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第623夜「瞳孔」
 何の因果か、左眼の虹彩・瞳孔が、右眼に移ってしまっている。
「どんな感じ?」
「砂時計みたいかな。縦に並んでる」
 ひとまず視界に支障はないが、砂時計のような瞳で見つめられたら、相手はあまり良い気分はしないだろう。私はバスタオルで左眼を押さえながら、学生食堂に行く。なぜ学生食堂に行く気になったのかはわからない。皿を洗うむっとした蒸気がただよう食事スペースを早足で歩き、私はカウンターで聞く。
「ここで虹彩・瞳孔の移植はできますか?」
「移植は無理だね。削ることならできるけれど」
 蕎麦をふっていた割烹着姿のおばちゃんが答える。
「お願いできますか?」
「いいよ」
 彼女は新しく手術用ゴム手袋をはめたかと思うと、私の右眼を躊躇なくくり抜く。そのまま、眼球は引きずり出される。視神経はどこにいったのか。それとも右眼は義眼だったのか。私はゆで卵の白身のようになっているであろう左眼を開く。当たり前のように、視野は保たれている。その視野のなかで、食堂のおばちゃんは、鱗茎を剥くかのように、私の右眼から透明な膜を一枚一枚、剥いている。ステンレスの調理台の上には、彫刻刀が置かれている。私はもうやめてくれ早く返してくれと言いたくて仕方ない。
by warabannshi | 2013-07-21 09:35 | 夢日記 | Comments(0)
第622夜「アイスキャンディ」
 竹藪のなかの茅屋で、名前を知らない父からサランラップで幾重にもくるまれるような説教をくらっている。自分が何をやらかしたのか見当がつかない。時間が経つうちに、どうやら、「お前のような半端者に子育てなどできるわけがない」というテーマらしいことがわかってくる。そうだ、自分には子供がいるんだった、と気がつく一方で、子供がいることを忘れていたことを心の内で反省もする。確かに、半端者である。
 どのように説教が切り上げられたのかわからないが、帰り道をてくてく歩いていると、アイスキャンディを売る屋台がある。眼がくらむような暑さのうえに、説教で汗をすっかり搾り取られていたので、「ください」と言うと、「何にする?」と、屋台の老人は蜂の巣のような冷却装置を指す。よく見ると、百余りの一つ一つのシリンダーに、細かく手書きで、『失われた時を求めて』の各シーンの題名が書かれている。
「これ、一つ一つ、味が違うんですか?」
「味はほとんど一緒だけど、広がる順番と持続が違うんだよ」
「じゃあ、〈カトレアをする〉で」
 シリンダーから引き抜かれた白いアイスキャンディには、まるでボーリングで得た地質試料のように、地層めいた縞模様が黒くプロットされている。
「これ、やっぱり先端から食べるべきなんですか?」
「いや、どこからでも大丈夫だよ」
 何かものすごい記憶を引き出すことができるのだろうか、とわくわくしながら舐めようとした瞬間に、暑さで目が覚める。
by warabannshi | 2013-07-14 08:02 | 夢日記 | Comments(0)



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