<   2014年 04月 ( 3 )   > この月の画像一覧
第657夜「玩具(ピエロ)」
 産道のような地下街を、名前の知らない気の置けない仲間たちと一緒に歩いている。時刻は早朝。店舗はシャッターを閉めているが、冷え切った地下街の通路の床にはたくさんの人が坐りこんでいる。制服姿の女子高生がスカートから突き出した両脚をぐるぐると包帯で巻いて、地面に敷いた段ボールの上で眠っている。怪我をしているのではなく、防寒のためである。しかし、塹壕戦の傷病兵のように見える。何かの売り出しを待っているのだろうか。産道めいた地下街にいる人たちが行列を作っているのだとしたら、まだ最後尾は見えていない。
「俺、もう帰りたくなっちゃったよ。ここまで来るのに疲れ果ててしまった」
 アメリカン・カジュアルな格好に身を包んだ仲間の1人が言う。
「休んでおけよ。まあ、ネットカフェなわけだけれど」
 別の仲間が言い、他の仲間たちと、そしてそれを聞いた地下街の地面に座っている人たちも一緒になって、笑う。知り合いなのだろうか。
 ぞくりと、背中を削られるような悪寒がして、振り向くと、いま私たちが歩いてきた産道の出口の方から遠く、1体のピエロの玩具が陽気に跳ねながら近づいてくる。とてつもなく嫌な予感がして、私は仲間にあの玩具から逃げようと言おうするが、仲間たちは誰もいない。私はとっさに、壁を向いて、地蔵のように気配を消すことにする。発条足のぎしぎしという音が背中のほうで近づいてくる。そして、それが十分に離れたところで、私は地蔵になるのをやめて、慎重に振り向く。
 ピエロは相変わらず跳ねているが、不意に自分とそっくりなピエロの玩具を見つける。それをしげしげと見つめた、と思いきや、ピエロの頭は電動泡だて器のホイールのように回転し、自分とそっくりな玩具の頭をあっという間に粉々にする。ピエロはその頭のままで、産道の地下街を跳ねながら、その地面に座って恐慌状態となった人々をまったく機械的に血祭りにあげていく。逃げようとした人の1人が、宙に浮いた何千万もの正露丸のような金属球の群に襲われ、壁に打ち付けられ、極微の網のハエ叩きで潰されたハエのようにミンチ状になって死ぬ。その金属球の群は、意思を持った赤い霧となって、次々に人を襲っていく。
 私は、自分が無事であることに笑いたくなるほど安心していたが、ふと気がつくと、左足を置いているところの床が剣山のようになっている。慌てて左足を持ち上げると、鋭い剣山の先端はぐいっと伸び、常に私の左足の裏と甲を貫こうとする。私は右足だけで立ち、左膝をまげて左足を腰のあたりで右手で持つことで何とか一定の安定を得るるしかし、苦行者ではあるまいし、この恰好でずっと居続けるわけにはいかない。どうすればいいのか。
 ピエロが来た通路の方から、腕相撲芸人が歩いてくる。つまり、なりは小さいが腕っぷしが強いので、賭け腕相撲で日銭を稼ぐ路上の芸人が。
「すみません、ちょっとその段ボールをお借りしても良いですか」私は言う。「その段ボール1枚を、私の左足のあたりに敷いていただきたいのですが…」
 もちろん、段ボールでピエロの悪意が防げるとは思っていない。しかし、藁しべが浮いていればすがるべきである。寡黙な腕相撲芸人は、黙ってその段ボールを私の左足のあたりに投げ出す。私はそろそろと、痺れた左足を下ろす。なんともない。段ボールの外に、左足を置く。やはり、なんともない。何がきっかけだったのか、よくわからないが、私の左足は穴だらけにならずに済んだことが、私を非常に愉快な気にさせる。
by warabannshi | 2014-04-14 05:05 | 夢日記 | Comments(0)
第656夜「稽古場」
 学生寮の1室で、壁に備え付けられた3段ベッドの2段目で毛布にくるまっている名前の知らない友人が、キャンバスをぴったりと胸に押し付けて牡蠣のように離そうとしない。それが友人の描いた絵画作品であるならば何の文句もないが、どこぞでやっている展覧会に出品された、誰か別の人の作品らしいので、なんとかして彼とキャンバスとをこじ開けなければならない。窓の外は初夏の正午の陽光に溢れているのに、学生寮のこの収容所のような部屋は、薄暗く、そして臭い。
「おつかれさま。あれ、なんで皆いないの?」
 齧歯類の顔をした友人が部屋に戻ってくる。徹夜明けらしく、強張っていると同時に曖昧な顔をしている。
「冬眠しているんだよ」
「臭いと思ったら、こいつまたベッドでクッキー食べたな」
 齧歯類の友人は、私の私にもよくわからない応答に関せず、匂いのもとであるらしいクッキーを、牡蠣殻になっている友人の手前の、1段目のベッドの毛布から取り上げ、ごみ箱に放り込んだ。
「そいつは?」
 私は彼に理由を話す。そして、私たちは2人で、つまり、私がキャンバスを抱きかかえている友人を羽交い絞めにし、表面が痛まないように細心の注意を払って、齧歯類の友人のほうがキャンバスを抜き取る、ということにする。
 そうして、カイユボットの「鉋をかける人々」の部屋から、「人々」だけを消したような、がらんとした部屋の画が現れる。よく見てみると、壁紙がアール・ヌーヴォーの蔓草模様と思いきや、空中に浮いている3つのボールとそれを投げている男性の上半身が連続したものとなっている。ジャグラーの稽古場なのだろうか。そうだとしたら、天井が無暗に高いのは、ボールの数を増やしても窮屈な思いをせずに済むためなのかもしれない。なるほど、ここには行きたい、と思っていると、いつの間にか、辺りはその画に描かれたジャグラーのための部屋で、私の足元には、色とりどりの10個余りのボールと番傘と枡が転がっている。
by warabannshi | 2014-04-08 10:06 | 夢日記 | Comments(0)
第655夜「生態調査」
 生態調査のため、霧がたちこめた湖の渕で名前の知らない同僚と2人で釣りをしている。同僚は隣にいるはずだが、乳白色の霧のせいで、ときおりする砂利をゴム長靴で踏む音が彼のすべてとなっている。風があるので霧は流れているようだが、一向に晴れる気配はない。私は首の後ろの強張りをなんとかしたくて、頭を前に傾けて素筋肉を伸ばし、足元の砂利にひたひたと寄せる波を、釣竿を握ったまま、ずいぶん長い間見ている。打ち寄せられた藁屑に、得体のしれない米粒ほどの甲虫が10匹ほど、興味深そうにたかっている。
by warabannshi | 2014-04-04 10:13 | 夢日記 | Comments(0)



夢日記、読書メモ、レジュメなどの保管場所。
by warabannshi
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
twitter
カテゴリ
全体
翻訳(英→日)
論文・レジュメ
塩谷賢発言集
夢日記
メモ
その他
検索
以前の記事
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 01月
2016年 11月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 03月
2007年 01月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2004年 11月
2004年 08月
2001年 12月
記事ランキング