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第433夜「クラゲ」
 左顎関節がクラゲになる奇病にかかっている。唾液かクラゲの搾り汁かわからないが、無闇に水が口腔に溜まる。ローマの「真実の口」になったつもりでだらだら口端から水を垂らしたり、唇をすぼめてぴゅるぴゅる吹いて遊んでいる。雀が数羽、飛んでくる。水を飲むかと思ったのだが、飲みはしなかった。
by warabannshi | 2010-11-27 13:14 | 夢日記 | Comments(0)
【告知】12/5(日)「第十一回文学フリマ」の詳細【O-06】
 十日後の日曜日、開催される「第十一回文学フリマ」に笑半紙はブースを出します。
日程 : 2010/12/5(日)11:00開場~17:00終了
場所 : 大田区産業プラザPiO 大展示ホール・小展示ホール
アクセス : 京浜急行本線「京急蒲田駅」徒歩3分

 当ブログの出店ブースはO-06です。

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 販売するものは、以下の通りとなります。



《 新 刊 情 報 》

◆文庫本『上の空』太田和彦 ???ページ ¥300 初版 50部
 「あなたはなぜ集中することができないのか?」 好きなはずの音楽を聴いていたり、お気楽な漫画を読んでいながら、なにをやっているのかわからなくなることはないか? よく直前のことが思い出せなくなりはしないか? 「人の話を聴きなさい!」とよく叱られないか? ――そんなとき、あなたは決して集中していないわけではない。過剰に集中しているために上の空になっているだけなのだ。ある種のconcentrationについての掌編集。



◆CD『犬芝居〈顔見世〉』太田和彦+藤枝侑夏 ¥150 初版 15部
 販売延期。申し訳ありません。



《 既 刊 》

■文庫本『笑半紙』太田和彦 76ページ ¥400 残り4部 + 20部
 カテゴリ「こんな夢を見た」より。収録作品はすべてブログにアップされている記事をもとにしています。
 夢日記のテキスト量は、ブログ掲載時のかるく三割り増しになっております。複数のテキストを一つに編集したり、原型をとどめないほど念入りに推敲しました。
 <夢日記>という人をくった趣向の記録文は、古くは鎌倉時代の明恵上人から、明治以降は夏目漱石、内田百閒、黒澤明、島尾敏雄、細野晴臣、山本直樹という偉大な先達たちによって書き記しるされてきました。どれもこれも最高に面白いのでお勧めです。「素寒貧でも楽しめる、そして一生退屈しない」夢という現象の報告書。

アニメルカ製作委員会【エ-01】の最新号で対談を載せている村上裕一さんからレヴューをいただきました。ありがとうございます!
夢は、人間に残された最後のフロンティアである。しかしそれは、我々の現実から薄紙一枚のみにて隔てられた――というよりもまさにその薄紙の表裏として――存在している。だから誰もが夢について語る。夢と無関係な人間はいない。にも関わらず、夢は我々にとって「遠い現実」である。ジャック=アラン・ミレールが言うように「天皇ですら自分の夢を支配することはできない」。それゆえにか、夢は常に古今東西の知識人を魅了し続けてきた。フロイトの『夢判断』、ユングの『夢分析』、夏目漱石の『夢十夜』など、夢に関する探求は枚挙にいとまがない。本書『笑半紙』は、さしずめそんな「夢探求」の最新形である。とはいえ何か目新しい技術があるわけではない。あるのは、誰しもが見ているはずの夢に対する徹底的な執着である。太田和彦は深く静かに下降する。それこそが非凡な作業ゆえ、本書は誰にとっても新しく、そして、誰にとっても懐かしい。

西瓜鯨油社【R-10】の牟礼鯨さんからレヴューをいただきました。ありがとうございます!



