<   2011年 12月 ( 9 )   > この月の画像一覧
第540夜「確信」
 天井の高い、飲食店のフロアにいる。黒々とした床にはたくさんの落花生の殻が落ちており、BGMなのか、店の外からなのか、竹笛の音が聞こえる。あるいは、これは竹笛の音ではなく、大規模な鳥類飼育場からの鳴き声なのかもしれない。フロアには、私のほかにもう一組、二人組のおばさんがいて、「こんなことじゃいけない」と、木製のスツールに腰掛けて話し込んでいる。彼女らが符牒を用いた革命の相談をしていることが、なんとなくわかる。
「お待たせしましたよ」
 スリランカの仏像のように巨乳のウェイトレスが、目玉焼きののった山盛りのご飯を持ってくる。くすんだ色のご飯がいっぱいに盛られている木椀は、托鉢に使われていそうな、年期の入ったものである。
 ナンプラーを目玉焼きの上からかけ、割り箸を割って食べようとしたとき、そのご飯がくすんだ色合いに見えるのは、そのひとつひとつに漢字が書いてあるからだと気づく。
 箸でよりわけ、一文字一文字に目をこらそうとすると、
「その500粒が、あなたの確信です」
 さきほどのウェイトレスが説明してくれる。
by warabannshi | 2011-12-27 16:38 | 夢日記 | Comments(0)
第539夜「温室」
 彼女Fと植物園にいる。大洪水でもあったのか、そういう仕様なのか、見渡す限り、一面水浸しで、桟橋がつらつらと続いている。紙媒体の新聞がマガジンラックに入っていて、その一面に、「洪水によるジプシーの死者、739人に」という見出しが見える。やはり、これは水害のあとなのだろうか。
「それは去年のじゃないですか?」
 そう言われて、よく見ると、たしかに西暦は去年のもので、政府関係者は二度とこのような惨事を招かないことを記者たちに約束している。ということは、この水は、去年のそれから引いていないのだろうか。空は青く、太陽はまぶしい。
 桟橋を歩き続けていくと、巨大な真四角の温室にたどり着く。薄灰色の外観はまったくそっけなく、しかしそのそっけなさが不気味であり、500メートルくらい離れて、温室と、温室を見上げている私たちを撮影すれば、ベクシンスキーが描きそうな一幅の絵になるだろうと思う。
 中に入る。電気は失われていて灯りはない。一歩前に出ると、たくさんの長細い茎をなぎ倒した感触がつま先に感じられる。きっと光を求めて奇形的に伸長した芽が、びっしりと通路にも生えているのだろう、と直感する。そして、いままで壁のように感じていた両側が、じつはポップのように改良されたトマトであることを知る。
 帰ろう、と思い、背後にあるはずのドアを手で探るが、宙をつかむばかりである。振り返ると、ドアははるか彼方に移動して燐光している。そして、蔓植物となったトマトの陰で息を潜めていた、何億匹もの小蠅が、いっせいに私におそいかかる。
by warabannshi | 2011-12-22 10:45 | 夢日記 | Comments(0)
第538夜「永福町駅」
 乗っているケーブルカーが、建て替える前の、平屋の永福町駅のプラットフォームに到着する。ケーブルカーといっても、ここに急斜面があるわけがなく、平坦なレールの上を、学帽にまきつけてあるような白い布帯で、二台の車両を引っ張るのである。どうしてこういう仕組みを採用しているのかは知らない。
 吹きさらしのプラットフォームはおそろしく寒そうで、湿気で黒々としたコンクリートはぴんぴんに緊張している。乗っていた毛皮を着た客たちが、次々と大きな荷物を持って、降りていく。永福町駅は、このケーブルカーの終点だからだ。私は慌てない。混み合った出入り口は嫌いである。
「そういえば、盗撮の話はどうなったの?」
 二人掛けの隣席に座っている友人Hが聞く。
「うん。やっぱり無視した」
 どうやら自室のクローゼットの隙間から誰かに盗撮されているようなのだ。この前は「撮影中」を意味する赤いランプが、暗闇にぼんやりと浮かんでいるところまではっきりと見えたのだが、もう眠くてたまらなかったので、そちらに向かってピースサインを出し、床に就いた。
「でも、写真とかばらまかれたらどうするの?」
「いやもうどうしようもないよね」
 プラットフォームに降りると、靴底が瞬く間に凍り付きはじめるのがわかる。こんな寒いところに佇んでいる理由もないので、友人Hと並んで、足早に改札口を出る。
