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第641夜「準備」
 昼から英語でひとくさりスピーチしなければならないことになっているが、当日の朝になっても何をどれぐらい話さなければならないのか見当がつかない。ぶっつけ本番で失笑を買わないほど英語が達者ではないので、原稿を作って頭に叩き込んでおかなければならない。
「『資本論』について話せば、たいていの人は納得するよ」
 私に虐待されている、名前を知らない妹が助言する。私は虐待者の常として、すぐに腹を立てる。
「適当なことを言うな。『資本論』を英語で何というかさえ知らないくせに」
「コモンズでしょう」
 妹のことは放っておいて、B4の紙に適当に原稿を書きつけていく。
「マルキストはアナログですね」
 通りがかりの外国人が笑いながらそういう。誤解されている。
by warabannshi | 2013-12-31 11:47 | 夢日記 | Comments(0)
第640夜「趣向」
 金満家の老人から、川端康成のものと思しき短編をみせられ、同じ趣向のものをすぐに書き上げることができたらお金に困らないようにしてあげる、と言われる。さらに紙片の束をとりだし、そこから適当に3枚を引くと、紙片には、「魔」、「人」、「窟」とある。それぞれの文字を必ず使うこと。これも、趣向の一つという。
 同じような話を、料理人の友人も持ちかけられたことがあることを思い出す。彼はどういう経緯か知らないが、香母酢を添えた焼き魚を供して、それなりの評価を得たという。もっと真面目に聴いておけばよかった。
 すぐに思いつくのは、清水義範の「スノー・カントリー」のように、川端康成の『掌の小説』所収の作品を英訳し、再翻訳することでかの老人の趣向に応えるということだが、これはすぐに出来そうなので、もしものときのためにとっておく。続いて、横光利一、あるいは李箱など、新感覚派とその周辺の作家のものを読み込み、若干の色気を増す、というやり方を思いつく。こちらの方が、やや野趣に富んだものができそうなので、こちらにする。起きたらすぐに書きはじめようかと思っていたが、どのような短編だったのか、まったく思い出せない。また、かの老人に会う機会はあるだろうか。夢の中で描かなければならないものではなかったか。通信は途絶えている。
by warabannshi | 2013-12-30 09:42 | 夢日記 | Comments(0)
堀口大學「月光とピエロ」より Ⅱ「秋のピエロ」 Ⅳ「ピエロの嘆き」



Ⅱ「秋のピエロ」

泣き笑いして 我がピエロ
秋じゃ 秋じゃ と歌ふなり
Oの形の口をして
秋じゃ 秋じゃ と歌ふなり

月のようなる おしろいの
顔が涙を ながすなり
身すぎ世すぎの 是非もなく
おどけたれども 我がピエロ

秋はしみじみ 身にしみて
真実 涙を 流すなり


Ⅳ「ピエロの嘆き」

かなしからずや 身はピエロ
月のやもめの 父無児

月は み空に 身はここに
身すぎ世すぎの泣き笑い


『月光とピエロ』籾山書店(1919年)
合唱組曲「月光とピエロ」 清水脩:作曲(1948~1949年)


