<   2011年 05月 ( 8 )   > この月の画像一覧
第487夜「布屋敷の代謝」
 布屋敷にいる。空間のいたるところで新陳代謝が活発化しているので、部屋から部屋へと逃げている。もちろん、逃げこんだ部屋では、前の部屋よりも新陳代謝が活発ではない保証はない。闇雲に逃げているだけだ。これではいけない、と思うが、止まっているよりも、逃げ走っているほうが気がまぎれるから仕方ない、パニックになるのも道理だ、誰ともなしに云いわけをする。一生懸命に走る。辺りが騒々しいのは、私が動き回っているせいで、この屋敷にノイズがたまっているからだ。もちろん、それ如きでどうこうなるような屋敷ではない。
 ある部屋で、とうとう緑色の光点と対面する。泣きたくなるほど巨大な壁に埋め込まれた、一抓み光点に見入られたまま、私は動くことがではない。背中で、ぞりぞりと空間が代謝を始める。私の臭いの尾をたどって来たのだ、と思う。
by warabannshi | 2011-05-30 08:56 | 夢日記 | Comments(0)
第486夜「餃子アイス」
 総円周一〇〇キロメートルほどの惑星を使って、クイズ大会が行われている。
 地表を芝生で覆われているこの小惑星では、すでに三日三晩(七十六時間ほど)クイズが出され続けているが、いまだに黒いヒートテックを脱がずにすんでいる(つまり、完答をつづけている)参加者が十二人いる。だらだらと牛の涎のように出される問題では、とてもこの十二人を選別できないことは、明らかである。
「それでは、突然ですが、最終関門に移りたいと思います」
 残った十二人は、ひとまず惑星のひとつの窪みに寄せ集められる。どこからともなく、アナウンスがなされる。
「最後の課題は、「中本の北極ラーメンでアイス・バーを作ること」。スープと麺の両方を使ってください。撹拌機を使うのはルール違反です。もっとも早く、出来た「中本アイス」を売ることに成功した人が優勝です」
 もはやクイズ大会ですらない。
 飽きて、テレビのチャンネルを変えようかとも思うが、幕間に「餃子アイスの作り方」をやるというので我慢して、もう少し見ることにする。

【餃子アイスの作り方】
 1.餃子の具となるひき肉や葱を混ぜたものを用意する。
 2.大きめのボウルで、山盛りの砂糖をシャンパンで溶いたものを用意しておく。
 3.餃子の具を、そのボウルに入れる。

