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第453夜「敵意」
 とうとう大学を首になり、前々から患っていた夜盲症も、段段悪くなるようなので、なんとなく気分が鬱陶しい。ぼんやりと部屋でふくれていると、私の知らない間に、私に対する非常な敵意を磨いていた友人Dが尋ねてくる。
「わたしは毎日、ここに来て時間をつぶすことに決めたよ」
「いいけど」
「まず誰も知っている人が誰も来ない。仮に来たとしても、すぐに帰ってしまうから」
「そうだね」
 私はベッドに上体を起こした姿勢で大学への陳情のメールを打ちつづける。生返事をくりかえし、わびしい雰囲気によって彼女を追い出そうとする作戦である。コーヒーも淹れない。Dは造りつけの本棚の背表紙を物色しはじめる。こういうときに限って、本棚にはくだらない本ばかりが並んでいる。望まれない客においても、部屋のなかはきちんとしておきたい。だが、よく考えると、ここはそもそもDの部屋であり、本当に出て行くべき客は、私である。
by warabannshi | 2011-01-31 06:53 | 夢日記 | Comments(0)
第452夜「指圧」
 腕のいい指圧師が格安で施術をしてくれるというので、紙切れに書かれた住所を頼りに線路沿いを歩く。首と肩がだるくてだるくて堪らない。腕さえよければ、いくらでも出そう考えている。しかし、財布のなかにはあまり入っていない。これで揉めるだけ揉んでください、とでも頼もうかと考える。それほどだるい。
 非常に長い真直な道で、空襲でもあったかのように、青い薄煙がゆらゆらと漂っている。向うの方にバラックが固まっていて、賑やかな雰囲気であることはわかる。
 いつしか私はラーメン屋にたどり着いた。踏み切りとの位置関係からしても、まちがいなく、指圧師がいるのは、このラーメン屋である。
 外看板に打ち付けられている蒲鉾板のような品書きには「素らーめん 50円」「めんま 25円」「うどん 1玉30円」「叉焼 150円」の類とともに「指圧あり□」と書かれたのも混ざっている。随分繁盛しているようで、中国語だかなんだかわからない早口で応酬が飛び交っている。なのに、まるで膜をしたかのように、店の外にいる私にはなんだかくぐもって聞こえる。客は皆、もっさりとした黒っぽい風体の男ばかりである。
 いま指圧を頼んだら、間違って茹でたての麺を背中にぶちまけられそうなので、空くまで待つことにする。昼時が過ぎるまでどれくらいだろう、と思ったけれど、いまは夕暮れで、芋虫がいる。
by warabannshi | 2011-01-28 14:03 | 夢日記 | Comments(0)
第451夜「寺」
 儀礼的な宴会をこっそり抜け出して浜辺を散歩していたら、真夜中の凪いだ太平洋があまりにも美しかったので、私はその会合からそのまま逃げ出すことに決めた。なんの会合かはわからない。非合法的なものである。抜け出せば咎を受けることは間違いない。しかし、静止したような海原に映った満月は、本当に、巨大な白い蓮華のようだったのだ。

 真夜中の誰もいない山道をひた走ると、鄙びた温泉旅館にたどり着く。
 玄関は茂った笹に囲まれており、しかし落ちた葉の掃除はきちんとされている。竹筒に水を引き入れ、溜まった水の重みで筒が反転して水が流れ落ち、元に戻るときに石を打ったときのあの澄んだ音が裏から聞こえた。
 私は正装を汗でだくだくにしたひどい格好なので、躊躇する。しかし、とにもかくにもチェックインの手続きをとる。フロントには私の顔写真と「指名手配」の文字の入ったポスターが貼られている。温泉旅館は寺も兼ねており、そこで作務をするかぎり宿泊はタダになるということだった。
「つまり(佐藤)蛾次郎になる、ということです」
「はあ」
 私はそう言うしかない。

