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第557夜「教室掃除」
 湿度があがったために教室のいたるところに苔が生えはじめる。高校生の私を含め、クラスメイトは総出で、歯ブラシを片手に青々とした顆粒をそぎ落とす。天井近くの窓ガラスを開け閉めしながら鍵の金具を磨いていると、下から友人Sが声をかけてくる。
「太田、1999年はどうよ」
 ノストラダムスの大予言のことだ。
「いや、もう恐怖の夏だよ。予言は遂行的なものだから、誰かがやる。人類は滅びます」
 そう言いながら、あれ、もう1999年は過ぎているのではなかったっけ、と思う。
「言質をとっておこう」
 Sはスマートフォンを取り出して、はしごにのぼっている私を撮る。やっぱり過ぎているじゃないか。
by warabannshi | 2012-03-26 06:34 | 夢日記 | Comments(0)
第556夜「演説」
 空調の効いたソファのある部屋に、タイの人たちが三々五々、集まっている。黄色い衣を着た上座部の僧侶もいる。彼らに向けて、つなぎを着た日立の技術者がなにかしゃべっている。要は、日本車に積んである電子部品の基盤を盗んで、ちゃちな模造品を作ってくれるな、という話である。私はこの件について門外漢だが、ちょうど洪水で流される夢から覚めたところでむしゃくしゃしていたので、日立の技術者に発言を求める。
「Excuse me, but I speak for Japanese」
 この場合、「for」でよかったのだろうか、と思いながら、しゃべりつづける。
「技術流出については、たしかに問題だと思っています。しかし、それが決定的な問題であるとは思っていません。なぜなら、開発されたものが高度であればあるほど、あるいは、卓越した工夫が凝らされていればいるほど、人は“その先”を見たくなるものだからです。例えば、この自動車の空調を人工知能によって制御するこの基盤は、果たして“ハイエンド”なのか。まだ“その上”があるのか。“その先”があるのか。
 それを考え始めたとき、人は、手元にあるそれが作られるに至った“経緯(background)”を知らず知らずのうちに考え始めます。これは“敬意(respect)”の表れと言ってよいでしょう。日本語では、“経緯”と“敬意”は同じ発音をします。
 私は、たとえいま、目先の利益のためだけに基盤をいじっている窃盗者たちが、自分たちはうまくやっていると考えていても、彼らを厳しく咎めることに感情的になってはならないと考えています。彼らは、彼ら自身の行為によって、彼ら自身を日本製品にaddictさせているわけですから。彼らが、あるいは、彼らの後輩や息子たちの数人が、“その先”、“その上”、“その前”にどうしようもない関心を抱き、日本に来て働きながら、私たちに刺激を与えてくれることを望みます。ご清聴ありがとう。」
by warabannshi | 2012-03-24 05:13 | 夢日記 | Comments(0)
第555夜「電子記憶」
 公共コマーシャル。乳白色の膜でコーティングされた針金の、輪っかのような、ばねのような、たわしくらいの大きさのひと塊。それをリビングのテーブルで、ブロンドの髪の白人女性が、愛おしそうに撫でている。泣きはらした目で、台詞。「ずっと…、一緒にいるからね…」。
 男性のナレーション。
 「しかし、彼女はそうとは知らずに、40人もの娘を閉じ込めていたのです」。
 乳白色の針金のたわしは、次の瞬間、バレリーナの白鳥の恰好をしたまったく同じ顔かたちの女児が、40人、手をつないでいる映像に置換される。差分バックアップされた、記憶である。女児たちは手をつないだまま、口々に、「ママー、ここから出して!」、「ここはどこなの?」と言い立てる。しかし、母親の耳にそれらの泣訴はとどかず、母親は乳白色の針金のたわしをリビングのテーブルに置いたまま、レモネードか何かをとりにシステムキッチンに行ってしまう。
 黒い背景に白テロップ。
 「故人の電子記憶の消去は、必ず行いましょう」
 私は、このコマーシャルを見て、居ても立ってもいられず、この母親のところに乗り込んでいく。そして、手にしていたラジオペンチで、針金の束をめちゃくちゃに切断する。切断されたくず鉄の山をみて、私は達成感を得る。しかし、これで針金に封じ込められていた記憶は消えたのか。あるいは、つないがれていた女児たちの腕を、根元から切断してしまったのではないか。そんな不安にふとかられる。
by warabannshi | 2012-03-22 07:23 | 夢日記 | Comments(0)
第554夜「すれちがい系男子」
 女性になっている。そしてベッドのシーツに散乱した猫の毛を取り除いている。名前の知らない同棲相手が、寒がって、湯たんぽ代わりに飼い猫をベッドに招き入れたのである。
「もう、ベッドに猫を入れないでって、何回言ったらわかるの?」
 九〇年代の青春映画みたいだ、こういう台詞は。と、倒置法で考える。
「そんなことより、ぼくが世界をまったく退屈させないように案出した概念、すれちがい系男子について、聞きたい? 聞きたい?」

【すれちがい系男子についての一情景】