■B5判「其処に意味をお与えにならなかったので」太田和彦 20ページ ¥200 残り17部
 カテゴリ「犬の生活」より。収録作品はすべてブログにアップされている記事をもとにしています。
 ネット上で小説を書き始めてから、2010年で10年目になりまして、そのあいだに随分文体も変わったのですが、ちょうど当ブログをはじめた2005年前後に書いた作品を選び、編集しました。浅葱ヒタキさんによる装丁とデザインで、愛嬌ある仕様になっています。



■折りたたみB5判チラシ「藁半紙による笑半紙 三号」太田和彦 無料
by warabannshi | 2010-11-26 02:02 | その他 | Comments(2)
第432夜「遺稿」
 床屋で髪を切ってもらいながら、べらべらした週刊誌を読む。p.2から全体の1/3ほどまで、有名なヴィジュアル系ロックバンドの自殺したボーカルの遺稿が載っている。十数行にわたって一行一文の独白が続いたあと、それらの独白を裁定するような内省がカッコのなかに三百字ほどで書かれる、という形式で遺稿は統一されている。
 これは彼らの詩なのだろうか? それとも、まったく関係のないボーカルの心象の整理のためのメモなのだろうか?
「こういうのって紙一重ですよね」
「そうですねえ」
「種田山頭火の遺稿とかも、カプセルホテルとかにぽろんとあったらこれから何かを完成させるためのメモ書きにしか見えないでしょう」
「はいはい」
 老人は、さっきからずっと私の頭のてっぺんばかり刈っている。トンスラを注文した覚えはない。受け答えからして呆けているのか、大して気に止めているのかわからない。とりあえず遺稿のなかの気に入ったものを暗記することに努める。しかし、頭頂部でハサミの音が響いているために気が散る。急に日が暮れて、外が暗く、赤くなる。
by warabannshi | 2010-11-24 09:32 | 夢日記 | Comments(0)
第431夜「プレゼンテーション」
 二人の名前の知らない男性編集者と、一人の女性化学者に向けて、新宿でランチをとりながら、プレゼンテーションをしている。私は一人、テーブルにたくさんの紙媒体の資料を広げて営業をしている。熱心になにを営業しているかはわからない。三人は私の熱弁をメモもとらずに聞いている。
 ひどく蒸し暑い店である。四方の壁はガラス張りであり、涼やかなのだが、密閉されているので、私の熱が逃げていかないのである。息苦しくて堪らない。上着を脱ぎ、ネクタイをゆるめたいが、そういうことをするとほかの三人の心証を害するようで、我慢する。新宿大ガードをくぐっている四車線道路は、完全に水没している。ひび割れそうなほどに澄んだ水のなかを骨の硬そうな小魚たちが群で泳いでいる。
「雑誌において含水率は非常に重要です。例えば、この折れ線グラフを見てください。少年ジャンプの紙面においては、各漫画のバトルシーンの含水率の総計が一定なんですよ。これは絶対に編集の人と漫画家さんが決めているとしか思えません」
「え、じゃあ、『ワンピース』が休載したときは、ほかの作品が水浸しになるってこと?」
「いいえ、水の量は絶対値ではなく、あくまでも割合です」
「太田君は「バトルシーン」って言ったとき何を考えている?」
「つまり濡れ場を含むか、ってことですか? それはもちろん――」
「換喩としてね。あと、体液の多そうなキャラクターはどうなのかな、とか。おっぱいのアップが多い状況はどうなんだろうとか。
 含水率はしぼったほうがいいものなの?」
 喉がからからであり、議論が本題に達しかけたので、もういいだろうと思い、私はネクタイをほどく。その途端、いままで黙っていたアラジンのような顔つきの小柄な編集者がひどく怒り出す。
「君はいま、ネクタイをほどいてもいいと思ったわけか!?」
「声がでにくかったので……」
「ははー、おまえはここをチベットだとでも思っているのか。可笑しいなあ。人を見下すのも大概にしろ!」
 憤慨しつづける編集者は、壊れたエスプレッソ・マシンのように黒い豆殻のような滓を口から飛び散らせる。それらの滓を顔やワイシャツの胸元にあびながら、薄氷を踏むかのようなプレゼンテーションがこんな終わり方をむかえたことの口惜しさを噛む。
by warabannshi | 2010-11-22 18:23 | 夢日記 | Comments(2)
【感想】コミティア94拡大specialを終えて。
 コミティア94拡大specialに参加の皆様、おつかれさまでした。『笑半紙』、『そこ意味』それぞれ4冊ずつの売上となりました。前回は2冊ずつだったので、二倍です。なんという慎ましき前進。お買い上げいただいた方、ブースを訪れてくださった方、本当にありがとうございました。笑半紙は、2011/2/13(日)に予定されているコミティア95はお休みし、次々回のコミティア96に参加する予定です。

 以下、購入した物品紹介。


[創作系・文芸]