 改札口を出たところの広場には、高校の自転車競技部の部員たちが集まっている。なにかの待ち合わせをしていたのだけれど、何の待ち合わせだったかわからない。なんだっけ、と隣の友人Hに聞こうとしたが、彼はそこにはいない。
「俺たち、これから朗読劇に行くんだけれど、チケットが一枚足りないんだ」
 顧問Yが、まるでスネ夫のようなことを言う。
「あ、良いです、良いです。自分、遠慮しますから」
 じゃあ、失礼します、とそこを去り、信号を渡って、三井住友銀行の前の自転車置き場に行くが、停めてあったはずの自転車はどこにもなく、曇天からしんしんと真っ白い霧が降ってくる。
by warabannshi | 2011-12-22 06:55 | 夢日記 | Comments(0)
第537夜「コレクション」
 温泉と予備校が一体化したような保養施設に来ている。『マザー2』のグミ族の村のような趣で、東屋やちょこんとした木造二階建てが立ち並ぶ。
「まあサウナにでも入っていてよ」
 高校のときの名前を忘れた友人が、ここの経営者の息子だったらしく、ジャングル・クルーズの拠点になりそうなヤシ葺きの小屋に連れてきてくれる。
 礼を言って、中に入ると、脱衣所に、ドアノブが外れかかった部屋があることに気づく。
 そっとドアを開けると、六畳ほどの部屋の壁一面が、本棚になっていて、漫画の単行本がずらっと並んでいる。二千冊をくだらないそれらは、しかしシリーズも巻数もばらばらで、背表紙のランダムな色彩で私は、バランスを失う。
 倒れかけた右手が、たまたま『ドラえもん』2巻をつかんだので、開いてみる。見たことがない、グロテスクな筆致で、「しずかちゃんが道具の副作用で見かけだけ高齢化し、誰にもわかってもらえなくなる」など、救いのないな話が続く。
 ふと、ここに集められた作品は、「漫画家が狂気に侵されかけたときに掲載したもの」のコレクションなのではないかと気づく。検証のため、本棚から何冊かを抜き出し、カバンに詰める。
by warabannshi | 2011-12-17 10:19 | 夢日記 | Comments(0)
第536夜「地下道」
 オペラ「****(←忘却、ひらがな4字)」を観に、極寒の蒲田駅に降りたつ。うっかり各駅停車で来てしまったせいで、急がないと開演時刻に間に合わない。しかし、オペラ座が駅の北口にあるのか、西口にあるのか、わからない。
「北口です!」
 彼女Fが、腕利きの秘書のように、iPadで周辺地図を見せてくれる。
「持ってたんだ、iPad」
「いえ、拾ったんです」
 FはiPadを遺影のように汚い階段に立てかける。
 私たちは北口に急ぐ。しかし、特急を待つ人たちの行列が幾重もできていて、地上への階段をまったく塞いでいる。寒波のせいで、皆が車に乗るのを控えた結果がこれだ。
「地下道で行けるところまで行こう!」
 地下道とは名ばかりの下水道を、北に向けて走り出す。まるで月面のように一歩一歩が長く跳べる。喜んでいると、すぐ横を、『スクリーム』の仮面をつけた黒マントが、汚水を跳ね散らかしながら水面を走り抜けていく。
 ようやく地下道の終点にたどり着く。壁にあった窓を開けると、
「だいたい、…3階くらいの高さですね」
 児童公園に植えられている柿の木の梢に、手を触れられそうである。オペラ座も見える。
「飛び降りよう」
「嫌です」
by warabannshi | 2011-12-16 10:55 | 夢日記 | Comments(0)
第535夜「窃盗」
 アメリカで不良少年をやっている。軽犯罪を犯して、金持ちの友人の家に三カ月ほどかくまってもらっている。芝生の中庭にプールがある豪邸で、キャンベルのスープ缶とかを食べながらけっこうな暮らしをしている。
 サンルームでは、その金持ちの息子である名前の知らない友人と、あとティラノサウルスのように極端に腕の短い体躯の、靴屋の友人が、Kinectの格闘ゲームに興じている。私の姿を認めると、ティラノの方はゲームをやめて嬉しそうに話かけてくる。
「最近、姿が見ないけど、どうしたの?」
「ガラスを割らないように気をつけて生きているよ」
「あー、それは、…つまり、三時間くらい前から?」
「? まあ、三時間前は走っていたかな」
「そうではなくて、…なあ、彼は一時間前にからここに来ていたの?」