 新宿駅のJR西口から、地下鉄・丸ノ内線へ通じる連絡口を走る男。階段には、流しのチェリストがいてチューニングをしている。男は、小さな魚族のように、少しもじっとしていない。日が暮れるまで、この連絡通路を、行ったり来たりしている。相手が誰であろうと本当に私に会いたければ再び訪ねてくるだろう、とは思いもしない彼は、このように、居もしない誰かとすれ違ってばかりである。
by warabannshi | 2012-03-10 06:48 | 夢日記 | Comments(0)
第553夜「桜事変」
 やや出遅れた感があるけれど、井の頭公園でやっている「桜事変」に出かける。夜桜見物の宴である。焼き鳥の煙をもうもうと出しているいせやをちょいと覗くと、友人Sが、彼の友人の話を聞いている。Sは何だか深刻そうな顔をしてうなづいている。卓子の上に、ビール瓶と、まだ湯気をたてている串焼き盛り合わせの皿がある。
 これは邪魔してはいけないと思い、私は一人、池のほうに歩いて行く。坂を下っていくと、燐光が無数にまたたいている。白い花びらが、夜気に滲むように光っている。桜の葉にも、幹にも光がある。魚醤や、蒟蒻を茹でている匂いがする。色々出店があるのだろう。私はだんだん嬉しくなってくる。太鼓腹を出した見知らぬ警備員が、手をあげてこちらに挨拶してみせる。こちらも挨拶を欠かさない。
「あっちからすごいカレーの匂いがしますよ」
「水族館のほうですか?」
「弁財天のお巫女さんたちとの合同企画らしいです」
 水族館のほうに行くと、たしかにカレーの匂いは濃くなっていく。そして、正月に甘酒でも配るような設えの小屋があり、そこで二人のお巫女さんが茶碗に盛ったカレーを配っている。
「甘口ですか、やはり」
 小麦粉がたっぷり入った、冷えきって白い膜がかかったような給食のような代物ですか、とはさすがに聞けない。
「ご安心ください、中辛です」
 薄暗いからよくわからないが、黒々とした印度風のカレーはルオーのそれに酷似している。一口、ほおばってみると、とても美味しい。そして、自分が空腹であることに気づく。私はカレーを食べながら、「桜事変」と黒地に濃い桃色で染め抜かれた幟が幾本も立ち並んでいるのを見る。風が吹いて来ると、幟が一度にばたばたと重たそうな音をたてる。私と彼女たちの外に、一人も人がいない。それををたしかめて、
「今夜は、水族館は、地下何階までやっているのですか?」
 それとない口調で聞いてみる。
「地下二階、ですね」
 一人が答える。
「お願いします」
 井の頭水族館の地下は、下れば下るほどフリークスな水棲生物がいる。何階まであるのか知らないが、地下二階でも十分に楽しめる。目隠しをし、巫女さんに手を引かれて、地下室の階段まで導かれる。水草の匂いが強くなっていく。流れてくる湿気を鼻腔に感じると、いまが何時なのかわからなくなってくる。
「新入りが入ったんですよ」
「へえ」
「オットセイなんですけれど、幕張のほうで水槽から脱走したそうで。いまは専用の“はらわたが煮えくりかえり”ルームに閉じ込めて、ある程度、気が落ち着くのを待っています」
 目隠しを解かれたので、強化ガラスののぞき窓から、なかを見てみると、なるほど、漆を塗ったようにつやつやとした巨体が、しきりにマットで補強された壁を殴りつけたり、尻尾ではたきつけたりしている。大きな穴の底で、憤懣をまき散らしているその若い水生動物は、崩れ落ちることを知らないようである。
 失敬な覗き屋に気づくと、仕込まれた芸のとおり、片手を目の下にかかげ、舌を出して侮辱してみせる。
by warabannshi | 2012-03-08 06:14 | 夢日記 | Comments(0)
第552夜「肉列車」
 車両のつり革にことごとく、羽を毟られたさまざまな種類の若鳥がぶら下がっている。間違えて、肉列車に乗ってしまったのだ。肉馬車に乗せないようにだけ気をつけていれば良いと思っていたのが、この油断のもとである。つり革を握ることができないので、どこかに手をつこうとするが、そのたびに細かい襞がそろって私を威嚇する。吊された死骸が左右に揺れる。鳥たちの頸椎と背骨の継ぎ目のところに、コインのように人の肖像が浮かぶ。殞命に驚いて目と口を開いた禿頭の王である。彼の写真を見たことがあるような気もするが、名前は知らない。
by warabannshi | 2012-03-06 11:05 | 夢日記 | Comments(0)
第551夜「46インチ」
 ディスプレイの画面の大きさと作業効率は比例する、という俗説を信じ、46インチのハイビジョンテレビにパソコンをつないでテープ起こしをしている。たしかにメモ帳タブが模造紙ほどの大きさになるので、文字を打ち込んでいくときの達成感がすごい。
「行き着くところは、ここだな」
 隣で作業をしている友人Uが言う。
「卒塔婆に文字をプレスする機械があるじゃん。あれを思い出す」
 そう言いつつ快調に作業をしていると、地震。揺れで、ハイビジョンテレビがこちら側に倒れ、ギャグ漫画のように頭でディスプレイを突き破る。
by warabannshi | 2012-03-01 07:53 | 夢日記 | Comments(0)



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