牟礼鯨『奇貨おくべからず』500円
 日本各地の同人誌即売会で活躍している西瓜鯨油社の新刊。現代版、紫上育成計画。23歳の男性と9歳の女の子との共同生活は、偏屈と偏見と健気さと微笑ましさとに彩られている。幼女の愛らしさは、それがエロティックな対象であるから発動するのではない。そうではなく、育成という営みこそが本質的にエロティックなふるまいなのだということを、この百ページに満たない本は気づかせてくれる。
 彼の札幌・塾講師時代の「朝起きたら室温がマイナス2℃」、「そっちはいま何度?」「零度」「へえ、意外と北海道は暖かいんだね」「あ、室温だった」という苛酷な環境で綴られただけあって、ディティールの生々しさも良い。『奇貨おくべからず』を含めた、西瓜鯨油社のすべての作品(『掌編集』、『複雑系』、『コルキータ』)を推薦したいところであるが、ほかの作品と同様、すでに品切れとのこと。残念。


鳥久保咲人『或る飛び跳ねた熱帯魚の場合』300円
 高校二年の現代文の問題演習で吉本ばななの『TUGUMI』の一節をやったときに「ボクっ娘」というジャンルがあることを習った。「ボクっ娘」は知性的であるが、心が屈折していて、大人になりたがらない。というか大人は〈敵〉である。そんなジュニア小説の伝統を『或る飛び跳ねた熱帯魚の場合』は受け継いでいる。そして、伝統的にそうであるように、子供は不安をわだかまらせつつ、子供を終える。高校生の女の子が、もう一人の高校生の女の子に告白するまでの百二十四頁。


[創作系・漫画]

えのころ工房『えのころ漫画館』〈3〉1000円〈4〉800円
 この冒険漫画の登場人物たち(全員、猫)は、しょっちゅう何かに驚く。そして大工道具を引っ張り出して手元の材料から何かを作っている。それは飛行機だったり迷路だったり潜水艦だったりする。それらは失敗と試行錯誤を繰り返して、いよいよ物語の終わりには完成するのだが、結果はともあれ、それまでの頁で“上手くいまどうか分かんないけど、なんだかわくわくする”という気分がゆっくりと醸成されていくのが堪らなく良い。そしてどんなときでも一緒にやってくれる仲間がいるという無窮の安心感が、この気分を下支えしている。
 内容もさることながら、装丁と構成にかける丁寧さには脱帽するしかない。おまけの袋とじイラストロジックも含めて、本棚に置くだけで居心地のよさを提供してくれる。既刊8巻。お勧め。


亀屋玄武堂 ポストカード 100円
 雑誌Fellows!で連載中の『イン・ワンダーランド』の作者・薮内貴広氏のサークルだということに帰宅してから気づきました。今回のコミティアで一目惚れした絵柄。来年の五月のコミティアでは必ず漫画『蛇足氏を探して』を買おう。


[批評系]

サークルファイブエム「HYPERINFLATION」 100円
 各々の紹介者のFavoriteが圧縮された漫画レヴュー・ペーパー。このボリュームで100円は廉価。紹介されている作品群のなかの『とある科学の超電磁砲』と『へうげもの』しかわからなかった。が、それをもって2010年の日本において私の漫画リテラシーが高いほうではないとは決して言えない。マニアック。


●サークルファイブエム「5M vol.04」(特集:萌え4コマ的世界観が21世紀を支配する)1000円
 コンテンツの詳細は http://5m-web.com/?p=106 へ。
 随分前にある方から勧められた漫画が『スケッチブック』だったか『ひだまりスケッチ』だったかどうしても思い出せない。でもこの際どちらも読んでみようと思わされる、そういうレヴューが載っている。
 以前、「全自動萌え4コマ製造サイト」なるものがあるというニュースを読んだことがある。バラしたコマ(それは一瞬の風景だけのこともあるし、一つのエピソードの叙述であることもある)を特定の規則で並べると、なんとなく「萌え4コマ」っぽくなるという。真偽のほどは定かではないが、重要なのは、大小長短どのレベルでもかまわないから「コマ」という単位をつなぎ合わせることが人間になにかを感知させているということで、それは人間が普段、風景やエピソードの記憶を細かく厳密なかたちで保存しているのではなく、まさに「コマ」という単位にまとめて持ち歩いていることに起因しているように思える。萌え4コマは、だから私たちの記憶様式の縮図なのかもしれない。