by warabannshi | 2013-12-29 09:29 | メモ | Comments(0)
与太話@中野・百人衆
「君は自分が夢日記をつける側の人間だということを自覚したほうがいい。だいたい夢日記は近代の産物だし―」
「そんなことはない。『夢記』の明恵は鎌倉時代の僧侶だよ。サン=ドニ侯爵とフロイトのイメージが強いのでは?」
「―いずれにせよ、夢は、呼吸や、食事と同じように、われわれが毎日するものなわけだよ。その起源を考えようと考えまいと。夢を見終わった後、その光がどこから来るのかについて、ふつうは問わない。それは、なぜ食べるのか、という問いと同じようなもので、少しく、病的だよ」
「でも、健康的と病的とを分かつものはなんだろう。なぜ“健康な人”は“病的なもの”に魅かれうるのか」
「僕、草間弥生を評価する見方が嫌いなんだよ。草間さんが嫌いってことじゃないよ。アール・ブリュット全般について、それを評価する見方が相容れない」
「なぜ」
「作品に見出される価値が、個体の兆戦であって、人類の挑戦ではないから。正直なところ、精神障害を抱えている人が作ったもので、作品として取り扱われているものの99.9%は、10年後に残ってないと思うよ。なぜかといえば、美術史的な抵抗がないから。逆に精神障害を抱えている人の書いたものは個人的には面白くて、それは言語が絵具よりも強い抵抗となっているからだと思う」
「じゃあ例えば、ゴッホはたぶん遠近感がわからなくて、絵画・美術史から“ふつうの視覚”を学ぼうとした人なわけだけれど、ああいうのはいいんだ」
「好きだよ、ゴッホ。最初期の作品とか、ほとんど美大に行きたい予備校生が描いたような、生真面目なものだよね。彼は自分の視野が“ふつう”とは違うことを自覚していたし、それをどのような質の抵抗として位置づければよいかを常に考え続けていた、秀才になりたかった天才だと思う」
「そういえば、村上隆『芸術起業論』か『芸術闘争論』のなかで、生前にまったくの無名であったゴッホが、一気に天才として評価されるようになったきっかけは、〈貧=芸術=正義〉という図式によるところが少なくないと書かれていたけれど、あれはどう思う」
「問題なのは、どういう〈貧〉かということだと思う。封建主義における〈貧〉か、資本主義における〈貧〉かで、その質は変わる。つまり、前者においてはカリスマ的な支配者層が象徴を供給するが、経済的な〈貧〉が固定化される。後者においては、階級は流動的になり、経済的な〈貧〉は固定化はれないが、神がいないために象徴的な〈貧〉が生じる。
 ゴッホと同世代の画家に彼とシェアハウスもしていたゴーギャンがいるけれど、彼は、象徴的な〈貧〉を主題にしていたポストモダンな画家だと思う。『私たちはどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか』という題名が示唆するように。対してゴッホは―」
「伝道師になりたかった人だものね。貧民街で階級格差のなかに身をおいて、結局、伝道活動が苛烈すぎてだめになって、27歳くらいから絵を描きはじめる」
「〈貧〉を2つにはっきりと分けることはできないだろうけれどね」
「気になるのは、現在、経済的貧困と象徴的貧困の2種類の〈貧〉が同時に生じて、“神(神々)もいなければ金もない”という状況が固定化されることで、だから、唯一、自分の記憶より他に、何の参照項も持たない特異なものとしての夢を記録するというメソッドが、象徴的なものの生産へのダイビング・ボードになってくれればと思っている」
「だから、多くの人が〈貧〉に耐えられないと思うのが、君の前提なんだって。」
(以下、略)