 翌日から寺での小間使いを行うことになる。参道の掃除を言いつけられたので、坊主見習いの少年と一緒に竹箒を担いで参道を掃く。参道はずいぶん長く、これだけで一日が終わってしまいそうである。
 途中、高さ十メートルほどのラッパユリが、五、六本、曇天の下で堂々と咲き誇っているのに出くわす。茎は、私が抱きついてもまだ両の指先が合わないほど太く、単子葉植物的な無機質さでそこにあり、押しかかってもびくともしなかった。
「花壇のなかを這いまわる蟻になったような気分だよ」
「苦労人ですね」

 鐘打ち台の下に、ルノアール、ルネ・マグリット、宮崎駿などの絵のなかで花がどのように扱われているかを記した美術展のカタログがある。花だけに注目すると、どの絵もシュールレアリズムみたいに見える。
by warabannshi | 2011-01-26 12:14 | 夢日記 | Comments(0)
第450夜「メイド喫茶」
 農工大の友人らと、噂のメイド喫茶「ヤマザキ」でお茶をしようということになる。メイドに特別な関心はないけれど、店内を調度するアンティーク家具が異常なハイレベル、ということをUかSから聞きおよび、よくわからない田舎の駅まで出掛ける。
「アキバかと思っていたよ。もしくは中野かと思っていたよ」とN。彼はコーデュロイのジャケットを着ている。私も似たようなものだ。その一方で、向こうで太平洋戦争の戦艦の主砲について談笑しているUとSは、明らかに山登りをする装備である。まだYとHが揃っていないので、この田舎の駅の待合室で待っているのである。外は冷たい霧雨が降っている。
「メイド喫茶じゃなくて、冥途喫茶だったりして」と私。
「いや実際」
 Nが携帯の地図アプリを広げる。どうやらこのあたりは古墳らしく、駅前の川だと思ったのは陵墓を守るお堀である。そしてこの陵墓と、土産物を売る売店のほかに、店のようなものはない。
「駅から歩くのかな?」
「彼らの格好からすると、山に登るってことだよね」
 結局、Hはあとで自転車でやってくるということが決まったので、四人で歩き始める。売店はシャッターを閉めており、玉砂利を敷いた参道には誰もいない。陰気に黒々と存在している陵墓を右手にぐるりと回り込み、アスファルトの登山道に出る。
「「ヤマザキ」の住所って、わかる?」
「ホームページに載っているんじゃない?」
「あとどれくらい歩かなくちゃいけないのか、地図アプリで検索しようよ。Uはヤマザキのホームページを出して。私は地図アプリで調べる」
 そう提案するが、Uはいつになく愚図愚図している。
 知らないうちにNとSは先程の二又の道を右に行ってしまったようで、私たちは二人で誰もいない薄暗い山道を歩いている。周りは、林業の衰退によって打ち棄てられた針葉樹が、露に濡れている。その状況のしょぼくれ方に我慢ができない。これは間違ってもメイド喫茶に行く雰囲気ではないではないか。だいたいこんな山奥にまともな喫茶店があるということが信じられない。
「もう私、山頂まで行くわ」
「ちょっと太田君」
「駆け上ってくる! そして駆けおりてくる!」
 私は短距離走者のように走り出す。
by warabannshi | 2011-01-23 18:58 | 夢日記 | Comments(0)
第449夜「北川悠人」
喉元への突きのフェイントから裏拳での顔面への打撃、一歩間合いをつめて左膝への蹴り、こちらの体勢が崩れたところで後ろに回り込み、左腕を決めて地面に押さえ付けて制圧、……という一連の動きをゆずの北川悠人に何回も型稽古でかけられる。寸止めではなく、体の各部位が幾度となく破壊される。北川悠人の動きは絹のようになめらかで、これは夢のなかに出てきそうだと思う。
by warabannshi | 2011-01-18 23:30 | 夢日記 | Comments(0)
第448夜「声優」
 声優課の卒業製作。その先輩は非常に才能があり、感きわまった状態で演技をすると、静止画だろうが動画だろうが、彼が声を吹き込んでいるキャラクターの輪郭から血が滲み出す。
 しかしその天賦の才能のせいで彼は「ラノベ的シーン」、「サービスカット」などを演じることはできない。解剖学的におかしい造型のキャラが画面のなかで輪郭線から血を滴らせるのはホラー以外の何ものでもない。
「クール・ジャパンなど滅びろ」
 これは更衣室でのその先輩の口癖である。首が凝っているらしく、始終揉んでいる。
by warabannshi | 2011-01-17 21:18 | 夢日記 | Comments(0)
【告知】 塩谷賢さん10'後期「科学哲学」講義の音声ファイルです。
 塩谷賢さんが、10'後期に、法政大学@市ヶ谷キャンパスで行われていた「科学哲学」講義の音声ファイルをアップしました。
 アップ先は、NAVERのオンラインストレージ「Nドライブ」です。
 WMA形式で保存されています。
 音声ファイルへのアクセス方法なのですが、これがちょっと面倒くさくて、以下の手順をふんでください。
 1.「Nドライブ」サイトへ移動。
 2.メールアドレス「warabannshi0201@yahoo.co.jp」、パスワード「shiotani」で入ってください。(このメールアドレスは仮登録のものです。メールを送信されても、太田は対応することができません)
 3.最初に出てくるウィンドウ上の講義ファイルから、mp3ファイルをダウンロードしてください。