 餃子の具には大量の睫毛が混入している。気分が悪くなったので、やはりテレビを消す。
by warabannshi | 2011-05-24 20:04 | 夢日記 | Comments(0)
第485夜「修行者」
 目もくらむような崖の淵にある御堂で修行に励んでいる。何の修行だか知らない。二十人くらいのなかには友人Hもいる。
 御堂はもとは朱塗りだったらしく、褪せた色合いがなんともいえない風格を醸しだしている。しかし隣室には英検1級の一問一答が収録されているタッチパネルが壁に据え付けられていたりする(例:和問英答「河馬は血の汗を流すという噂の根拠はなにか?」)。
 外で法螺貝が鳴らされる。集合の合図だ。私は私の革靴を履こうとする。が、いつの間にか革靴は、崖の虚空へと枝を伸ばした若木に持っていかれてしまっている。
「枝には鉄筋が入っているから大丈夫だよ」
 修行者の一人が私に、枝を這い進んでとってくるようけしかける。私はひとしきり躊躇したすえ、人も集まってきたので、そろそろと枝を伝い始める。
「それそれ」
 私が枝の中ほどにさしかかると、集まった修行者たちは一斉にジャンプを繰り返す。やめてくれ。崖っぷちから生えているこの若木が、振動で折れてしまう。そして、私を困らせていた革靴は、右左二つとも、崖の下へと落ちていく。
by warabannshi | 2011-05-22 09:18 | 夢日記 | Comments(0)
第484夜「焼身自殺」
 港区ということになってる臨海工場都市の道路を、自転車で走りながら絶望的な気分になっている。谷川俊太郎の「展墓」の一節一節が、水中の微生物のようにせせこましく頭のなかで動き回る。工業都市はひどく臭い。濃くて、甘く、不健康な臭いだ。牛乳に安い飴を入れて電子レンジで加熱処理したらこんな匂いになると思う。体中の元気が阻喪されていく。
 そんな状態になっても、尿意は催す。
 私は公衆便所に立ち寄る。そこは奇妙に広く、そして当然のように非常な臭気を放っている。二つの入り口は、【男】【女】ではなく、【伝染病】【その他】と分けられている。じつに衛生的だと思う。
(汚穢、それは問いではなく、突きつけられた解答だ)
 私はできるだけ呼吸をしないようにしながら、混みあう便所のなかで、陳列された小便器の前に立つ。すると、個室のほうで突然叫ぶようにリズムをとる声が響く。
タンタン タタタン ターン タータタン
タンタン タタタン ターン タータタン
タンタン タタタン ターン タータタン ター
 その叫びは三回ほど繰り返されても、止む気配はない。先程すれちがった黒人の男性が、不審に思って扉を開けたようである。
 My God...という呟きを確かに聞いたように思う。
 個室から飛び出してきたのは全身を炎に包んだ、すでに性別もわからなくなっている人影である。件のリズムを、恍惚のまま繰り返しながら、跳びはねている。私はその人影のことを直視することができない。もう手遅れだろう。はやく燃え尽きて倒れないかと、目を閉じて祈る。
by warabannshi | 2011-05-17 08:09 | 夢日記 | Comments(0)
第483夜「八月三一日」
 田舎に住んでいる名前のしらない祖父母の家に、八月三一日に自転車で遊びに行くことになる。祖父母の家の布団や畳には南京虫や得体の知れない人を刺す虫がうようよいるので、そういう虫をよく食べる甲虫を、ジップロックに入れて、持っていくことにする。
 半透明のジップロックに、黒々とした湾曲した腹をもつ甲虫をひとつずつ小分けにしていると、弟だか妹だかもわからない人影が、私も欲しいと、甲虫をねだる。この子も祖父母の家に行くのである。私はすでに詰めてあった二袋をその影法師にあげる。
 自転車で、どこをどう走ったのか知らない。猫が多い川沿いを走っていたような気もする。「臨月」という看板もあった。そして、間違いないのは、祖父母の家へは箸のように細い板切れをわたって、小川を越えなければならないということだ。
 私はもう慣れているので、自転車でするするとその板切れを渡りきる。
 対岸で、影法師の子がまごまごしているのではないかと思い、振り向くと、そんな子はどこにもいない。そのとき、私は自分のぶんの甲虫を持ってき忘れたことに気付く。あるいは、あの影法師の子は、私の手元から南京虫の天敵である甲虫を盗みに来たのかもしれない。
 絶望的な気分で祖父母の家の玄関を開ける。
 出迎えてくれた、やはり影法師のような祖母は、ちょうど長旅で疲れた私を寝かせるために布団を敷いているという。ありがたいけれど、疲れていないから、何か手伝う、と私は言う。
「それじゃあ、小川で食器を洗ってきてくれる? 水道が止まってしまっていてねえ」
 私は茶碗や魚皿の入ったバットを持って、先程渡った小川に行く。
 川端にしゃがんで、茶碗を洗おうと水につけると、どうも流れが淀んでいる。むしろ溝泥のようなむうとする匂いがする。そういうことはいまだかつて無かった。清澄な流れであったはずだ。
 コンクリートで護岸された対岸に、三人の野暮ったい小学生ほどの女子が足をぶらぶらさせて、やはり川の水が臭いことに文句をこぼしている。そして、小石を投げる。何に投げているのかと思ったら、岩のような大山椒魚であった。山椒魚は降ってくる石を煩そうにしながらも、ほとんど動かない。こんな淀んだ流れのなかで、弱っているのかもしれない。
 私はそれでもその川で食器を洗う。もはや開き直りである。錠剤シートの殻が川底に石に挟まっている。構いはしない。そして、前の夏休みにここを訪れたときに私が使っていた茶碗が伏せたかたちで沈んでいる。手にとって、内側を指の腹で擦ると、陶器には苔がいっぱいに生えていたらしく、ずるずると不愉快なぬめりが取れていく。