「知性的なことをしたいよ」
「いまやっていることは知性的なことじゃないの?」
「“白い知性”と“黒い知性”とのバランスが欠けている」
「それはわかる」
「“黒い知性”が発揮される場がないと、マグマのようにふつふつと沸きあがってくるわけですよ」
「博論は、“黒い知性”にいかに“白い知性”の相貌をさせるか、ということに尽きる」
by warabannshi | 2013-12-27 12:34 | メモ | Comments(0)
第639夜「進路相談」
 雨の日、梅林に囲まれた丸い天井の木造校舎の廊下で、名前の知らない生徒から進路相談を受ける。
「音楽方面に進みたいと思っているのですが、太田先生のお母様は作曲家だと聞きました。お話を伺ってもよろしいでしょうか?」
「残念ながら、私の母がやっているのは書道で、音楽じゃない。だから相談には乗れないよ」
 しかし、その生徒があまりに気落ちした様子だったので、私は言葉を足す。
「この前、見た夢だけど、『なぜ1つの音楽に対して複数の人たちが同じように悲しみを覚えたり、奮い立たされたりするのか?』という問いを議論していた。そして、同じ色のインクで楽譜を書くからだという結論に至った。それでは、極彩色の楽譜から生まれた音楽は、人々に別々の感応を引き起こすのだろうか。もし機会があったら実験結果を教えて下さい」
 雨がよほど強くなっているのか、青い雨合羽を着た初老の用務員が、折れた梅の枝から水を滴らせて、廊下に足跡をつけていった。
by warabannshi | 2013-12-26 17:49 | 夢日記 | Comments(0)
第638夜「紀伊国屋」
 紀伊国屋と思しき書店の7階に用事があるので、エレベーターに乗ることにする。ちょうど誂えたように、赤い防火扉のようなエレベーターの乗場ドアが開く。さっそく乗り込み、体がすべて籠のなかに入ったところで、不安にかられる。狭い。床が半畳ほどしかないうえに、この三角柱の天井は、そのまま上の上の階の床と接しているのではないかと訝るほどに高い。深い汚物入れのなかに間違えて落ちてしまった虫は、このような気分になるのだろう。虫ではない私は籠から降りようとする。しかし、よく顔の見えない2人が続けざまに乗り込んできたので、ドアの対角に押し込められる。
 2人の隙間から、彼らもまた、7階に行くことが知れる。籠がウインチで巻き上げられる音がする。揺れる籠のなかでじっとしていると、不意に、この籠は落ちるのではないか、という考えが、生々しく呼び起こされる。3人分の体臭をも掻き消すほどの充満したペンキの匂いは、これはこの籠が本来、人ではなく、資材を上げ下ろしするためのものであることを示しているのではないか? 私は直近の階で降りたいが、ボタンを押すために前の2人の体をのけようとすれば、その衝撃で、籠が落ちるかもしれない。エレベーターの籠が落ちたとき、着地の瞬間にジャンプすれば死なない、という噂を思い出す。しかし、コンマ数秒後には、あの深い天井が降ってきて、私と2人を均等に押しつぶすだろう。
 私はもし籠が落ちずに7階にたどりついたら、そのときに読む本をしっかりと心に刻んでおく。印象派の画家たちがいかにプラグマティストであったかを示す研究書、竹蜻蛉と鞦韆についての本、そして(その他、忘却)
by warabannshi | 2013-12-26 08:50 | 夢日記 | Comments(0)
第637夜「吸血鬼」
 353(サンゴサン)という適当な名前のボクサーと、昭和50年代初頭から放っておかれたようなアパートの一室で、相部屋で住んでいる。その353が、カラオケ屋の地下室に吸血鬼を捕まえたので、見物しに来い、と玄関先で言う。吸血鬼といえば、蒸気や影になってどうにでも逃げ去ってしまえそうなものだが、と言うと、吸血鬼は真っ暗闇で影になると周りに溶けて消えてしまう、質量を持った物質であることを止められないのだ、と言う。それなら閉じよう、幾重にも閉じよう、と思うのだが、ダメらしい。カラオケ屋のオーナーをはじめ、それを元手にして一儲けしようとしているらしく、しかしながら、アナログだろうとデジタルだろうとまったく映像として記録することができないので、江戸時代の化け物屋敷のような体裁をとるしかないのだという。私は酷く嫌な予感がする。