 第8回と第10回は行方不明です。(このときちょうど新しいICレコーダへの過渡期だったので…)見つかり次第、アップしたいと思います。
 また、ストレージサーバの容量の都合上、09'後期の音声ファイルは消去させていただきました。ご了承ください。09'後期の音声ファイルがご入用の際はコメント欄にてご連絡ください。宅ふぁいる便などでお送りします。
by warabannshi | 2011-01-11 21:14 | 塩谷賢発言集 | Comments(3)
第447夜「湖」
 宮崎県に森林技官として赴任している友人Uの借家に数日前から遊びにきている。山の中腹にある借家は二階建てで、部屋の隅々にガムテープが貼ってある。それでも、いたるところから隙間風が吹き込んでくる木造物件である。これでは暖房の効きも悪いだろうと思ったけれど、そもそも暖房というのはないという。
「九州でも今年は佐賀がすごい積雪じゃない? 寒くないの?」
「寒いよ。でも寒かったらスクワットとかすればいいんだよ」
 さすがウクライナで鍛えただけのことはあると関心する。
 この借家には友人Nもいるけれど、累積した疲れで眠っているのか、彼に割り当てられた部屋はしんとして物音一つしない。友人Uも、今日のぶんの資格試験の勉強を終わらせてしまいたいといい、昼までは彼の自室に逼塞している。
 私はだから自治寮ほどにも広い彼の借家をぶらぶらするのだが、圧巻なのは、彼の部屋の北に広がる巨大な湖である。満々と湛えられており、水面は表面張力ではじけとびそうなほど光沢を放っている。濃い霧がかかっているせいで、その全貌はわからないが、もう水銀の海のようである。携帯の地図アプリでこの湖の形を図ろうと試みたこともあったが、何度やってもエラーが出てしまい、ついぞ成功したことがない。
「夏は涼しくて素晴らしいだろうね」
 この借家に最初に来たときに私は感嘆して彼にそう言った。
「蜻蛉がすごいよ。まるで夕立が逆さに降るみたいに、群で、上昇気流に乗ることもある」
「この湖は、本当に北側にあるの?」
「調べてみるといいよ」
 友人Uはなぜか急に不機嫌になり、押し付けるようにコンパスを私に渡した。
 懐中時計のように開くと、磁石を浮かせた文字盤には、目玉を模った文様がびっしりと描かれていた。以来、この湖が北側にあることを疑ったことは一度も無い。
by warabannshi | 2011-01-11 05:19 | 夢日記 | Comments(0)
第446夜「国立駅」
 国立駅の高架の傍の土手で、一度も通ったことのない高校の制服を着て、一度もつるんだことのない悪友たちと酒を飲んでいる。なぜか四人の教員もその酒盛りに参加していて、騒々しく巫戯けている私たちを涼やかな顔で見やっている。教員の一人はほかの高校から派遣されてきた「人文社会」の担当で、いつも萩原朔太郎の話ばかりするので「朔太郎はそんなこと言いましたか?」と生徒からよくからかわれている。
「太田君はWikipediaつかったことある?」