反アニメ批評『アニメルカ vol.1』1000円
 コンテンツの詳細は http://animerca.blog117.fc2.com/blog-entry-10.htmlへ。
 畏友・村上裕一の『WHITE ALBUM』論が掲載されている。村上裕一の文章は癖になる。それはデヴィッド・リンチが癖になるのと同じように、公開されているものは出来・不出来の下馬評を問わず、全部読みたくなるのである。それは私たちが惹きつけられているのが内容ではなく、作り手の思考の呼吸そのものだからだ。内田百閒曰く「噺家はオチで笑わせるうちは下である」と。至言である。そしてたいていの中毒症状がそうであるように、読めば読むほど、乾きは止まらなくなるのだ。彼の処女作の出版が待たれる。
 そういえば初夏に勤務先の高校で行った「エヴァ/ヱヴァ特別授業」でゲスト出演してもらった折も『WHITE ALBUM』を熱く推薦されたがまだ未視聴である。『WHITE ALBUM』一気見の日を作ろうと思う。
by warabannshi | 2010-11-17 12:05 | メモ | Comments(2)
第430夜「三木成夫」
 いままさに高校で授業をしようとしているところなのだが、配布すべきプリントを印刷していない。さらに、いったい何を話せば良いのかもわからない。腕時計を見ると、すでにチャイムが鳴ってから5分が経過している。チャイムがなってからの5分間のあいだに私がいったい何をしていたのかもわからない。支離滅裂な活字の夢からさめたばかりのようにぼうっとしている。
 生徒らも、教師の不甲斐なさにあきれて、騒ぎ出せば良いのに、水を打ったように静まり返り、こちらの挙動に注目している。最前列の生徒の視線が私に集中し、いよいよ私に何を話せば良いのかをわからなくさせる。咽喉がつまる。不安がつのる。酢酸の匂いにはっとなる。そうだ! この部屋は生物実験室なのだ。なにかの実験をするつもりだったのだろう。だが、実験材料と思しきものはビーカー一つ、カエル一匹も、黒塗りのテーブルの上に乗っていない。ただ縮緬雑魚のような小人らがかさかさと列を作っているのみである。私は私の失策のすべてをこの小人らに押し付けたいと思う。
 突然、ふっと電気が消える。
 暗幕が下りているので、実験室はまったくの闇に満たされる。
「君たちは、三木成夫を知っているか?」
 私の口は、勝手にしゃべりはじめる。
「芸大で、たしか芸術解剖学という講義を受け持たれていた先生で、代表作は『胎児の世界』。学期の最後の授業が終わると、誰からともなく学生のあいだからスタンディング・オーベーションがおこったという伝説の解剖学者だ」
 生徒らはまったく反応しない。化石にでもなったかのようにこちらを見詰めている。
「その三木さんの講義にこんなのがある。講義室を真っ暗にして、九〇分間、ひたすら自分の心音に集中する、というものだ。それをやってみようと思う。脈拍を数える必要はない。心臓が衰弱していると思っている人も、目を瞑れば、脈が骨を打つのがはっきりと見える。私語は厳禁。チャイムが鳴るまでやろう。では、はじめ」
 私の口の機転で、私はなんとか実験室の外に逃げ出すことに成功する。
 停電と、私のとるにたらない知識がかろうじて教師としての体面を保ったこと、それが可笑しくて死にそうである。ふと実験室のガラス窓を見ると、私の顔は毒を飲んだイルカのように変形している。猛烈に白衣の下の皮膚が痒くなる。
by warabannshi | 2010-11-17 09:21 | 夢日記 | Comments(0)
第429夜「宇宙人」
 リゾート地の巨大な室内プールで平泳ぎのフォームを確かめていると、轟音とともに、天井から先ほどまで天井だったコンリート片が落ちてくる。私の目の前にも一抱えもある鉄筋をはみ出させたやつが落ちてくる。いたるところで悲鳴があがる。
「プールから上がってください!」
 いくつかの外国語に混じって、日本語が聞こえる。こういうときにこそ慌ててはならない。というか、水中で慌てても損をするばかりだ。私は悠然と平泳ぎの続きをする。
「宇宙人みたいですよ」
 プールサイドでマイク付きイヤホンをもって私を待っていた彼女Fが言う。
「ほんとに?」
「エメラルドグリーンの、つるつるした鬼灯みたいなカプセルが落ちてました」
 たしかに、プールの天井に落ちてきたのも含めて計4つのカプセルが落ちてきている。なかにはクスクスのように粒状になった人間とおぼしき肉塊(そぼろ塊)が口をかっと開けて鎮座している。これは宇宙人に連れ去られた人だろう。いつからこんな有様になったのか、わからない。墜落のときからかもしれないし、このカプセルに乗りこむときはすでにそぼろ塊だったのかもしれない。
