するように、身を反らして動いている。
「フォークで刺して一端を固定して、皮をむくんだよ。ギリシア式だよ」
 隣に座っていた博学のMさんが教えてくれる。食べ方はわかったが、なんとなく皿から逃げ出そうとしているソーセージを見ていると、ぐったりと体中から元気がなくなっていき、咽喉の奥がげえげえいいそうになったので、「ちょっとごめん、活動限界です」と言い、テーブルに突っ伏す。

 起きると、すでにテーブルには私と彼女Fと、深沢という初めて会う男が残っている。
 すでに皿は片付けられ(あのソーセージたちの皿も)、会計も済んだという。
「ちょっとペンギンを見に行きましょうか」
 そう深沢は言い、先に店を出る。店の外は緑色の水をたたえた運河になっていて、すでにゴンドラが寄せてある。
 彼女Fは帰りたそうだったが、私は眠って元気をとりもどしていたので、深沢に同行することを決める。
 深沢が長い櫂を操って運河となった通りを抜けていくと、やがて横幅が数百メートルもある巨大な本棚のような施設が、左右に何十も並んで天高くそそり立っているのが見えはじめる。あれらはペンギンの営巣施設である、と直観する。ステンレス製と思しき、圧倒的な銀色の筐体は、さらに無数の小さな箱に仕切られており、そのあいだをたしかに幾億羽ものペンギンたちが群をなして歩いている。
 さらに近づいていくと、異様な臭気を感じる。ペンギンの糞である。よく見ると、卵がいくつも割れて、中身が干からびている。糞はまだ乾ききっていないので蒸らしたような臭いが立ち込めている。空は綺麗に晴れているのに、巨大な本棚施設が、お互いに日陰をつくって変にじめじめした空気になっているのだ。運河の水面にも、ペンギンの羽毛、エサの食べ残し、よくわからないぬらぬらした塊が浮いている。臭くて息が詰まりそうである。
「もう良いでしょう」私はたまりかねて深沢に言う。
「そうですか? これらはすべて、我が深沢家のものなのですよ」
 深沢は櫂を操りながら自慢げに言う。

「とりあえず、あの臭いのなかで私はヘン顔を二十個くらい獲得したよ」
 帰りの電車のなかで、ひとしきりペンギン営巣施設の文句を挙げ連ねたあと、彼女Fは言った。
「へえ、やってみせてよ」
 Fは唇をとじ、鼻の下にあたる部分の裏側に息をいれて膨らませた。
by warabannshi | 2010-07-05 10:32 | 夢日記 | Comments(0)



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