【名前の知らない祖父母の家で見た、宝塚の劇のテレビ放映】
 大富豪の邸宅で寵愛を受けている美貌の愛人。ある日、その邸宅に三人の行き倒れが運び込まれる。盲目の三人は、邸宅で召し使われることとなるが、愛人は、自分の寵愛が失われるのではないかという不安を覚える。(エリック・サティの小品が、印象的にその不安を暗示する)
 ある日、白亜の大階段で、他の婦人たちと談笑していると、三人の盲目の召使が飲み物を運んでくる。よく冷えた透き通るような青い液体の底に、椎茸と杏がひとつずつ沈んでいる。ストローで飲むと、愛人のそれだけ、杏が腐敗している。激昂し、召使たちを打擲する愛人。なにもそこまで怒らなくとも、と皆に窘められるが、召使たちは何の抵抗もしない。それが愛人をさらに不安にさせる。
 ある朝、大富豪は白亜の大階段で、割れた花瓶の破片を手探りで拾っている召使の一人と、それを拾わせている愛人に気付く。盲目の召使の指は傷だらけであり、血が、点々と滴っている。大富豪が愛人を呼びとめる。ゆっくりとあがった愛人の顔には、割れた花瓶のように無数の皹が入っている。
by warabannshi | 2011-05-15 05:19 | 夢日記 | Comments(0)
第482夜「カラオケ」
 白塗りの雑居ビルのカラオケ屋に、名前を知らない4人の友人と来ている。
 部屋の隅には隠しカメラがあり(潜望遠鏡のような)、オーナーが覗き見していることに、皆、気づいている。そのため、牽制しあって歌おうとしない。
「あと5分だよ」
 すっかりアンニュイになってしまった友人の一人が言う。テーブルの上には、無農薬栽培された人参や大根の浅漬けの鉢がいくつか並んでいる。
「じゃあイルカの鳴き声やってよ」
「ジンギスカンが良くない?」
「それは歌? 雄叫びの方?」
「すべり台が良い」
 ちょうどその頃、砂浜では佐藤蛾次郎に似た二人の男が相撲をとっている。革命家崩れのオーナーは、そちらの観察に夢中である。
by warabannshi | 2011-05-14 20:13 | 夢日記 | Comments(0)
第481夜「当て逃げ」
 雑に描かれた鼠のような顔つきの男が、誰もいない町の大通りを、どこかに向けて走っている。町のすべては灰色がかっていて、悪意あるアニメーターが彩色を狂わせたかのようである。
 男が息を切らしながら赤信号が変わるのを待っていると、その後ろから、一台のバスが彼を追い抜かす。
「乗せていってくれえ!」
 男は律儀に変わるのを待っていた赤信号も無視して、バスの後ろのバンパーに掴みかかる。
 すると、次の瞬間、彼はバスの後部座席におさまっている。
 一息ついて、窓の外を見ると、町は拭い去られたかのように天然色を取り戻している。そして、人々も歩道にある。鼠のような顔の男は安心する。しかし、さっきからバスの速度は上がり続けており、一度も信号待ちをしていない。運転席のほうを見やると、誰もいない。
「降ろしてくれえ!」
 男は誰もいない運転席にすわり、ブレーキペダルを踏む。素直に止まるバス。しかし、そのバスに前輪を当て逃げされたたくさんの自転車乗りたちは、運転席に座っている彼を引き摺り下ろすつもりである。
by warabannshi | 2011-05-09 07:29 | 夢日記 | Comments(0)
【告知】5/5(木/祝)「コミティア96」の詳細【と15a】
 明日、こどもの日に開催される「コミティア96」の詳細です。
日程 : 2011/05/05(木/祝)11:00〜16:00
場所 : 有明・東京ビッグサイト東1・2ホール
 当ブログの出店ブースはと15aです。

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 販売するものは、以下の通りとなります。

■文庫本『続笑半紙』太田和彦 80ページ ¥400 新刊!30部
 カテゴリ「こんな夢を見た」より。収録作品はすべてブログにアップされている記事をもとにしています。
 前作『笑半紙』が〈肉料理〉だとしたら、本作『続笑半紙』は〈ツナサラダ〉くらいの濃さです。前作が『インランド・エンパイア』だとしたら、本作は、『水曜どうでしょう』くらいの緩やかさでお送りします。『続笑半紙』では、実在する物や場所の名前が多く現れます。記録のなかに実在する何かの名前が多いほど、その夢は、起きているときの記憶の、単なる順列組み合わせのように思えます。
 しかし、私たちの現実こそが消えた夢の記憶の順列組み合わせなのではないでしょうか。夢の中で、誰もが感動する素晴らしいメロディを作曲したのに、目覚めたあと、自分でもう一度そのメロディを聴くことができないことを残念に思ったことはありませんか。夢から覚めても忘れないように、五回も十回もそのメロディを口ずさみ、手帳に採譜したにもかかわらず、夢から覚めると消え去ってしまう記憶と記録。私たちが生きているのはそのメロディではないでしょうか。――しかし、私たちにそう思わせることこそが、じつは夢の巧妙な戦略なのかもしれません。


■文庫本『笑半紙』太田和彦 76ページ ¥400 残り12部
 カテゴリ「こんな夢を見た」より。収録作品はすべてブログにアップされている記事をもとにしています。
 夢日記のテキスト量は、ブログ掲載時のかるく三割り増しになっております。複数のテキストを一つに編集したり、原型をとどめないほど念入りに推敲しました。
 <夢日記>という人をくった趣向の記録文は、古くは鎌倉時代の明恵上人から、明治以降は夏目漱石、内田百閒、黒澤明、島尾敏雄、細野晴臣、山本直樹という偉大な先達たちによって書き記しるされてきました。どれもこれも最高に面白いのでお勧めです。「素寒貧でも楽しめる、そして一生退屈しない」夢という現象の報告書。
 ・西瓜鯨油社の牟礼鯨さんからレヴューをいただきました。ありがとうございます。

■B5判「其処に意味をお与えにならなかったので」太田和彦 20ページ ¥200 二刷 残り21部(各色7部ずつ)
 カテゴリ「犬の生活」より。収録作品はすべてブログにアップされている記事をもとにしています。
 ネット上で小説を書き始めてから、2010年で10年目になりまして、そのあいだに随分文体も変わったのですが、ちょうど当ブログをはじめた2005年前後に書いた作品を選び、編集しました。浅葱ヒタキさんによる装丁とデザインで、愛嬌ある仕様になっています。

■折りたたみB5判チラシ「クラフト紙による笑半紙」太田和彦 無料
by warabannshi | 2011-05-04 18:33 | その他 | Comments(0)



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