 こんどは体育館のほうが騒がしい。行ってみると、軍服を着た男たちが一列になって、その前をさっきまでプールで遊んでいた老若男女や、リゾート地の従業員たちが、行進している。その行進を始めるまでの待機列のなかに、彼女Fもいる。
「なにやってるの?」
「徴兵式。宇宙人も攻めてきたし、軍隊に入るよ」
「まじ?」
「太田さんも入りなよ。二日後に石川県に配属らしいよ」
「うちはいいよ」
「じゃんけんで決めよう」
 Fは言いだしたら聞かないし、まごまごしていると私まで徴兵されてしまいそうだったので体育館の外に出る。巾着をもったおばあさんがいる。志願兵になる孫を見送りにきたのだろう。私は歩きはじめる。廃屋となったゲーム・ショップのシャッターに、「あずにゃん、俺は兵隊になるよ」という落書きがされている。「京王百貨店に出店中!」と大書した看板のラーメン屋は増改築を繰り返したあげくに夜逃げでもしたらしく、崩れそうな家屋にツタがびっしりとからまっている。
 のんきな時代はもう終わりかな。そう思うと、無性に悲しくなってくる。戦争になったら馬鹿なやつらが威張りはじめるのだろうな。
 いつの間にか、周りは丈高いイネ科植物の生い茂った草地になっている。ちょうど十字路に差し掛かったところだったので、天を仰ぐ。
by warabannshi | 2010-11-16 09:50 | 夢日記 | Comments(0)
第428夜「複葉機」
 赤レンガの倉庫の立ち並ぶ入り江の迷路のように折れたり突き当たったりする散歩道を友人らとそぞろ歩いている。私はつい二、三日前にこの町に着いたので、散歩しながら友人らからこの町の様子を聞いているのだ。チューリップの球根のバブルがおこったために、一攫千金をねらう先物買いの投資家たちがこの町に集まっており、そのため中華料理屋と物まね芸人が引く手あまたである、と名前の知らない四〇歳ほどの友人が私に教える。
「道理で、さっきからチャーハンの匂いがあっちこっちからすると思いましたよ」
「みんなが、つまり素人連中まで物まね動画を投稿するものだからうるさくてうるさくて。この町ではミクシィはやらないほうがいい」
 友人Wも嘆息する。
 どこからか盛大なエンジン音が冷えた大気に響きはじめる。
 私たちが湾を一望できるところにつくと、ちょうど水陸両用の巨大な複葉機が水面を離れて飛び立つところだった。驚くことに、羽が縦に十枚もある。それぞれの羽のあいだは2メートルほど離れており、その支柱に何かの箱を大事そうに胸元にささげ持った男が一つの羽の左右に3人ずつ、総計、3×2×10=60人、直立している。
「あれはティッシュですよ。儲けた金でティッシュを買占め、本国にもどって売るのでしょうな」
 四〇歳ほどの男が知ったかぶってそう言う。馬鹿な。複葉機の羽の支柱に立った男たちが持っているもの、あれは遺骨だ。遺骨とティッシュを間違えるようなやつは、友人でもなんでもない。
 絶妙なバランスで、男たちと遺骨たちを乗せた複葉機は入り江のなかを旋廻する。
 木造の複葉をつなぎとめる諸部品が大気圧で軋む音、まっすぐ前方を見つめたままの男たちの呼吸音、唾を飲む音までが、私の冷え切った耳に聞こえてきそうである。ぐんぐんと集中していくと、直立している男たちが全員はだしであることまでわかる。
 複葉機の胴体から、いつの間にか、さらに片翼に3人ずつ、計6人の美少年がそろそろと最下段の翼に歩み出る。この寒空なのに、皆、半ズボンである。そして、等間隔でならぶ男たちのその間に立つ。
 はっと思ったときには、彼らは一斉に下から二番目のポールに飛びつき、懸垂の要領で、よじ登った。そして、ふらふらしながら二番目の翼の支柱に立ち、三番目の翼の支柱を見上げる。
 この曲芸が、彼らの葬送のやり方なのだろうか? 私はもう複葉機から目が離せない。華奢な少年たちは、どれほど練習を重ねたのだろうか。掌はおそらく不似合いに硬く、指はつき指でごつごつしているだろう。そして、彼らの命を左右する操縦桿を握っている操縦士と、どれほどの信頼関係をどのように築いてこの飛行に臨んだのだろうか。
 下から三番目の支柱に、6人の少年らがまた跳躍する。
by warabannshi | 2010-11-15 09:05 | 夢日記 | Comments(0)
【告知】11/14(日)「コミティア94」の詳細【も04b】
 今週の日曜日、開催される「コミティア94」の詳細です。
日程 : 2010/11/14(日)11:00〜16:00
場所 : 有明・東京ビッグサイト西1・2ホール
 当ブログの出店ブースはも04bです。