 その朔太郎が餃子を食べている私に言う。朔太郎がかけている黒縁フレームの眼鏡をひょいと外して私の眼鏡と取り替えてみたい衝動にかられるが、たとえ酔っていたとしてもそこまで馴れ馴れしくはできない。ふつうに答える。
「使う、っていうのは、記事を造ったり、更新したりすることですよね。閲覧するんじゃなくて」
「そう。俺、Wikipedia、授業で使おうと思うんだよね。Wikiのページとして、授業のコーナーを造っちゃうの。荒らしに来たやつは履歴を見れば一発でわかるし」
「いいんじゃないですか」
「よし、じゃあ、早速本屋に行ってくるよ。どこにある?」
 私は酔った頭で必死に最寄の本屋を思い浮かべようとする。国立駅の高架下に、たしかいまにも朽ち果てそうな本屋があったはずである。ただ、その高架下までどうやればたどり着けるのか思い出せない。
「あとで連れて行ってあげますよ」
 そう言おうとすると、いつのまにか酒宴は終わっていて、総武線の黄色い車体に満艦飾となって悪友たちが手を振っている。教員の三人は、土手で体育座りをして微笑を浮かべてその生徒らを眺めている。そこに耐え難い怠惰さを見出し、ぞっとする。
 その教員らのなかに朔太郎がいない。
「すみません、××先生(=朔太郎)はどこにいますか?」
 反感を抑えて訊くと、彼らは朔太郎はもう帰ったという。
 その瞬間、濁り、汚い、的屋や一膳飯屋の小屋の立ち並ぶ国立駅構内の本屋で立ち読みをしている朔太郎の姿が目に浮かぶ。
 そうか、駅構内にも本屋はあったじゃないか、と思い、私は彼に謝りに駅構内に急ぐ。傷痍軍人が慈善鍋をやっている。駅前では迷惑も顧みずにボブ・マーレィの曲を大音量で鳴らして踊っている若者たちがいる。『ブレードランナー』を思い出す。
by warabannshi | 2011-01-08 17:05 | 夢日記 | Comments(2)
塩谷賢発言集 「Qualia ML」〔後編 4/Oct/1999~9/Aug/2002〕
 茂木健一郎さんが管理人をつとめていた「Qualia ML」というメーリングリストに収録されている塩谷賢さんの投稿をまとめました。PDFファイル化してアップします。これで「塩谷さんの文章をGoogleのように検索することができる」はずです。

塩谷賢発言集 「Qualia ML」〔後編 4/Oct/1999~9/Aug/2002〕

※ PDFの検索方法――
 ① PDFファイルを開く。
 ② [Ctrl]+[Alt]+[ F ]の三点押しで検索ウィンドウを表示
 ③ 検索したい語句を入力し、検索開始

 Qualia MLのすべての投稿はすでに一般公開はなされているので、塩谷さんのクオリアMLの全データ(塩谷さん以外の茂木さんなどの発言)を閲覧したい方、前後のコンテクストを確認したい方は、下記URLに圧縮ファイルで保存されているテキストをご覧ください。
Qualia ML
by warabannshi | 2011-01-07 11:01 | 塩谷賢発言集 | Comments(0)



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