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第647夜「一輪車」
自動車を運転していると、左隣から、黒猫のこぐ一輪車に抜かされる。黒猫は短い後脚と長い胴体を器用にくねらせ、まったく無駄な力などない美しいフォームで、片側2車線の大きな橋の車道を一滴の磁力を帯びた鉄粒のように上っていく。
夕陽の逆光を浴びて、黒猫と一輪車の輪郭はあまりにも硬質であり、私はその黒猫の尻尾の先が二股に割れていないかと目を凝らしたことを恥じ入る。
by warabannshi | 2014-01-21 01:29 | 夢日記 | Comments(0)
第646夜「公営動物園」
 曇天の日、公営の動物園にFと訪れている。動物園には私たち以外、誰もいない。それもそのはず、動物園というわりには気の利いた動物は1匹も見当たらず、色調の狂ったカバやライオンの模型が寒々しく置いてあるばかりである。500円で借りたオーディオ・ガイドには「はじめに」を除くとトラックが2つしかない。崩壊寸前の社会主義国でも、もっとましな施設にするだろう。むっつりと押し黙って、坂道の多い園内を歩いていると、「昆虫館」と銘打った、銀色の半球状のドームがある。入ってみると、そこも生きている昆虫はいず、人を馬鹿にしたようなデフォルメの、トンボやハチの昆虫模型がいつも天井から吊り下がっている。堪えられなくなって叫びだしかけたそのとき、Fが私の袖を引っ張る。
「生きているのがいたよ!」
 なるほど、確かにテントウムシの幼虫のような外見の、15センチほどの黒褐色のぶよぶよとした昆虫が数匹、ガラスケージのなかで共食いをしている。だが、それがどうしたというのか。ふと気づくと、Fの服装が、絵描きの着るような、というよりは、幼稚園児の着るような水色のスモッグと紺色のベレー帽になっている。Fがもともと何を着ていたのか思い出せないが、この呪われた場所に影響されて変質してしまったに違いない。一刻も早く、ここを出なければ、と、Fの腕を引き、昆虫館のゲートを出ると、頭上を轟音とともに誰も乗っていないジェットコースターが走り抜け、私はその轟音を幸いとして、肋骨が内側に折れるほど叫んだ。
by warabannshi | 2014-01-13 05:19 | 夢日記 | Comments(0)
第645夜「世間知らず」
 淡黄発火現象と呼ばれる、世間知らずな発言や振る舞いが自然発火する現象が頻発している。淡い黄色の炎に包まれるのは一瞬であり、大事には至っていないが、それは人々の傾向を二分することになった。つまり、発火を怖れるあまり、洗練さのなかに萎縮する人々と、前歯に焼け焦げができようが眉毛がちりちりになろうが構わず勝手を通す人々との二つである。例えば、かまととぶったある種の芸はまったく面白くなくなり、テントを張るときにロープにできる結び目を見て応用数学の発見をした数学者は、空も飛べそうなほど日頃から発火をくり返している。「自然」「天然」の語に、紊乱という含意が込められ、そして、何か話し終わるたびに気ぜわしい句読点のように笑う癖をもつ人は、自分の発言をいつでも撤回できるように砂を撒いているか、あるいは自分の発言が本当に可笑しくて堪らないかのどちらかである、などの知見が広まることとなった。
by warabannshi | 2014-01-06 09:16 | 夢日記 | Comments(0)
第644夜「乗継」
 中国大陸の真っ暗な砂利道を、右手と左手に数え切れないほどの紙袋を握りしめて走っている。前の汽車が遅れて、次の汽車との乗り継ぎに間に合わないかもしれないのである。私の前には辮髪の2人の童子がいて、ときおり、心配そうに振り向く。2人はこの土地の職人の子弟であり、息せききって走る私が崖から落ちないように案内をしてくれているのだ。地平線には満月が煌々と照っており、立ち止まるたびに2人の影が道に長々と伸びる。だが、不思議なことに星は一つも見えない。