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 販売するものは、以下の通りとなります。

■文庫本『笑半紙』太田和彦 76ページ ¥400 残り14部
 カテゴリ「こんな夢を見た」より。収録作品はすべてブログにアップされている記事をもとにしています。
 夢日記のテキスト量は、ブログ掲載時のかるく三割り増しになっております。複数のテキストを一つに編集したり、原型をとどめないほど念入りに推敲しました。
 <夢日記>という人をくった趣向の記録文は、古くは鎌倉時代の明恵上人から、明治以降は夏目漱石、内田百閒、黒澤明、島尾敏雄、細野晴臣、山本直樹という偉大な先達たちによって書き記しるされてきました。どれもこれも最高に面白いのでお勧めです。「素寒貧でも楽しめる、そして一生退屈しない」夢という現象の報告書。
 ・西瓜鯨油社の牟礼鯨さんからレヴューをいただきました。ありがとうございます。

■B5判「其処に意味をお与えにならなかったので」太田和彦 20ページ ¥200 残り22部
 カテゴリ「犬の生活」より。収録作品はすべてブログにアップされている記事をもとにしています。
 ネット上で小説を書き始めてから、2010年で10年目になりまして、そのあいだに随分文体も変わったのですが、ちょうど当ブログをはじめた2005年前後に書いた作品を選び、編集しました。浅葱ヒタキさんによる装丁とデザインで、愛嬌ある仕様になっています。

■折りたたみB5判チラシ「藁半紙による笑半紙 二号」太田和彦 無料
by warabannshi | 2010-11-10 08:43 | その他 | Comments(0)
第427夜「牛飲馬食」
 深夜のファミレスに、十人ほどの屈強な、そして驚くべき風体の男たちがやってくる。
・身長140cmほどの、一晩、漂白剤に浸かっていたかのように色白の少年。頭髪なし、眉毛なし。
・バルタン星人。(愛称トルストイ)
・怒髪天という熟語がぴったりな髪型の、二十歳ほどの盲者。サングラスは赤。
・怒髪天・2。身長140cmほど。目つきが悪い。生え際が後退している。
・兜背形の頭のアーリア人。
・ピンクの合成着色剤を食べすぎたなめくじのような肌理の肥満者。
 ……。
 彼らは一つのテーブルを囲み、圧倒的な忙しさで牛の話をする。ソファに胡坐をかいているバルタン星人と肥満者がほかの男らから不興を買っている。やがて彼らのもとに象に食わせるのかと疑うほどの無茶苦茶の量の料理が運ばれてくる。厨房からは、トンカツを揚げる鍋がしゃあしゃあいっている音がたえず漏れてくる。テーブルの上に乗り切らない、湯気をたてている豆乳をつかった鍋物が、周りの無人の机に次々に並べられる。ビールなどの酒類はいっさいない。吝嗇な節約者である私は、それなら食べ放題の店に行きその店主を破産させるほど牛飲馬食にふければ良いのに、と要らない心配をする。
 どれほどの時間が経ったのかわからない。いつのまにか小山のような料理はすべて片付けられ、男たちは皆、ごくふつうの体格と風体にまで縮んでいる。お互いに愛想をふりまいている。私はすっかり感心する。じつに人知の発達してゆくさまは面目躍如たるものがある。
by warabannshi | 2010-11-09 08:37 | 夢日記 | Comments(0)



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