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第626夜「大道具」
 大道具の達磨が列をなしいしまってある倉庫にいる。大道具といったものの、この高さ6メートルほどの達磨がどのように使われるのか、その使い道はわからない。色とりどりの紙片や香料をからっぽの腹のなかに詰めこんで高所から射出し、久寿玉のように割るのかもしれない。いずれにせよ、この達磨が使われるのは、尋常のことではないだろう。そのため、この倉庫は立ち入り禁止である。しかし、私はこの倉庫のなかにいて、巨大な達磨の腹と腹の隙間で、這いつくばり、埃っぽい床を探っている。眼鏡が見当たらないのである。眼鏡をそこいらへんの汚い床に置いて恬然としていられるほど呑気ではない。だから、このあたりの床に眼鏡があるとしたら、誰かが悪戯をしたか、私が酔っていたかのどちらかだ。私は眼鏡がなくとも困らないくらい、薄暗くて森としたこの倉庫のことを知っているような気がする。この倉庫で黙りこくった達磨たちに囲まれているだけなら、眼鏡は要らない。しかし、外に出るためには眼鏡はどうしても必要なのだ。
by warabannshi | 2013-08-27 04:27 | 夢日記 | Comments(0)
第625夜「石切り」
 惑星探査を可能にする技術力をつけても、所得格差を解消しきることができないくらいの近未来。
 かつて貧困層が最後に売ることができるものといえば、自らの臓器であった。再生医療の進展とともにその蛮習は絶えた(しかし、相変わらず人身売買や、奇形のコレクターは存在している)。
 しかし、売ることができるものは、なくなったわけではない。金に困った者が最後に手をつけるもの。それは時間である。
 コールドスリープで数十年間の眠りにつき、覚醒したときには、極地における作業か、あるいは数十年後の“人手が必要とされているにも拘わらず慢性的に人手不足の作業”に就くことになる。あるいは生殖細胞のバンクとして機能するかもしれない。
 いずれにせよ、長期間のコールドスリープは再試ができない、一か八かの博打である。そして、現在のあらゆる人間関係の“外”に出ることになる。ウラシマ効果として古くから知られる現象である。だから正確にいえば、貧乏人が最後に売ることができるものは、自らの時代なのだといえる。
 最近、まことしやかに流れている噂といえば、コールドスリープの最中に、断続的に目覚め、“時間旅行”を楽しむ人々が現れているというものである。血管に多大な負荷をかけ、脳卒中リスクをはねあげる断続覚醒は、もちろん非合法である。「イシキリ」と呼ばれている彼らは、水面を跳ねる小石のように、向こう岸に着くまでにあいだの数日間を楽しむのである。
 イシキリは、コールドスリープの解除権限を持つ者に少なからぬ賄賂を渡して可能になるが、そもそも渡せる賄賂がある時点で金には困っていないわけで、さらに賄賂を渡した相手が冬眠時にそのまま逃げてしまうかもしれず、失恋などで捨て鉢になった者の、気の利いた自殺法とでもいうべきものだろう。
by warabannshi | 2013-08-19 06:35 | 夢日記 | Comments(0)
第624夜「待ち合わせ」
 理容室で散髪をしながら、誰かを待っている。かれこれ15年近く、頭の世話をしてくれているSさんはいつも通りの手際だが、内装が純喫茶のような燻された木肌の暗いトーンに変わっている。大きな窓には白いレースのカーテンがかかっている。暑い日盛りであるが、空調がよく効いていて、耳のそばで鳴る鋏のちゃきちゃきした音が快適である。
「実験できるところに勤めなきゃだめだよ、太田さん」
「そうだと思います」
「○○はだめだよ。3年ともたないよ。絶対に飽きちゃうよ」
 Sさんはいつも通り、断言する。私は目を開けているが、とくに何を見ているでもない。大きな鏡が設えられているが、そこに映っているのは十年一日の散髪で、往来を見たいものが通っても、動くことができないなら、かえって見ない方が良い。携帯電話は尻ポケットに穏当に入っている。待ち合わせの相手から、着信があるだろうか。
 頭が仕上がって、カウンターで代金を払うと、銀行に行ってくるので、ちょっと留守番をお願いしていいかしら、とSさんは言う。私の待ち合わせの相手は、この理容室に来るのだろうか。それとも、私は今すぐに駅前やどこかに行かなければならないのだろうか。
 そうこうしている間にSさんの姿は見えない。私は理容室の店先に出る。すでに日は落ちている。商店街のどこかから、名前を知らない井上陽水の曲が流れている。歌詞のひとつひとつが、ちぎれた蜘蛛の巣のようにふわりふわりと目の前の往来の薄暗闇を流れていった。私の待ち合わせ相手は、どこで何をしているのだろうか。
 ふと、往来の向かいに歩いているFを見つける。携帯電話を眺めている。私に到着したことを知らせようとしているのだろうか。私が声をかけようとすると、何かに躓いて横に倒れる。駆け寄ろうとするが、それよりも早く、葉物野菜をかごいっぱいに詰めたSさんがFを助け起こす。
by warabannshi | 2013-08-11 10:59 | 夢日記 | Comments(0)



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