 短い隧道を抜けると頭上から汽笛が降ってくる。見上げると、信じられないほど巨大な黒い影の塊が丘の中ほどに停車している。あれに乗らなければいけないのだが、迷子の蟻のように何も考えられなくなってしまう。童子の1人が、私に向かって何事かを叫ぶ。私は走っているのかへたり込んでいるのか、もうよくわからない。
 気付けば、私は土を盛ってあるだけのプラットフォームにいる。動き始めた汽車に飛び乗るが、目を凝らしてもプラットフォームに案内役の童子はいない。感謝を伝えることができなかったことが残念でもあるが、彼らがついてきてしまっているのではないかと心配でもある。
by warabannshi | 2014-01-05 00:41 | 夢日記 | Comments(0)
第643夜「臨海試験場」
 モノレールに乗って、とある臨海試験場に向かっている。運賃を惜しんでいるわけではないが、1駅だけ乗って高みからの車窓の景色を楽しんだら、残りは降りて歩こうと思っている。私の他に乗客はなく、アルカイックな陽光が斜めに射した車内では、微細な塵が白く光ってゆっくりと宙を泳いでいる。
 気がつくと、「分倍河原」という駅に着いており、しかも扉は音を立てずに閉まろうとしている。降りようか降りまいかと迷っているうちに、扉は閉まる。次の駅は、「○(金偏に匂:かぎ?)の森」であることが、電光掲示板に流れるアナウンスで知れる。私は地図のアプリケーションで現在位置を確認する。間違いない。私が降りようと思っていた駅は、1つ手前の駅だ。
 軌条は広い河口の上へと続いており、群青色の水面がところどころ白い浪を立てている。この河口を渡るための橋は、この軌条が1本あるだけのようである。いや、嘘のような細い、避難通路めいた、銀色の金属網で出来た橋がある。手すりはついているものの、吊り橋というわけでもなく、何で支えられているのか見当がつかない。おまけにあまりに細くて向こうから来た人とはすれ違えない。もし河口の手前の駅で降りていたら、あの奇態な橋を渡っていたに違いない。それはそれでカモメやウミネコになったような気分だろうし、面白そうでもあった。
 臨海試験場には、かつての同僚で友人のNがいる。臨海試験場で、他の新しい同僚との打ち合わせのあと、雑談になり、「本を読むことはできない、文字を読むことができるだけだ」という話をしていると、Nが丸めた雑誌で叩いてくる。あっけにとられていると、「お前はいつもそうだから、お前はいつもそうだから」と笑顔のまま、泣いている。
「韜晦しているわけではないんだ」。私は景気よく打ち鳴らされる雑誌を防ぎながら言う。「これは能力の話なんだよ。文字を読むことはできる、というのは持ち運びができる属人的な能力だが、本を読むのは時間の話であって、持ち運び可能な能力ではない。つまり、1冊の本を読む、というのは、その本から続くほかの諸々との特殊な連鎖に連なることであり、そこに投げ込まれることだ。それは読んでいるあいだに流れる時間そのものだ」
by warabannshi | 2014-01-02 09:09 | 夢日記 | Comments(0)
第642夜「手順」
 東大駒場キャンパスに自転車で行く道すがら、いつも日向に照っている道具屋で、店先に並んでいた座り心地の良さそうな黒いソファに身を沈める。特に買うというわけでもないが、冬の太陽光を吸収して、ふかふかになっているのが自転車の上からでもわかった。新造された4車線道路には自動車は走っていない。歩道にも誰もいない。色あせた布地と革との匂いをかぎながら、「根を探すには手順がいる」という、耳の奥に残っているリフレインを響くがままにさせておく。
「いつも同じ手順だから、飽きもせずに」
 耳に残っている意味のわからないリフレインをまともに受け取るのは、時計の秒針が鳴らす音に答えるようなものだ。
by warabannshi | 2014-01-01 10:17 | 夢日記 | Comments(0)



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