 地下室の階段を二足三足下りて行くと、温かい空気が顔や手に触れる。吸血鬼が蒸気になって逃げるのも防ぐために、加湿してあるのだろう。眼を潰されてもわからないような闇のなかを、私は手すりに手を滑らせながら、進んでいく。常に、自分の顔の前に一枚の薄い皮膚が下がっているような感じがする。廊下の突き当りを左に折れると、確かに床に緑色の蛍光塗料で描かれている大きな×印が浮かんでいるように見える。ここに立て、ということか。私は手すりから手を離し、船外作業をする宇宙飛行士のように闇に漂う。そして、×印の交点の上に立つ。どこを覗けばいいのかわからないが、とにかく見えない眼を見開くと、背中に何かのしかかられたような感触が走る。影に塗り込められた視界に、糸のように血が滲み、代わりに血管には冷水が一滴一滴流し込まれるように思う。
by warabannshi | 2013-12-24 07:39 | 夢日記 | Comments(0)
第636夜「毛虫」
 ニューオリンズのような街の家々に挟まれた大通りを、Fが運転する自動車に乗って緩々と下っている。夕方で辺りが薄暗くなりかかっているが、家々の窓に燈りが点く気配がまるでない。不安になるが、Fは意に介したふうでもないので、助手席に乗っているとそういうことばかり気になるのかもしれないと思い直す。じっさい、通行人はちらほらいるのだ。ぼんやりと街灯も点いている。
 Fが英語で何か尋ねてくるが、籠ったような発音で全然聞き取れない。君はどうなの、と問い返すと、憮然とした顔をする。
 自動車の外の夜の闇が濃くなり、体がだんだん沈んでいくように思える。ふと、さっきからタイヤが水を切っている微かな音が止まないことに気づく。体を乗り出して見てみると、前も後も水浸しになっている。底は浅い
らしく、通行人は踝のあたりまで水に漬けて、平気で往来している。馬もとくに暴れたりせず、散歩している犬もはしゃいだりはしていない。ただ水が音を吸収するのか、なにも聞こえない。
「これ、もっと溢れてくるんじゃないかな」
「そう?」
「月の重力か何かが海嘯を引き起こしているんじゃないの」
 そのとき、ぼとぼとと天井から何かぼた雪が落ちたような音が降ってきた。ボンネットとフロントガラスにも降り注いだそれをまじまじと凝視すると、焦茶色の毛虫である。毛並は立派で、濡れて雫が垂れている。もつれあっていて、どこまでが1匹かわからないが、大きいことにはかわりない。とっさにシートベルトを握りしめ、目をつむり、Fがハンドルを無茶に回してもいいように足を突っ張らせる。
 しかし、Fは特にこだわりなく自動車を徐行させている。
 どういうことか、まったく見当がつかないので、この町のハンドマップを読もうとシートの隙間に手を入れるが、ふと、そこにも毛虫が湧いていたらどうしようと思い、そのまま固まってしまう。
by warabannshi | 2013-12-21 09:42 | 夢日記 | Comments(0)
第635夜「ロンドン塔」
 ロンドン塔の、斧や槍を展示してある一室で、することもなく漫然と歩き回り、木の床に靴音を鳴らしている。もちろん観光に来ているのであるが、どういう趣向なのか、周りの人の召し物がみなヴィクトリア朝のようなモーニング・コートであったり、ドレスであり、自分も負けずにサミュエル・ジョンソンのような恰好をしている。護衛兵の恰好はいつもと変わらない。
 部屋の隅で、護衛兵なのか何なのか、係りの者らしい2人組が、もっともらしい手つきと顔つきで、黒色火薬を袋に小分けしている。部屋にいた子供たちはそれを見物に走り寄っていく。しかし、瞬間的に、名状しがたい嫌な予感を感じ、私は、その一室の出口へといそぐ。
 出口にたどりついたときに、背後からの爆発音と振動で思い切りつんのめる。振り返ると、濛々たる煙が壁のようにこちらに押し寄せてくる。咳込みながら、大声で階段の下に助けを呼ぶ。別の部屋で、カトリックを揶揄する人形劇をやっていた一団が興味深そうに埃まみれの私を見ている。
 しばらく咳込んでいると、膝の関節くらいの背の高さのぬいぐるみのような羊の護衛兵が8名ほど、もこもことした足取りで、階段を上がり、私の横を通りぬけて、救護に向かっていった。そうか、と私は思う。まず負傷者を安心させるために、最初に羊の護衛兵が来る。テディ・ベアがやってくるのは、その後だ。
by warabannshi | 2013-12-17 06:41 | 夢日記 | Comments(0)
第634夜「俗謡」
誕生日の違う双子の兄弟のうち、1人は銃口を相手に向けて、もう1人は銃口を自らのこめかみに当てる。彼らが彼らの生まれた特定の日にちについて語るとき、どちらがより饒舌だろうか。というシリア北部の俗謡。意味はわからない。
by warabannshi | 2013-12-16 07:26 | 夢日記 | Comments(0)



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