 調子のおかしいティラノが金持ちの息子に聞く。
「ついさっき来たとこだよ」
 私はすかさず、彼らの記憶の時間感覚が編集されていることに気づく。MADに親しんだ者の目からすれば二人の挙動は奇妙ではない。
「かかれかれかれ」「つついついつい」と完全におかしくなったとき、二足歩行の大きな鼠がカーテンの裏から現れる。こいつが窃盗犯である。
by warabannshi | 2011-12-15 09:35 | 夢日記 | Comments(0)
第534夜「麻雀会館」
 昼食を買いに、白衣のまま自転車に乗り、スーパーマーケットに向かって走っている。
 できればふわふわした甘いものが食べたい。例えばホイップクリームたっぷりのフルーツ・サンドイッチとか。と思いながら、アーケードの商店街をこいでいると、ふと、麻雀会館で何かの学会が開かれていることを思い出す。
 そこに立ち寄ろうかとも思ったが、しかし甘いものも食べたいので、まずはスーパーマーケットにいそぐ。
 薄暗いマーケットは、戦後すぐの闇市のような造りになっていて、店内まで自転車を乗り入れることが許可されている。花売り場、草履売り場を通り過ぎ、冷蔵食品売り場のデザートのコーナーまで、自転車を乗りつける。
 しかし、ホイップクリームを用いた食品は、そこにはない。濃緑色のクロレラ入りゼリーや、よくわからない刺身状の肉が陳列されている。たいそうな音を立てて噴出される冷気は、ひどく饐えた匂いがする。背後で、男女二人の店員が、白衣姿のままでやってきた私をとがめるような視線をおくっているのがわかる。あるいは、リノリウムの床にタイヤ痕をつけてしまったことへの非難かもしれない。
 私は、自転車をひきながら、スーパーマーケットを出る。
 麻雀会館の売店では、しかし、甘いものを売っているかもしれない。
 麻雀会館は、浅草観音温泉のように、外観はまんべんなく蔦におおわれているが、増改築をくり返しているので、中身は病棟のように近代的である。二階の渡り廊下を通り、階段教室のような喫煙所にいくと、Sさんと友人Sがオートポイエーシスについて話している。私も近くに座って、二人の議論に耳を傾けていたが、すべて忘却。
by warabannshi | 2011-12-11 07:02 | 夢日記 | Comments(0)
第533夜「ユリイカ」
 2014年2月号の雑誌「ユリイカ」は、ベートーヴェン特集。Yさんが寄稿している「フロイトとハンマークラヴィーア」を立ち読みする。
「フロイト=ラカン“的な”理論を用いたラノベ解釈にはほとほとうんざりさせられる。なぜなら評者は、当の作品の読み込みよりも、理論のむちゃくちゃな拡充に熱心だからだ。しかし私はいま、ハンマークラヴィーアの理解のために、フロイトを拡充しようとしている」
 そんな出だし。論文は、ベートーヴェンは眼鏡をかけた少女が好きで、写譜士の女性にむりやり眼鏡をかけさせたエピソードから彼の楽曲の欲望を読解するという流れになっている。雑誌を閉じて、棚に戻す。
by warabannshi | 2011-12-09 09:35 | 夢日記 | Comments(0)
第532夜「汚れ」
 ひどく汚れた雑居ビルのベランダにいる。鳩が舞い降りてくるのをふせぐための金網にはべっとりと埃がからみついており、胸が悪くなるそれをとおして、灰色の曇天が広がっている。喫煙しに、ここにきたのだが、もはや煙草をくわえる気にもなれない。手すりには、一組の布団が干されている。垢じみていて、硬そうで、どんな大病を患っても、あれで眠りたくはないものだと思う。
 ハンス・ノイエンフェルス演出の『ローエングリン』で出てくるような気色の悪い鼠の着ぐるみの一団が、せかせかと雑居ビルのなかに入っていく。産業系英語の試験があるのだ。私もその試験を受けなければならない。だが、こんな汚穢に満ちた空間でなされる試験に、どれほどの意味があるだろうか。ない。
 私は鼠の着ぐるみの一群の進む方向に逆らって進む。そして、息を止めて、干されている布団を抱きかかえる。
 私はこれを抱え、神学校の修道士のように粛々と、試験会場に入っていくつもりである。
by warabannshi | 2011-12-06 05:22 | 夢日記 | Comments(0)



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